劇場公開日 1981年3月7日

「どこに焦点を当てたストーリーか」普通の人々 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0どこに焦点を当てたストーリーか

2024年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 兄の死による親子の確執は『スタンド・バイ・ミー』を、カウンセラーとの対話による心のわだかまりの解消は『グッド・ウィル・ハンティング』を連想させる。だが、ストーリーはどこに焦点を当てているのかよく分からない冗長さで、それらの作品にはとても比肩するものではないと思えた。

 まず、亡くなった兄がどんな人物で、どういう点が母親に愛されていたのか、逆に主人公である弟はなぜ母親に愛されないのか、そういった状況がよく分からない。また、カウンセラーに対する過去の事件の告白で、わだかまりを解消するシーンも唐突過ぎる。『グッド・ウィル・ハンティング』の場合、心に傷を負った者同士、カウンセラーと主人公とで通じ合うところがあり、それが主人公の心を開くきっかけとなり、心のわだかまりの解消につながったというような深みがあった。だが、今作の場合そういった深み感じられない。それゆえ主人公に終始感情移入しづらい。

 ラストシーンにしても、父親との関係は改善されたにせよ母親との溝は深まったままで、今作を『家族の崩壊と再生』というテーマで描きたいのだとすれば、中途半端な結末だ。

 これでアカデミー賞四部門受賞なのか、と思わされた。

根岸 圭一