「痺れる」ファイト・クラブ ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
痺れる
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オープニングから細胞の中を這いまわる様なフィンチャー節。序盤からラストまで興奮が全くおさまらない稀有な作品です。
消費することだけしか存在理由がない現代。そして、消費社会に男性性を奪われた『僕』の存在理由はあり得るのか。去勢された『僕』が抱える実存不安は、まさに「神」にとって変わった「男性不能型消費社会」をメタファーとして描かれます。
コピーのコピーのコピーでしかなかった『僕』。タイラーという理想の男の出現によって、『僕』が『僕』で生きていることは現実になりました。タイラーから傷を与えられても、決して離れることはできません。
「人は愛する相手を傷つけ、傷つける相手を愛する」傷つけた『僕』と傷つけられた『僕』。
最後に『僕』は、自分自身とのファイトを制し、自信溢れる男へと生まれ変わりました。そして、「腫瘍の様な女」マーラの中に投影していた「嫌悪していた自己」という腫瘍をやっと愛することができたのです。
「俺をみろ。心配するな。これからはすべてよくなる。」マーラの中の『僕』に語りかける『僕』。
ぶっ壊さなければ、決して突き抜けることが出来ない。『私』の人生も。
これを観た人間は、フィルムの中、いや自分の中の『私』と対峙することができるのか、『おい、そこのブランドボーイ』。フィンチャーからの熱い熱い熱い問いかけ。私、試されているんだ。
痺れた。
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