「「言葉じゃ伝えきれない痛み」を抱える20代に」ファイト・クラブ 平野翠@事業家集団さんの映画レビュー(感想・評価)
「言葉じゃ伝えきれない痛み」を抱える20代に
『ファイト・クラブ』は、ただの暴力映画ではない。むしろ、コミュニケーションの不在が生み出す孤独や葛藤を、過激な形で浮き彫りにした作品だと思う。
物質的に満たされても心が空っぽ。社会の中で役割を演じることで、自分の「本音」や「存在意義」がどんどん薄れていく。そんな不安や焦燥は、まさに20代の僕自身が日常で感じていることだった。
主人公が出会ったタイラー・ダーデンは、その不満や怒りを言葉ではなく、拳という原始的な方法で“共有”しようとする。暴力的ではあるけれど、それは決して「他人を壊すこと」が目的ではなく、「自分を確かめること」なのだ。
現代はSNSでのつながりが当たり前のようになっているが、本当の意味で誰かとぶつかり合い、深く関わるコミュニケーションは減っている。この映画は、そんな僕らに問いかけてくる――「お前は、本当に誰かとつながっているか?」と。
観終わった後、自分自身の中にある暴力性や寂しさと静かに向き合うことになった。そして、表面的な会話ではなく、もっと本質的な対話を大切にしたいと思えるようになった。
20代のうちに一度は観ておくべき、魂にぶつかってくる映画です。
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