「「忘却」は全てを奪ってしまう」二十四時間の情事 sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
「忘却」は全てを奪ってしまう
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被爆80年の広島原爆の日に、「ヒロシマ・モナムール」を再鑑賞しました。前回はレネ✖️デュラスの難解最強タッグの迷宮に入り込んでしまったのですが、今回は比較的落ち着いて見ることが出来ました。
前半 原爆の惨状を、記録映像を交えた硬質な画像でしっかりと綴っていきます。痛々しい映像ばかりなのですが、我々日本人にとって深く刻まれた戦禍の記憶なのです。
物語が進むにつれ、この悲劇が、エマニュエル・リヴァ扮する女優の過去の出来事にも繋がることが分かってきます。故郷(フランスの田舎町ヌヴェール)で、彼女は、恋に落ちた敵国ドイツ兵を眼前で殺され、その後非国民として村八分な扱いを受けてしまいます。
愛の痛みを忘れたくない、忘れる私は薄情なのか、でも忘れないと前に進めない、そして忘れた頃に同じ過ちをおかしてしまうのか。
「忘却」は全てを奪ってしまう。
彼女の苦悩は「戦争」にも同じことが言えるのです。核廃絶が遠ざかる世界で。
アラン・レネもマルグリット・デュラスももういません。主演の二人、岡田英次とエマニュエル・リヴァも既に亡くなっています。
でも映画は残っています。主人公が恐れた「忘却」をしないために。
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