劇場公開日 1959年6月17日

「戦争の傷の芸術的表現」二十四時間の情事 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5戦争の傷の芸術的表現

2020年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

総合:50点 ( ストーリー:50点|キャスト:65点|演出:60点|ビジュアル:60点|音楽:65点 )

 第二次大戦後の2人の出会いから、彼らの過去の戦争の傷に触れていくことで戦争の悲惨さを表現する。

 それはけだるく感傷的で孤独で、詩的でもあり芸術性を感じる。
 だが分かり辛いし、悠長で退屈する部分も多い。戦争の被害者の断末魔が、彼らのいる原爆で破壊された悲惨な広島というすぐ近くからではなく、何かもっと遠い彼方から聞こえてくる。現実の戦争の悲惨さに1つ芸術という緩衝材を挟むことで、直接的な表現が少なくなり難解で抽象的な概念になってしまっている。戦後何年もたって未だに生きる屍のような気力を亡くした女を通じて、彼女の内側に残された傷だけを味わっているよう。

 こういう表現方法の価値もわからないではないが、万人向けではない。ちょっと観るのに気力がいる。こんな作品もとりあえず経験として観ておいてもいいかというところ。
 ただし妖しい力もある。もし自分が心に傷を負い孤独でいる時に観たのならば、登場人物と共にどっぷりと自分自身もその雰囲気に沈んでしまいそう。そんな時に観たのではなくて良かったかもしれない。

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Cape God