「【”蛾から蝶への変化・・”過去のトラウマを克服しようともがく者、トラウマに呑み込まれた者、全てを凌駕したサイコキラーの姿を描いた作品。近年のサイコサスペンス及び心理劇として、超一級の作品でもある。】」羊たちの沈黙 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”蛾から蝶への変化・・”過去のトラウマを克服しようともがく者、トラウマに呑み込まれた者、全てを凌駕したサイコキラーの姿を描いた作品。近年のサイコサスペンス及び心理劇として、超一級の作品でもある。】
<Caution! 内容に触れています。>
ー 過去に鑑賞した際には、サイコサスペンスとして鑑賞した。
全編にわたる緊張感。
レクター博士(アンソニー・ホプキンス)とFBIの実習生捜査官クラリス(ジョディ・フォスター)の鉄格子を挟んでの遣り取り。
何故に、レスター博士はクラリスの捜査に協力したのか・・。-
◆感想
・久方ぶりに鑑賞した。
今作はサイコサスペンスとしても一級品である事は分かっていた積りだが、再々鑑賞して思った事のみを簡潔に記す。
・レクター博士が、クラリスに幼き頃の忌まわしき思い出を聞くシーン。
彼女は父が亡くなり、伯父に預けられた際の子羊たちが屠殺された際の声が、トラウマになっている事を話す。
それを聞き、レクター博士はクラリスに”連続殺人鬼”バッファロー・ビルの捜査の手がかりを与える。
- レクター博士は、トラウマを乗り越えた完璧なるサイコキラーだが、紳士としての一面も持ち、自らのトラウマを越えられない人間を唾棄すべき存在として見ている。
そして、クラリスが自らのトラウマに悩みながらも、必死に克服しようとしている姿を感じたのだ。あの天才的な嗅覚で・・。
クラリスがレクター博士の元を訪れた時に、彼女に非礼な行為をした囚人に対し、行った事がそれを示している。ー
・バッファロー・ビルは自らの性倒錯者としての性癖のトラウマを克服できずにいた。
故に彼は、手を掛けた犠牲者の喉の奥に”蛾”を詰め込んでいたのだ。
更に、彼が女性になりたかった象徴の衣装のマークを犠牲者の肌から切り取っていたのだ。
- クラリスがバッファロー・ビルに囚われたキャサリン救出のため単身犯人の家に乗り込んでいくシーンは物凄い緊張感である。-
<牢獄に囚われていたレクター博士の、天才的な脱獄方法も、今作の見所である事は間違いない。
クラリスがバッファロー・ビルを追い詰めていく過程と並行し、映し出される脱獄シーン。
そして、ラスト、皆から祝福されるクラリスに入った電話。
それは脱走したレクター博士からであった。
”これから旧友とディナーを採るのだ・・”
と言って電話を切るレクター博士。
その目は、且つて収監されていた精神病院で、レクター博士を自身の出世のために利用した病院長チルトンの姿を追っていたのである・・。
未だに、今作を越えるサイコサスペンス作品が現れない程の、傑作である事は論を待たないであろう作品である。
そして、今作により、名優アンソニー・ホプキンスと名子役であったジョディ・フォスターは、更にその存在を世に知らしめることになった記念碑的作品でもあるのである。>