劇場公開日 1985年8月30日

「俺たちは、飛ぶ!」バーディ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5俺たちは、飛ぶ!

2020年1月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

楽しい

アラン・パーカー監督1984年の作品。
共にベトナム戦争で心身に傷を負った親友同士の若者二人のドラマ。

とあるいざこざがきっかけで親友になったバーディとアル。
性格などは真逆。
女の子をナンパしたり、“THE若者”なアルに対し、バーディは人付き合いが苦手。でも何故か、妙に気が合う。
そんなバーディが何より好きなものは、鳥。
それはそれはもう、異常なほど。
頭の中で考えている事は鳥の事だけ。女の子より鳥。鳥のように空を飛びたいと、自家製の羽根で飛んでみたり(勿論、失敗)。挙げ句の果てに、小鳥を飼って“恋人”として溺愛。
さすがの親友アルも、バーディの鳥LOVEに呆然…。

ベトナム戦争が深刻化し、アルは戦場へ。
バーディも。その出兵前、ある悲劇に見舞われ、心に傷を負う。
地獄のような戦場。
そこでバーディは、空を自由に飛ぶ鳥たちを見る。
バーディの心は、飛び立った…。

顔を負傷したアル。
とある精神病院に呼び出される。
そこで見たものは、精神を病み、病室でまるで鳥籠の鳥のようにうずくまるバーディの姿…。
担当医の提案でバーディの治療に協力する事になったアル。
立ち直らせようと必死にバーディに語りかけるアルだが…。

病院での現在と、戦争に行く前青春を謳歌する二人の過去が交錯。
とりわけ過去シーンはほろ苦さを滲ませつつ、所々ユーモアも交え、二人の青年の青春と友情物語になっている。
現在シーンは見てて辛く感じる時も。
虚ろな目で放心状態のバーディと、必死に呼び掛けながらも時折苛立ちを隠せないアル。
看護婦は協力的だが、担当医はシビア。
また、二人が体験したベトナム戦争シーンもなかなかに恐ろしさを感じさせる。
幻想の中で“鳥”となったバーディ目線のカメラワークはピーター・ガブリエルによる独創的な音楽と相まって不思議な浮遊感。

過去シーンは繊細、現在シーンは難演。マシュー・モディーンの演技が見事。
過去シーンはちょいチャラ気味、現在シーンは受け身の演技。ニコラス・ケイジも好演。

ベトナム戦争を題材にした作品はシリアスで重くなりがちで、後味悪いものも。
本作もその類いと思っていた。ラストまでは。
ラスト、思わぬ痛快さ、爽快さ。
ラストシーンなど、つい笑いが込み上げてしまったほど。
シリアスで辛いシーンもあるが、考えてみれば作品の大部分が親友二人のドラマが語られる。
戦争や不条理なこの世の中、過酷な現実にも屈しない、今を生きる若者たち。
大空を自由に飛ぶ鳥のように。

近大