白鯨のレビュー・感想・評価
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船長室でブツブツ呪いの言葉を垂れるG.ペックが凄まじく、思い切って...
船長室でブツブツ呪いの言葉を垂れるG.ペックが凄まじく、思い切ってDVDを買ってしまった。
3分近く瞬きせず、濁った白目とおぞましい黒目で宙を睨む怪演。
彼がなんでこの映画を気に入っていないのかわからない(+_+)。
【正しさへの執着が人を壊す】
負けた。
私は正しいのに、あいつが間違っているのに・・・押し切られた。
悔しい。
そんな不安定な精神でぐるぐる考え抜いた末、相手を血祭りにあげて己の平穏を取り戻そうとしたエイハブ船長の憎悪が痛々しい。
もともと敬虔なキリスト教徒で、船員にもやさしく接していたエイハブ。
彼の穏やかな人格は、実は「人間こそ最も優れた存在」という価値観の上に組み上げられたものだったが、狩るはずの下等動物=鯨に、逆に狩られるという敗北体験を経て、滅茶滅茶に崩壊してしまう。
それでも自分の価値基準に固執し、修復して身を立て直そうとした結果、我武者羅にたった一匹の鯨を追い求める狂人に変貌してしまった。
クライマックスで、白鯨へのありったけの憎悪を絶叫しながら、何度も何度も何度も何度も銛を突き立てるエイハブの、みじめで哀れな様。
自分の正常を取り戻そうとして狂った人間の、悲しい嗚咽が聞こえる。
そして、そんなエイハブを馬鹿にしたり危険視したりしていた船員たちが、次第に彼に巻き取られていく経緯にも寒気がする。
ストレートな復讐劇でありながら作り物感ゼロ。
俳優たちの真に迫る演技が光る傑作。
程良く自然に接しないと多大な犠牲が、との寓話にも…
少し前に観た「老人と海」が
この作品の元ネタとの記事を目にしたので
「老人…」を意識しながら鑑賞した。
原作はヘミングウェイの「老人…」の
丁度100年前に書かれたもののようだ。
最後まで敵対するしないの決定的な差異や、
「白鯨」では人間が、「老人と海」では動物が
命を落とすという違いはあるが、
共に自然への畏敬と、
人間と動物の心の交流が描かれているとの
点は共通しているように感じた。
今となっては
物足りない特撮レベルではあるが、
当時としては迫力あるスペクタルシーン
だったと思えるし、
話そのものも単純ではあるが、
緊迫感あふれる展開には
作品の世界に惹き付けられるものがあった。
それにしても、
一人だけが生き残るエンディング、
白鯨は脅威の存在ではあるが、
大自然の象徴でもあると考えると、
程良く自然と接していかないと
人類に大変な犠牲をもたらすとの寓話にも
感じる物語でもあった。
人生の教示に満ちた一本。
<映画のことば>
「我々の仕事は、鯨を殺して世界に油を供給することだ。それを忠実に実行すれば、人々の役に立ち、神も喜ぶ。」
<映画のことば>
「仕事のためならどんなこともしますけど、個人の復讐のためでは…。復讐が油を産み出して金を稼ぎますか。」
「金が何だ。金以上のものだ。」
「何も知らぬ動物に怒るとは、神を恐れぬ行為ですぞ。」
「神などと!侮辱されれば、太陽でさえ打ち据えるわ。」
ひと儲けを夢見て、投資家(船主)か船を仕立て、種々雑多な人々が、その航海限りで乗り組む。
そして、一航海が終わると、投資家は鯨と船とを売った益金から船乗りの賃金と必要経費を支払い、残りを自分の収益として、それでまた船を買って次の航海を企画する…。
たぶん、当時の捕鯨は、今のような継続的な企業ではなく、船(一航海)が一回限りの経営体だった頃のものだったのでしょう。
そして、船乗りの間では「板子一枚下は地獄」とと言われています。船に乗り組む仕事は危険と隣り合わせ、という意味です。
そして、船がそんな一攫千金的な企業である上に、エーハブ船長の出漁の目的がお金儲けという企業的なものではなく、もっぱらエーハブ船長のモビー・ディックに対する「私怨」を晴らすことにあるということなら、航海の危険に身を晒す乗組員たちは、浮ばれないと思いました。
結局、あの嵐は、エーバブ船長の言う通りに「天の助け」だったのか、それともイシュメイルの言う通りに「天罰」だったのか…。
いずれにしても、私怨を動機とすることの愚かさということでは、人生の教示に満ちた一本だったことは疑いないと思います。評論子は。
(追記)
捕鯨船の乗組員のための(?)教会は、牧師の説教台が、捕鯨船の船首の形になっていたのが面白いと思いました。評論子は。
文芸的、宗教的に意味があるのかは知らないが、私的には全く面白くなか...
教会の教壇が船首を形どるほど町は皆海の男だ。同室の男もすごい。顔...
捕鯨の実写が使用されている
総合:55点 ( ストーリー:60点|キャスト:60点|演出:55点|ビジュアル:65点|音楽:60点 )
やたらと薄気味悪い物恐ろしげな雰囲気を作ろうとする大仰な演出がわざとらしい。特に登場するたびにグレゴリー・ペック演じる船長が芝居がかった科白を吐き続けるのにはまいる。この作品でそんな科白で勝負をして欲しくない。
映像は帆船や本物の捕鯨を撮影したと思われる場面があるのは予想外に良かったが、白鯨はいかにもな作り物感が漂うのは時代なりのもの。
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