博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのレビュー・感想・評価
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時代によって色を変える作品。
◯作品全体
40年以上に渡って続くことになる冷戦。本作が公開されたころはまだ20年程度の期間だが、その時代を生きている人にとってはいつ始まるかもわからない大国同士の戦争に20年も心配し続けていることになる。
本作を見る時代によって捉え方が全然違うように感じる。公開当時からブラックジョーク作品として注目されていたようだが、冷戦真っ只中の時代にこの作品を見たとすると、今ある平和の脆さを鋭く突き付けられている感じがする。さらに言えば核戦争後の地下世界も「選ばれし人だけの世界」だと言い聞かせられているようにも受け取れる。ストレンジラブ博士のキャラクター造がフィクションであることを意識させるから嫌味っぽさはないけれど、モヤっとした感情にはなりそうだ。
だが、そのモヤっとした感情こそがブラックジョークの醍醐味なのだろう。1960年代にこの作品を見ていたとしたら、登場人物の尖ったキャラクター像の面白さと無責任さの歪みに揺さぶられていたに違いない。
2024年に見る本作は、「冷戦もの」の枠組みにある作品として映った。米ソの核戦争というIFがあり、核戦争を実行しようとするものと阻止するものの衝突がある…といったような。過ぎ去った時代は俯瞰することで構図を見てしまいがちだけど、本作を見る視点としてはもったいない視点なのだろう。冷戦の時代のさなかで、本作の当時者として見たほうが、きっとより楽しめたような気がする。
「色褪せない名作」みたいな語り口は少し似合わない作品だ。むしろ時代によって色を変える作品だろう。個人的には、戦争のくすぶる臭いを嗅ぎながら見る本作は、きっとより刺激的で魅力的だったと思った。
○カメラワークとか
・『現金に体をはれ』や『非情な罠』で印象的だった鏡の演出。本作ではリッパー准将が拳銃自殺するシーンで、実像は映さず洗面所の鏡に映るを映していた。英軍将校の「爆撃機の帰還コードを教えろ」という声掛けを無視して洗面所へ向かうリッパー准将の様子から、鏡に映ったリッパー准将が英軍将校にとって虚像のような存在となっていることがわかる。
○その他
何かにのめり込んで狂ったような行動、表情を見せる登場人物の描き方はさすがのキューブリックなのだな、と思った。リッパー准将の発する言葉や行動は「反共」という思想が根源にあって、目の前にいる人物をほとんどいない存在のようにとらえていたり、便利な道具のように使ったりする。リッパー准将の目線や口調、迷いない仕草が逆に「狂っている」表現になっていて、特徴になっているのがすごい。作戦会議室での将軍やストレンジラブ博士の芝居は少しやりすぎなような気もするけれど。
勇ましさに巻き込まれたくないなぁ
改めて観ると、本当によく出来たブラックコメディ。
ちょっとした権限を持った1人の行動をきっかけに始まった危機が、不幸の積み重ねで人類滅亡にまでつながってしまうという話を、実際のキューバ危機を背景にしたタイミングでこうしてつくりあげてしまう心意気がすごい。
60年以上前の作品だが、陰謀論や、核抑止のロジックは今も変わらない。というか、それが情報の偏りをあえて生み出すネットの仕組みのために更に日常化し、他国や他国民に対して、疑心暗鬼で攻撃的な態度になることが「愛国心」と言わんばかりの誤認識がそこら中に蔓延していることを思うと、薄寒くなる。
夏頃、「核兵器は安上がり」とみんなのお母さんになりたがってた人が口走っていたと記憶しているが、それを擁護していた人々もこの映画を観たらどんな感想を持つのだろう。
ただし、今作はあくまでもコメディ。テキサス出身の少佐がロデオのようにミサイルにまたがる場面とか、博士の右腕が無意識のうちにナチ式敬礼をしようとするところとかの印象的なシーンのみならず、核戦争を起こしてしまった後でも
「男1人に対してセクシーな女性10人の割合で地下で暮らせば、あっという間に問題解決」なんて提案に、みんな鼻の下を伸ばしてしまうマチズモな着地もコメディとしてお見事。
そもそも「核爆弾を執念で敵基地に着弾させようとしているのは受精のメタファー」という話もかねてから言われているが、個人の本能的な欲望と世界の命運とを重ねて描くというバタフライエフェクトのような仕掛けは、セカイ系の原型とも言えそう。
とにかく、今作を観て再確認したのは、勇ましいことを言っている人のせいで、理由もわからず巻き添えを食って死ぬのは心底嫌だなぁということ。
笑わせながら、芯を食ったところを突いてくる名作。
ブラックコメディを極めて恐怖を植え付ける反核映画の独自性
SF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック監督のもう一つの代表作で、米ソ冷戦時代(1947年から1989年)の核保有の緊張関係を大胆に風刺したブラックコメディの傑作。原作がイギリス空軍将校ピーター・ブライアントの『Two Hours to Doom/破滅への二時間』(1958年)で、その後ペンネームでピーター・ジョージの『Red Alert』に変更されたとあります。第二次世界大戦後の米ソの均衡が崩れた1962年のキューバ危機で核戦争寸前まで緊張が高まった事件が映画化の背景です。それでも、核戦争の恐怖を最初に扱ったスタンリー・クレイマーの「渚にて」(1959年)があり、このキューブリック作品と内容的に類似したシドニー・ルメットの「未知への飛行」(未見)も前後して1964年に公開されました。その後マイケル・カコヤニスの「魚が出てきた日」(1967年)、21世紀になってフィル・アルデン・ロビンソンの「トータル・フィアーズ」(2002年)と核の恐怖を警告しています。しかし、この中でキューブリック監督作品が一際異彩を放つのは、国家間の政治的対立から人類の破滅まで可能性があり、深刻ならざるを得ない核戦争の題材をブラックコメディにしたことです。それもコメディのジャンルには違いないものの、ユーモアよりホラーが観る者を襲い戦慄が走ります。コメディ好きでも、笑えるシーンは数える程でしょう。「市民ケーン」のオーソン・ウェルズと並び、アメリカ映画界の異端の天才であるキューブリック監督でしか創作しえない演出の一寸の隙も無い完璧主義。原作者ピーター・ジョージはコメディ改変に不満を覚えたと言いますが、ブラックを極めたことで真面目に描いた以上の恐怖を感じました。それは共産主義の侵略と教化を恐れるあまりソ連を総攻撃するR作戦を強行するリッパー将軍の狂気であり、爆撃部隊全34機で唯一通信手段を失った機長コング少佐の核爆弾に跨り歓喜の雄叫びを上げて落下する任務遂行の軍人の姿であり、国防省の作戦会議に同席した兵器局のストレンジラブ博士(このネーミングの奇抜さ)の偏執的な価値観と言動の三者三様の異常さにあります。
主演のピーター・セラーズは「ピンクの豹」(1963年)の当たり役ジャック・クルーゾー警部で有名でも、晩年の「チャンス」で名演を遺す喜劇俳優ですが、この作品ではストレンジラブ博士とイギリス空軍大佐マンドレイク、そしてアメリカ大統領マフリーの3役を見事に演じ分けています。コメディアンとして凝った芝居をこなすストレンジラブの可笑しさと不気味さ、律義なイギリス軍人マンドレイクの中庸を得た演技、そして当時38歳とは思えない貫禄で冷静沈着なアメリカ大統領をシリアスに演じ切っています。演技力と云うより別人格になり切るその憑依の役作りの巧みさが、この一筋縄ではいかないキューブリック作品を成立させています。助演のタージドソン将軍のジョージ・C・スコットも上手い。「ハスラー」「パットン大戦車作軍団」と観た作品は少ないも、どれもが存在感があり名優でした。秘書と密会する不謹慎さと、作戦会議では部下の使命感と技術を認め軍人として誇りを持っている将軍の現実を見通す諦観まで感じさせます。コング少佐もピーター・セラーズが演じる予定だったのを訛りの問題で代役したスリム・ピケンズ、サイコパスのリッパー将軍のスターリング・ヘイドンも共に好演でした。今回改めて調べて驚いたのは「ボクサー」、「スター・ウォーズ」シリーズ、テレビドラマ『ルーツ』、「フィールド・オブ・ドリームス」のジェーズム・アール・ジョーンズが空軍少尉役で映画デビューしていたことです。32歳の若いジョーンズ、まだ美声を響かせてはいませんでしたが、確認できました。
北極海側のソ連上空を飛行する爆撃機がR作戦を発令されてからの緊張感と、攻撃を受けて機器の破損から通信手段を失う緊迫した脚本の流れが素晴らしい。コックピットの再現度の高さはキューブリック監督のこだわりの凄さを見せ付けます。リッパー将軍しか知らない停止命令の暗号を聞き出すため、バーペルスン空軍基地にアメリカ陸軍の空挺部隊が進軍し、味方同士が殺し合うこの異常な戦場シーンのリアリティ。そこで結局、基地の部下が投降して、捕まるのを恐れたリッパー将軍がひとり銃乱射の抵抗を見せるのかと予想すると、拷問されるのが怖くてあっさり自死を選ぶ。そこからマンドレイク大佐が将軍の妄想からヒントを得て辿り着くところは省略されています。しかし、本当の怖さは、核攻撃を一つでも受けたら制御不能の自動装置で地球上の生物を全て絶滅する規模のコバルト爆弾が爆発することです。これは相互抑止の概念で、先制核攻撃を理論上抑止できることを意味しますが、この皆殺し装置の完成はアメリカに知らされていなかった。いや正確に言えば、サプライズで発表予定であったとする、あとの祭りの窮地に追い詰められます。勿論リッパー将軍が知っていれば越権行為は無かったかも知れません。爆撃機、空軍基地、国防省作戦室の3つの場面による2時間における軍人と政府高官たちの暗中模索のドタバタ劇の結末は、現実にあっては想像もしたくないジ・エンドでした。
核攻撃の発令は大統領だけが最終判断の権限であり、もしたった一人の異常な将軍によって強行されるならば、軍組織の暴走を抑える手立てが必要になるでしょう。元々戦争抑止のために核保有している理屈は、使わないから意味があります。これは、間違って使われたら最悪の世界になることへの警告として、観る者全てに恐怖を植え付けます。音楽ローリー・ジョンソンのセレナーデ調の優しい音楽の効果は皮肉と憂いを誘い、ギルバート・テイラーのモノクロ映像の陰鬱とした色調は人類の深刻な課題を提示します。キューブリック監督35歳の映画史に遺る傑作でした。
核戦争の危機・・・
昔から興味のあったスタンリー・キューブリック監督作品。なかなか見る機会が無かったのですが、今回BS放送で見かけて録画して鑑賞しました。でも・・・
ファン人、ごめんなさい。自分には、響きませんでした。淡々と進む会議シーンなど、何度も長い瞬きに襲われ、引き込まれることは無かったかな。
【ネタバレ】
クライマックス、世界の終わりを阻止しようと画策していくところは、ちょっと面白かった。次々と自分たちが予想しなかった出来事が起こり、破滅へと迫っていく。
裏目、裏目に事が進み、結局世界破滅なんだよね。きのこ雲のオンパレードでエンディングを迎えてしまった。
ブラックコメディって、触れ込みだったけど笑える気分じゃなかった。
コーラはどうでもええねん!
なんやこの長いタイトル!絶対覚えられへん!と気になってはいたけれど難しそうな映画やなと思いあらすじすら読んでいなかった。今回、WOWOWで放送されたため視聴。
ジャンルはコメディと書いてあったけれど、苦味強すぎる…必死に止めようとするものと必死に作戦を遂行しようとするもの。偶然に偶然が重なり結局…。現実にありえそうと思ってしまうところが恐ろしい。最後のまた会いましょうという歌詞が最大の皮肉やなと思う。
小銭がないので大統領に電話できないとあたふたする大佐が自販機を撃つよう兵士に言い、兵士がコカコーラに訴えられると返すシーン。思わずコカコーラどうでもええねん!とつっこんでしまった😅
ピーターセラーズどこでてるんやろう?あれ?この人も似てるなあ、この人もそうやなあってぼんやり見ていたら1人三役!?いや〜参りました。
恐るべしピーター・セラーズ 〜 風刺が効いてる
ピーター・セラーズが、イギリス空軍マンドレイク大佐( … 戦時下ビルマでの日本軍による残虐な体験を語る姿にドキリ。)、マフリー米大統領( … 緊急時にもかかわらず、本論に入る迄が長い。)、ストレンジラブ博士( … ナチスドイツの科学者。ドイツ語を英語に直訳した名前。不自由なはずの右腕がおもむろに上がり、ナチス式敬礼を。いきなり「 総統!」と叫ぶ事も。)と、個性的な三役を熱演。中でもクセの強いストレンンジラヴ博士のインパクトが半端ない。
飛行中のU.S.AIR FORCE機内で、雑誌『 PLAY BOY 』を眺めたり、カード遊びなどをして寛ぐ搭乗員達の元に、ソ連への報復攻撃として核基地へ核爆弾を投下する「 R作戦 」が発令される。信じ難いその命令に、「 もしかして忠誠心テストか?」と疑いたくなるのも頷ける。
ペンタゴンの戦略会議室での彼らの陳腐な言動が、事態の異常さ、危うさを一層リアルに感じさせる。
絶対に起こり得ないと断言出来ない今の世界の不安定さを改めて恐ろしく感じた。
ー 躊躇いもなく核爆弾を落とせるような奴は人間じゃない
ー もう後戻りは出来ない
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕)
「われわれの高貴な体液が汚されている」
アメリカ空軍戦略航空軍団・バープルソン空軍基地司令官のジャック・D・リッパー准将(スターリング・ヘイドン)は人知れず気が狂っており、彼は独断で「R作戦」を発令します。
「R作戦」とはアメリカが核攻撃を受けワシントンが壊滅状態となり、指示命令系統が破綻した場合に、報復のために下級指揮官の判断だけで核攻撃を行う命令です。その命令を受けた34機のB-52戦略核爆撃機はソ連各地の攻撃目標を目指し飛行を続けます。
たった一人の狂気が人類全体を危機に陥れかねない核時代の恐怖を描いた本作、まさにブラックユーモアの教科書的映画として愛すべき名作です。登場人物がほとんどみんな頭おかしいし、人類存亡の危機なのにやってることはずっと茶番劇だし、振り回されるだけの大統領、ソ連の駐米大使、ナチの残党の天才科学者、カウボーイ気取りの機長とみんなキャラが立っています。機長が馬の代わりに核弾頭に乗って振り落とされないまま落下していくロデオシーンは最高です。
この映画はキューブリックという鬼才とピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコットという名優たちが創り上げた娯楽大作、まったくのフィクションですが、核兵器は真面目な政治家と真面目な科学者たちが真面目に創り上げたまったくのリアルです。映画は人類を絶滅させませんが核兵器はそうではありません。世界を破滅に導くのは真面目な人間たちであり、真面目な人間というのは手に負えないものです。敵対勢力を「地上から消し去る!」と叫んでいる指導者も、おそらく本人は大真面目なのでしょう。
リッパー准将と同じように「われわれの高貴な体液が陰謀によって汚される!」と叫ぶ真面目な人間は今も後を絶ちません。正気を失った真面目な人間ほど始末に負えないということを本作はわかりやすく教えてくれます。そしてキューブリック亡き今、そういう人間は増え続けていくのでしょう。
戦争をブラックユーモア満載で皮肉たっぷりに描く!
まず本作で一番驚くのは、邦題があまりにも長いことでしょうか。それだけでもこの映画が以下に変わっているかが分かります。
司令官ジャック・リッパー将軍が精神に異常をきたし、ソ連への水爆攻撃を命令してしまい、ソ連側が保有している核の自爆装置は水爆攻撃を受けると全世界を破滅させてしまうという、とんでもないがありえそうな物語です。
たが本作は完全にコメディタッチなのです。会議室の場面がホント皮肉たっぷりなコメディ具合。水爆攻撃を機にソ連をつぶそうと考える将軍ですが、大事な時期に愛人から電話がかかってくるという緊張感の無さ…。危機的状況であろうともいがみあう両国の代表者で、冷静と思われる大統領同士の電話でさえコミカルに描かれるというブラックコメディ具合です。
そうなんです、何十億人いや地球人類の全ての命は、この緊張感が無い人間達に握られているという驚愕のシーンなのです。映画の冒頭では、アメリカ空軍が「映画はフィクションであり、現実には起こりえない」とコメントが入るのだが、映画のノリからするとそれさえも風刺と思えてしまう程です。
ストレンジラブ博士による、世界が破滅した後の人類の生き残り計画がこれまた突拍子もない。選抜された男性と性的魅力のある女性を1:10の割合で地下の坑道に避難させ核が消える100年後まで生き延びるというもの。妄想かも分からない計画に、権力者達は魅力高い女性が多いという事実に喜ぶ者まで出る始末です。いや~呆れてしまいますね。
その直後に淡い曲と水爆のきのこ雲の連続するシーンが映し出され、なんとも言えない気持ちで映画は終わってしまうのでした。これから核戦争がはじまってしまうんだと言わんばかりに…。
ちなみにラストシーンでは、ソ連の大使館が会議をカメラで隠し撮りしているのですが見つかってしまい、パイ投げが始まるというラストも撮られていたみたいなのです。水爆シーンの中、パイ投げ…。さすがにブラックユーモアの度を過ぎたと感じたのか、カットされたようですね。
両国の権力者のドタバタをよそに、命令のために意地でも水爆を落とすため命を懸け水爆と一緒に落ちていくキングコング少佐の姿が妙に印象が残る映画でありました…。
狂っている人たちに操られている国家
30年ぶり位に視聴した。今となっては、東西冷戦の対立構造とは状況が異なってしまっているが、東側、西側それぞれの人物の本質、言い分に対する強烈な皮肉が込められていて、軍拡競争に対するキューブリックの考えが表現されていると思った。
米軍の攻撃指令は、共産主義者の陰謀論が、本当であると信じてしまったリッパ―准将から出される。相手を必要以上に恐れることから、敵を過大視し、思い込みから狂気に至っている。登場する軍人は、総じて好戦的で、相手を疑い、自分が罰せられないこと、自分の秘密は守ろうとして行動している。B52の機長ユング少佐は、カウボーイハットを被り、突撃に興奮する勇敢なアメリカ人として描かれ、しかし、それは神風特別攻撃隊の姿にもダブって見えた。
また、B52内の搭乗員が操作をするシーンなど、軍の動きについては、正確でリアルな感じで描かれ、指示どおりに実行しているのに対して、個々が主体的に行動する部分については、個性的で偏った趣味や思想をもった描き方であった。人間は、個々の考え方は様々で、間違えることもあって、その組み合わせ次第では、このような大事態も起こり得ると示唆をしているのではないか。
ピーター・セラーズの博士は、ヒトラーを崇めていた兵器開発者として、右手がついつい上がってしまうのが笑えた。ミサイルやICBMの技術は、ドイツの研究者を米ソ等が召喚して開発させたというのが背景にある。その殺戮を尽くして、人類を支配する野望を隠しながら、総統の夢を実現しようとするように描かれている。ナチスや神風なども取り込んで、その狂気も描きたかったのだろう。
英国製作の映画ということもあり、ピーター・セラーズを起用し、リッパ―准将の副官、米大統領、Dr.ストランジラブ(異常な愛情)の3役を見事に演じ分けていた。何とかして核戦争を阻止しようとする演技と核戦争をデザインした側が、一人の中に存在するというような暗喩もあるのかもしれない。
キューブリックは、このような核軍拡競争を、本当にバカバカしいと思っていたのであろう。痛烈に皮肉ることで、この映画を不滅なものにしている。と共に、それが歴史的に本当に起こったという事実から吾々が何を学ぶかが大切なのではないだろうか?
自分は、軍拡競争は、政治家や金融資本家らが、恐怖と対立を煽って、意図的に紛争や戦争を起こし、そこから自分たちに利益が生じて、大儲けができるように国際世界を操っていると思っている。そういう人たちも、恐らくこの映画に登場する人物たちのように、端から見ると狂っているに違いない。
コントだよね?
核爆弾という世界で1番危険なものをコントに使うなんて、皮肉が効きすぎている。
あれだけ深刻に話し合っていた(?)癖に、最後ひょんなことで爆弾を落としちゃって、ドリフかってぐらいありえないほど大爆発させていたのがブラックジョークすぎた。
こんな調子で戦争が進んでいたらと思うとゾッとするが、うっすらと現実味のあるところが恐ろしい。
副題
面白かった、、、と思える歳になった。
副題についてですが、水爆を愛する理由は地下に避難する時の男女比率が関係あるのではないでしょうか。
魅力的な女性たちとハーレムならば、地上の滅亡を許容できるとの意味があったように思えますが、このような解釈もありですかね?
とても面白かったです。
タイトルなし(ネタバレ)
核を持つ国に対し、
自国も核を持つことで、
お互いに核を牽制しあい、
核戦争が起こらないようにする仕組みはわかるが、
核に対する決定権を持つ人間が暴走した時が怖い。
現在のプーチンの暴走とは別に、
映画では、
共産国ではなく
民主主義の国が暴走するのが面白い。
(当然プーチンの暴走はあってはならない悪だ。
映画はプーチンとは別の娯楽として。
僕自身は共産主義より民主主義の方が優れていると思っているが、
民主主義も完ぺきではない。
格差社会への皮肉も見えるかもしれない)
スタンリー・キューブリック監督は戦争反対をコミカルに、
政治家たちに対する皮肉を込めて
作ったのかなと感じたが、
真面目一本の監督だと思っていたが、
監督の笑いのセンスも見れて良かった。
ミサイルと一緒に落ちながら
叫び狂っている人の演出おもしろかったし、
最後の爆破につぐ爆発の演出のシュールさ、
博士が掲げる少子化対策の演説など、
現代社会の問題に通じる内容でした。
当然戦争はない方が良い。
どうか現実の世界で核戦争が起こりませんように。
ってタイトルほど博士絡んでこないよね?
全編白黒による核戦争の脅威を描いた映画
冒頭ではこんなことは起きないって米軍の注意書付き
一人の将校が気が狂い対ソ先制核攻撃に打って出る凶行を命令する
外部から止めるすべがなく攻撃に向かう爆撃機を止められない
米軍同士の戦争、米ソ相互の不信感、システムの欠陥、
システムに振り回されて無意味に死んでいく者たち、
それら障害を乗り越えられるかと思いきや
結局作戦を忠実に実行した人間によって人類の未来が閉ざされる
感情の存在しないシステムに対する不信感を感じる
ちょっとナチを感じさせる博士など今からすると時代錯誤だが
この映画が公開された頃は冷戦真っ只中だったし
ソビエトも当たり前のように敵対する勢力として描かれているのは当然なのかもしれない
しかし暗い時代を思い出させるような映画だったな
全くストーリーに影響なかったけど
爆撃機の機長がロディオでもするかのように
核弾頭と後下するシーンは観て笑ってしまった
どんなテンションなんだよwっていう
もう2度とこんな危険のある時代が戻ってこないことを祈ってます
名作!
R攻撃・・プレイボーイ誌を読みながら飛んでいたB52のパイロット。攻撃目命令なんて受けたこともないのに、いきなりの核攻撃指令である。ソ連が攻撃を仕掛ける前に先手を打てという被害妄想によって、リッパー将軍の越権行為によって下された作戦。タージトン将軍は早速ペンタゴンに赴き作戦会議で発言する・・・
一方のリッパー将軍。核攻撃戦闘機を呼び戻す暗号を知っているのは彼だけなので、マンドレークが必死に聞き出そうとする。しかし、大統領側からもリッパーの基地を攻撃するよう指示があり、リッパーは死に混乱に陥り、暗号を解析したマンドレークが拉致される。電話線も切られてしまい公衆電話で大統領に電話をかけるところでは笑わせてくれる。なんとか暗号を伝えたものの、一機だけが連絡取れずに攻撃目標にまっしぐら・・・
マンドレーク大佐、大統領、ステレンジラブ博士の三役をこなすピーター・セラーズ。最後の博士が言う「地底生活」。ばかばかしいけど、その後の核戦争後を描いたSFでは必ず登場するんだから、この映画が残した功績は大きいのかもしれない。まぁ、その前に、ソ連大使がそれをも阻止しちゃうけど(笑)
同じ監督ならあまり好きでは無い方の映画
ちょっと頭のネジが外れた人たちが、地球を破滅させるまでの話。ンフフ、と軽く笑える感じのシーンが多いが、時代背景を深くしれば知るほど、もっと面白く感じるだろうな
タイトルなし(ネタバレ)
米ソの戦争を皮肉った表現でユーモラスに撮ってますね笑まさにブラックユーモア
解説見てて色々納得
キューブリックの戦争に対する馬鹿馬鹿しいと思う気持ちみたいなのがこの映画を作るきっかけになったんだなぁ
ソ連は緊急時でもスパイしちゃうし、
軍人は戦争したい欲すごいし、勝ち負けに拘るし
生き残る人間の選別しましょうとか
2000万人の被害で済むんですよ!!とか犠牲者数の比較とかして何なん笑
あほらしいって思わせるのがこの映画の目的なのかな
博士が立ったのは笑った笑
お前立てるんかい!!
ブラックコメディ?
ブラックコメディと聞いていたので、笑えるものとして観たけれども、笑えるシーンは無かったかなぁ?
オープニング映像と音楽とフォントのセンスは素晴らしかった。
こんなフォントがボトルに書かれた韓国の飲み物があるが、
今の時代におしゃれだ人気だとされているものは、とっくの昔にあったりするんだなと思った。
ここのレビューを読んでから、ピーター・セラーズが1人三役をやっていると知りました…。
最後にソ連の大使が時計を弄っているのは何故なのか分かりませんでしたが、あれも小型カメラなのですね。
死の灰がばら撒かれた時点で、外に出られないからスパイ行為は意味をなさないと思いますが、それだけ混乱していたんだと捉えました。
その後にパイ投げのシーンがあったらしく、それがあったら大使が何をしていたのかはっきり分かったのになあと思いました。
別所で読みましたが、博士が最後に立ち上がったのは、「私も歩けるからシェルターへ入る権利がありますよ」というアピールではなく、敬愛するヒトラーの理想国家がいよいよ実現するということに興奮して、思わず立ち上がってしまった、という意見に賛同します。
歩行能力の有無に関係なく博士はシェルター入りできるだけの知識学力があると思うので…。
下手なお笑い番組より笑える
最後に、コング少佐が爆弾に乗っかったまま、ICBM基地に、
落っこちていくシーンは、何度見ても笑えますね。しかし、
最高に重たいテーマで笑いが取れるのですから、キューブリック
は、天才ですね。
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