「キモいオッさん像」ハイテンション なつ あらすじとツッコミさんの映画レビュー(感想・評価)
キモいオッさん像
このタイトルを聞くとソワッとなる位は好きなフレンチホラー
血がビャービャー出る系は好きなので当時、ビデオ?DVDだったかをレンタルして何回も視聴した。
配信になってくれてありがとう…
ネタバレを知ってしまえば序盤、嫌な夢を見るマリー(たぶんオッさん)やアレックスの実家へ行く道中のやり取りでマリーの恋心が見て取れる。
普通なんて嫌いと言い、何故なら君を愛しているからとのラブソングを笑顔で2人で歌う。
恋してる対象の家族に会うって気恥ずかしいし、背徳感があるなら尚更居心地が悪いだろう。
微妙な雰囲気で家に通されるマリー。
そんな家から抜け出しタバコをふかしながら見たのは彼女のシャワーシーン。
実家ゆえの安心感で無防備な愛しい人。
隠していた恋心が情欲になりセルフ行為に至った瞬間始まる凄惨な虐殺。
解離性同一障害の一種なのかな?
アレックスが欲しい、アレックスだけが欲しい、アレックスだけが愛しい。しかし、彼女には愛する家族、恋人がいる。
自分のやましい恋は叶わない。
そこに顔を出すのが醜い欲望。それはだらしない格好のキモくゲスいおっさん。それほどまでの醜く執拗な思いを持っていたのかと驚く。
男は躊躇いなく家族を残虐していく。これでもかと。
首をチョンパ、喉と腕をチョンパ。
この時のクローゼット越しに目を見開いた母親の死に様と血飛沫の表現はすごいなと。恐怖煽りまくり。
そっと外に出て耳をすます。ここのカット好き。
死際に呟く母親の「どうして…」それはそう、このだって殺してるのマリーだし。
キモいおっさんの行動は別人格のマリーが俯瞰で見ているのか、彼女はまるでわからない。
初めて視聴した時は真相がわからなくて、マリーがオッさんから身を隠す時に普通はすぐ逃げるとか隠れるとか立ち向かうとかしそうだけど「痕跡を消す」ってのに驚いた。
何?フランスの大学ではそんな護身術教えてんの?とか思って観てて、そしたら犯人もそっくりそのままをなぞっていく。当たり前だ。マリーだから。
助けようとしているマリーに怯えるアレックス。ここも地味に伏線。
トラックの中でのやり取りやガソスタでの店員さんとの行動。この辺りはしっかり描いていない。
事実として残っているのは彼女による店員殺しのみ。
はっきりいって、ネタバレしてしまえばこれはズルいのでは?って思う作品かもしれなあ。
伏線的な描写も少ないし、犯人像がしっかり出来すぎている。
あれ?これは…と違和感を覚えるのはオッさんとのガチバトルで劣勢になった時に「お前も彼女に欲望するのか?俺もだ」て言った時。
オッさんとの決着がついた時に悲痛な声で叫ぶ。
それは己の中の欲に塗れた姿を自覚したからなのか。
マリー=オッさんが発覚し、逃げるアレックスを追うマリー扮するオッさんは親友マリーではなくアレックスの愛のみを求める己の欲望のままの姿。
それと戦うマリー、警察が役に立たないと知った時の覚悟を決めた瞳、巧みな心理戦。
それらが全て彼女の心の中で起きているなんてとても思えない作りになっている。
しかしその様なズルいストーリーでありながらもスラッシャーホラーとしての十分なグロさや演出と音楽。良くも悪くも視聴者の心に何かしら残る良作となっていると思う。
マジックミラー越しに、本当に私の事見えてませんよね…と尋ねるアレックスにギンッ!!て反応するマリーが怖すぎて、一生抱えるトラウマを背負った彼女が不憫でならないラストだった。
ホラー作品のラストはモヤっとしてる方がちょうど良い位に思う私なのだが、首にこだわってたのはなんなのかが気にはなる。
覚悟はいいか、俺は出来てる…
