野良犬のレビュー・感想・評価
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天国と地獄より上の作品
天国と地獄はドラッガーの溜まり場の表現と
丘の上のアジトに新一と刑事が同時に
辿り着くシナリオに詰めの甘さが残る
その点「野良犬」では指摘できる弱点が
見当たらない非常に完成度の高い作品
特にエキストラの使い方は素晴らしい!
暑い、厳しい現実をどう生きるか
とにかく暑そう。汗を拭うシーンがとても多い。
その中で最後、犯人と対峙するシーンだけ美しいお花畑になり。
まるで夢の世界の様になります。
それは同じ復員兵の村上刑事と犯人の対比ですね。復員の際バッグを盗まれたことのある2人。
でも立場が全然違う。それはどう生きるかの選択が真逆だったから。世の中を恨むか、そのなかでまじめに生きていくのか。
最後の犯人の慟哭が切なかった。
新米刑事の成長物語
黒澤映画は当時の人々、その暮らしを映し、息遣いや、臭い、暑さまで伝わってくる。三船敏郎演じる新米刑事が拳銃を盗まれたことから、殺人事件が起き、ベテラン刑事演じる志村喬と共に犯人を地道な捜査で追い詰めていく。三船敏郎はその責任感から、とにかく猪突猛進、熱く真っ直ぐ、志村喬は先輩刑事としてそれを温かく諭す。このコンビが良い。犯人・遊佐を追う過程で出会う一癖二癖ある人物たちも情が伝わると言うか、根っからの悪い奴という感じではない昭和さがある。志村喬が遊佐の泊まるホテルを突き止め、三船に電話するシーンは緊張感あり、この映画一番のシーンだと思う。三船が淡路に、世の中が悪いと言って責任転嫁し、悪いことをする奴が一番悪い奴というシーンと、ラスト、三船はまだ新米だから、犯人の気持ちを考えてしまうが、そんな犯人の気持ちより、善良な市民を守ることが大事、いちいち考えていられないし、捕まえた犯人のことなど忘れると諭す志村のシーンは良かった。生きるためには立ち止まっていられないという監督のメッセージに感じる。
本当にすごい。
若い頃、一回だけ見てすごいと思った映画を最近見直したりしている。今見ると色あせて、風化してしまっている作品が多いが・・・これは凄い。本当にすごい映画だと思った。黒澤明すでに完成している。
とくに逮捕された犯人が泣き出すところがすごい。その構図。その泣き出した犯人を見て驚く三船の表情がまたすごい。そこのところのショットがすごい。ショットは全体的にすごい。ピストルを構えた犯人と三船が対峙するショットもすごい。黒澤のショットは芸術的かつ通俗的だ。映画監督を目指す人はこの映画を10回は見てショットやカメラワークの研究をすることをおすすめする。
ジリジリした暑さとスリル
DVDで鑑賞。
三船敏郎と志村喬演じるふたりの刑事のコンビぶりが秀逸の極み。若手を導くベテランと云う構図がナイスでした。徐々に相棒感が増していく展開も堪りませんでした。
だからこそ、佐藤刑事の撃たれるシーンがかなり衝撃的でした。撃たれる様子は映されないのに、悲痛を溢れさせる演出が見事。村上刑事の絶叫がさらに際立たせていました。
うだるような暑さの中、滴る汗を掌で拭いながら事件を追うふたりの刑事。太陽の熱気が届いて来るようで、こっちまで汗を掻きそうになるほどの迫真のリアリティーでした。
闇市でゲリラ撮影されたシーンは、戦後間も無い当時を記録する貴重な資料だな、と…。混乱とカオスが伝わって来ました。魑魅魍魎が蠢いているような怖さも感じました。
ダイナミズムと躍動感溢れるカメラワーク、緊迫した場面に敢えて穏やかな劇伴を流すと云う手法を用いて、とても見応えのあるシーンが作り出されているなと思いました。
[以降の鑑賞記録]
2014/03/22:DVD
※修正(2023/06/01)
とてもよかった
舞台は浅草が多かったのだろうか、当時の繁華街がエネルギッシュでよかった。球場もよかった。5万人もの観衆が集まっていた。まだ戦後の爪痕が生々しい時期が写っている。以前に見たときは闇市の印象があったのだが、特に闇市はなく、喫茶店や劇場など復興の勢いがみなぎる場所が多かった。そんな情景がだらだら描かれているところが楽しかった。
犯人の桶屋の家、凄まじい荒れようで壁がない。そんな家に子沢山。それに比べて志村喬の家はちゃんとしてて子供が三人並んで寝ていて幸せそうだった。彼は警官だからおそらく戦争にも行ってないのだろう。そんなところに引け目があるのかなと思ったが気にしている描写はなかった。
ホテル、電話、高円寺のアパート、雨、ドレス、階段、犯人、ホテルの経営者と従業員の愛人、などが目まぐるしく交錯するクライマックスがスリリングで素晴らしい。
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