「ハンディを逆にリアリティ構築の武器にした大島渚の非凡さが…」日本の夜と霧 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ハンディを逆にリアリティ構築の武器にした大島渚の非凡さが…

2022年11月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

ミステリー仕掛けの
ディスカッション舞台劇の様相だが、
何か壮大な実験映画を見せられたような
鑑賞気分だった。

また、頭の弱い私には
外国映画で良く経験することだが、
誰が誰やら分からなく点や、
描かれる場面がどの時点の話なのかが
分からなくなってしまうことがあって、
もう少しその点が分かりやすい編集で
あったならばとの思った。

この作品、解説には、
異例のスピードで制作しなければならない
背景があり、
台詞を間違えても中断せずに撮影を続けた
ことが独特の緊張感を生んだ、とあった。

演出で凄いと思ったのは、
各俳優が言い間違いでも、
通常の会話ではあることなのだからとして、
それを顔に出さないように
徹底指導して演技させたことだろう。
ハンディを逆にリアリティ構築の武器にした
ところにも大島渚の非凡さを感じる。

話は、社会への怒りが
ともすれば身内に向かってしまうのは、
少し間違えると連合赤軍のリンチ事件同様に
発展しかねない危うさも感じる内容だ。

半ば内部崩壊したような
当時の左翼運動ではあるが、
政治を自分達の手で本気で変えようとした
社会に対する当時の先輩世代の真剣さには、
ある意味ノンポリだった世代の私は
尊敬の念をいつも覚えている。

KENZO一級建築士事務所