「スクリーンから噴き出す憎悪と狂気」何がジェーンに起ったか? everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
スクリーンから噴き出す憎悪と狂気
すごかった。
とにかくすごかった。
観ていて具合が悪くなるくらい、あまりの怪奇にげっそり疲れました(>人<)。
ストレス度で言えば個人鑑賞史上最高かも知れない…。
“1917”→”1935”→“Yesterday”と来るから、後で回収されるのかと思ったけど、現在って意味なんですね。
サイコサスペンスとして観ると、矛盾が多くてひたすらイライラします(>_<)。
残念な点
◯心底助かりたいのなら、体力がある内に窓から隣人に向かって叫べば良いだけのこと。
手紙を紙飛行機にでもすればもっと飛ぶ。
Edwinが初めて来た時に声をかけたら良かった。
◯外出時間が短過ぎる。
◯小柄なJaneが、女性とはいえ体格の良い死体を1人で易々と運ぶことは非常に困難なはず。
しかし!
これは美しかった姉妹達の憎悪劇として観るべきなんだと思いました。
自分の高評価を得るために、更なる高揚感と優越感を味わうために、互いに依存していた姉妹です。
ちなみにEdwinとママの関係も共依存っぽい。
*姉Blancheの心情*
1917年
6才の妹だけがステージで注目を浴びる。
パパは妹ばかり可愛がってズルい。
しかし妹が稼ぎ頭だから今は我慢。
ママは優しくしてあげなさいとか言うけど、いつか妹を追い抜いて大女優になって見返してやる!
1935年
ここ数年は女優として成功してるわ。
妹は演技が下手で、私のコネが無ければ役を得られない。才能のない哀れな妹。
そんな呑んだくれでダメな妹を面倒みてあげる私、なんて良い人なのかしら!業界でも人格者として評価されてるぅ♪
…だけど、これだけ仕事を回してあげているのに、妹はなぜ大勢の前で私にあんなに恥をかかせるの?!(激怒)。
現在
こうなったのも自業自得。
社会的地位も信用も完全に失った妹は一生、可哀想な私の面倒をみるハメに。
過去の栄光に浸って昔の歌をまた歌ってる…、パパの歌なんか、あぁ聴きたくない!罪悪感を忘れさせないためにも、呼び鈴沢山鳴らしてやる。(歌や過去の話題が聞こえると必ず鳴らす。)
ますます酒の量が増えてマジで狂ってきたし、ホント醜女だわ。昔の面影は消えて、私より遥かに落ちぶれたわね。
お手伝いさんは妹が大嫌い。でも私の味方♪
悲劇の大女優として、名作と共に私の名声は永遠に不滅☆テレビで特集されてる!(≧∀≦)
代表作すらない妹はあからさまに嫉妬していて良い気味だわ。
でも、妹を施設に入れるのは…どうなんだろう。誰も私を責めないだろうけど、そこまでして良いのだろうか…。
(そして体力の続く限り、もう無意識に?悲劇のヒロインを演じ続け、妹は暴走、手遅れに。)
こう考えると…
ワガママ幼女のような老女Jane、スポットライトを浴びてチヤホヤされていれば満足なんだから、とても単純です。行動も思考も短絡的。
妹を自分の怪我と共に引きずり落としたお姉ちゃん、聖女の仮面を被った腹黒い女かも。スターの妹を見てきたからこそ、自分も努力を重ねて成功することができたのでしょうけどね。
姉の心理はかなり推測なので(^_^;)、もう少し姉の描写に時間を割いても良かったのかも知れません。字幕の訳は中途半端で、台詞では、もっと直接的に姉が動機と意図的犯行を告白しています。
本作の目玉であるJaneの狂気に満ちた歌と踊りが、ホラーを超えてブラックコメディ。現代目線では、70年くらい前の栄光に浸る、精神年齢6歳の老女です。高齢女性の扱いならお手の物といった感じのEdwinの、呆れた視線もすごく上手い。
あまりの迫力に、ストリートパフォーマンスかサーカスなら、怖いもの見たさで観客を案外呼び込めるのではと思いました。
ちなみに、隣人のリビングにある絵画も結構不気味。
現実に憎み合った女優達の共演(競演?狂演?)だからこそ生まれた作品ですね!!
もう歳だから、と引っ込み過ぎるのも、
その歳で、と批判し過ぎるのも嫌なんですが、
流石に数十年の変化は大きい。
年相応、分相応をわきまえないと…♪(^^)。