「劇的な場面を派手に演出するだけ」ナチュラル Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
劇的な場面を派手に演出するだけ
総合:50点
ストーリー: 45
キャスト: 65
演出: 45
ビジュアル: 65
音楽: 60
野球の話というよりも、野球をする一人の才能に溢れるが運がなかった男の半生を美しく描く話。あまり野球について詳しく描かれるわけではない。正直野球への情熱はそれほど伝わってこないし、野球でなくても何でも良かったんじゃないかと思う。
物語は唐突。いきなり女にわけもなく撃たれたかと思うと、次の場面ではいきなり16年もたっていてその間何をしていたかも知らされない。この間のことを描いてくれないと、16年にわたる彼の苦難やそれすら乗り越えまだ野球を続けようとする彼の執念や思いが伝わってこない。女が彼を撃った事件の謎が後で解明されるのかと思えばそれもない。
せっかく野球をとりあげ試合をやっているのに、その試合経過は殆ど描かれない。野球をはじめとしてスポーツならば試合というもの自体が面白いと思うし、多くのスポーツの映画ではそれを大きく取り上げるものだが、それはこの映画では重要ではないのだ。レッドフォードが華麗に打つ瞬間の場面場面だけを捉えて、とにかくその場面を美しく劇的にしようとしすぎているし、試合の流れではなく実際これがこの映画の一番の見所なのだろう。打ったボールが衝撃で割れたりホームランボール直撃で時計が割れたり、またそんな場面ではやたらと音楽が派手に流れたりと、演出も過剰気味。
だがそれは野球を舞台にしていても、結局は劇的な場面さえ描ければそれでいいと考えているように見える。これを美しい・かっこいいと感じる人にはいいが、わざとらしくて興ざめすると感じる人には駄目。私は後者でした。
大きな不幸を乗り越えてきて人は成長するもの。それを省いていきなり完成されたレッドフォードが遅れてきた新人として登場するのは説得力にやや欠ける。
本作に限らず、レッドフォード作品は正義や愛があればその他のことは二の次という傾向があると思う。レッドフォードはいつも汚れのない優しい正義漢すぎる。