ドゥ・ザ・ライト・シングのレビュー・感想・評価
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黒人差別、恐ろしい。
「店に飾ってある人物に、黒人がいない」という理由だけで、大きな対立を生んでいくドラマに惹き込まれました。
でもそれだけの理由で、争い事に発展していく様子はリアルで、ある意味ホラー映画よりも怖いと言いたくなるほどです。
内容だけ聞くとシリアスな印象なのに、これだけコミカルに描けるのは、ホントにスパイク・リー監督の才能だと思います。
「ほんの些細なことで、大きな争いに発展することもある」という事を学べる、素晴らしい映画でした。
【”Love or Hate"中盤まで、テンポ良きコミカル要素を絡めた展開で人種差別をテーマにしつつ物語は進み、後半一気に衝撃的で恐ろしきシーンで、スパイク・リーのメッセージが炸裂する作品。】
■ニューヨーク・ブルックリン。
さまざまな人種の人々が暮らすその街で黒人の青年・ムーキー(スパイク・リー)も暮らしていた。
ある夏の暑い日、彼が働くピザ屋で友人のバギン・アウトとオーナーのサル(ダニー・アイエロ)がピザ屋に黒人の写真が飾られていないことで揉め始める。
それが後の哀しき事件の引き金となる。
◆感想<Caition! 内容に触れています。>
・前半、ムーキーは黒人初の大リーガーのジャッキー・ロビンソンのユニフォームを着ながら、サルのピザ屋で働いている。
・街中には黒人DJの軽やかなトークが流れ、酒好きの”メイヤー”と呼ばれる老いた黒人がブラブラ街を歩き、サルは、黒人嫌いの長男とムーキーと仲の良い二男とピザ屋を経営している。
ー イタリア系のサルは、ムーキーを雇っており店の常連客もサルの店を愛している。ー
<だが、バカでかいラジカセで、パブリック・エナミーの”ファイト・ザ・パワー”を大音量で流しているラジオ・ラヒームはサルに店で音楽を聴くなと言われ、状況が微妙に変化していく。
そして、乱闘が始まり、白人警官達が現れ、警棒でラジオ・ラヒームを締め上げ殺してしまう・・。
エンドロールで流れる暗殺されたキング牧師とマルコムXが遺した言葉がイロイロと観る側に考えさせる作品である。
今作は、今から30年以上前の映画とは思えない、人種差別を扱った、先見性ある作品でもある。>
偶発的に起こってしまった暴動がドタバタ喜劇のようで、パイ合戦ボルカが頭に浮かんだ
イタリア系アメリカ人を善人と仮定して作った喜劇(コメディ)だと思う。暴力警官も含めて、悪人が登場していないと見受けられる。強いて言うなら、モラトリアムなヒモの様な黒人(スパイク・リー本人)が扇動したことが非難されると思う。(この逆転の発想が見事!)
黒人に対するヘイト行為はこんなので済まないのは監督は百も承知で、今、起こっている白人警官から受ける虐殺行為も、一方的に白人に問題があると思う。
監督の主張は最後のキング牧師とマルコムXの言葉につきると思う。キング牧師の言葉で済むような社会ならば良いが、マルコムXの考えがまだまだ通用してしまうアメリカ社会だと言うことだと思う。この映画が33年も前の映画には見えない。何一つ変わっていないと思う。(キング牧師もマルコムXも忘れてはいけないと思う)
映画の途中にアメリカ黒人社会に影響を与えた黒人ミュージシャンの名前が登場するが、ビリー・ホリデイ、アレサ・フランクリン、マイケル・ジャクソンが登場していなかった。スパイク・リー監督の好みの問題なのだろうか?マイケル・ジャクソンは兎も角、ビリー・ホリデイとアレサ・フランクリンはスパイク・リーにはどう写っているのだろうか?
傑作だと思うが、AmazonPrimeは配信停止。unextに変えるか?!
社会への告発
黒人とプエルトリコ系の移民の多いブルックリン。人種の違うオーナー店が繁盛する中、住民達の貧しい暮らしとそこ此処で聴こえるヒステリックな口論。暑さに象徴される、息の詰まるような毎日。そして起きるべくして起きた異人種間の衝突。その後の警察による明らかに問題な犯人確保。
感情的な衝突、衝撃的な事実を描きながらも、監督の目線は中立に近いのが凄い。だからこそ説得力を持つのだろう。身柄の確保後に殺されてしまったラジオ・ラヒームのセリフとエンドロールに流れるキング牧師、マルコムXの言葉が心に残る。暴力性は常に大きな愛で抑制されなければならないと。
2021年公開のミュージカル映画「インザハイツ」にも同じように暑さと苛つきと氷売りが描かれていたのは、本作品を踏まえて、ということだったんだな…。
根底にある人種差別、貧困問題から…
不平不満が爆発、今回の様な殺人、暴動にまで発展してしまう。小さな火種は沢山転がっている。黒人街で長年ピザ屋を経営するイタリア移民親子。向かいには真面目に働き、スーパーを開いた韓国移民。プエルトリカンもおり、人種のるつぼ。互いに文化も違い、リスペクトが必要だが、ろくな奴がいない。まずムーキーは真面目に働けよと。今回は黒人が吹っ掛けたように見えるが、監督はキング牧師の結びの言葉、暴力は何も生み出さない、連鎖するを一番言いたかっのかな。
BLMのこの時代
20数年ぶりくらいに見直してみると、なんとまあこのBLMが叫ばれているこの時代にマッチしたものかと。
逆に言えばBLMは今に始まったことではなく、とっくの昔から世界のある場所では問題になっていたこと。日本人に生まれて日本でのほほんと育った自分には到底理解ができない、人種の壁。
揉め事を起こした黒人は警官に押さえつけられて殺され、二十年以上も黒人たちにおいしいピザを提供してきたイタリア人が、ふとしたことで黒人たちの感情の爆発の標的となる。
それでも残された人間は黒人も白人も韓国人も、そこで生き続ける。死なない限り、生き続ける。
人間と人間、仲良くできないものだろうか?物事はそう簡単ではない。人権とか平等とか愛とか、口で言うのは簡単だけど、人間の奥底に根付いた偏見、先入観、憎しみ、そんなものを根こそぎ否定することは不可能。絶望的なようであるけども、それでも人は、それを覆すがごとく、信じる。そうするしかない。
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