トリコロール 青の愛のレビュー・感想・評価
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【”過去の愛ある生活からの訣別”青を基調にした映像と、ジュリエット・ピノシュの抑制した演技が印象的な作品。】
ー 夫と娘を同乗していた自動車事故で失ったジュリー(ジュリエット・ピノシュ)は、哀しみを抑えながら、それまで住んでいた屋敷、家財一式を処分する。-
◆感想
・深い哀しみの中、徐々に露わになって来る、ジュリーを愛していたオリヴィエと切りを付けるように一晩だけ共にするジュリーの思い。
・そして、全く知らなかった夫の愛人。彼女は、夫の子供を身籠っていた。
- ジュリーは、その事実を受け入れ、静に身を引いて行く・・。-
<プールのシーンや”青の部屋”の装飾品であった青色のオブジェが印象的な、青を基調にした映像がジュリーの哀しさを暗喩させる、静謐な作品。>
再生するとき
再生するときに捨てなくてはいけないのは、過去の自分なのか?あるいは、過去の繋がりなのか?
協奏曲も夫の愛人の子供も、これからこの世に誕生する。だから、過去の自分とも未来の自分とも繋がり続ける。ジュリーはそんなことを思ったのだろうか。
beauty of camera work
映像美が素晴らしい 映像表現も勉強になる 青い描写が心を捉える
好きな映画となった
高名な作曲家は愛人と子供を作っていいというフランス人の考え方には清々しさを覚えた それも青が意味する自由なのであろう
初キェシロフスキだけど…。
どうして感情や状況の表し方があんなに強烈で斬新で美しいんだろう。映像の可能性というものについて考えさせられる。キェシロフスキは初めて見たけれど、もう好きになった。
ジュリエット・ビノシュの押さえるような演技も素晴らしかった。飴をバリバリ噛むところなんてドキッとする。爆発直前→爆発→直後の感情の表現力は凄まじい。
次は「赤」を見ようかな。
自由を選ぶことの意味
フィルムのしっとりとした質感は、「写真」と呼ぶにふさわしい美しさを醸し出す。特に夜のプールに映し出される水の光沢と闇の美しさ。監督もお気に入りだったのだろう、プールのシークエンスは一度ならず三度も現れる。
そして、主人公が家族を失った悲しみを思い出すときに、タイトル通りブルーに支配される画面も深い色合いだ。カラーフィルムによる映画の到達点だと思いたい。
「青」という色はフランスの3色旗の中の「自由」を象徴する。主人公の女性ジュリーにとって何が自由なのか?裏を返せば、彼女の不自由さとは何か?これがこの映画のテーマとなる。
キェシロフスキは、娘を亡くした悲しみから立ち直れない主人公の姿を、その感情から自由になれないという視点で物語る。
映画は観客にこのジュリーという女性への同情を求めない。むしろ感情移入しやすいのは彼女を取り巻く人々のほうであろう。例えば、アパートの階下に住むストリッパーの女性、事故が起きたときにけん玉をしていた少年、そして彼女に以前から恋をしていたオリヴィエという夫の同僚。
そして、これらの人々は皆、ジュリーの深い悲しみを知ってか知らずか、そんなことはお構いなしに自分の心情を彼女に吐露するのだ。元来、懐の深い思いやりに満ちた女性であるジュリーは、こうした周囲の者に対しても思いやりを持って接する。
周りの人々と共に悩み、考え、心を動かしているうちに、彼女を支配していた悲しみは背景へと遠のく。最愛の家族を失った後の世界にも、彼女を求め、彼女に救われる者が何人もいる。
彼女は新たな厄介事を背負い込んだだけなのかも知れない。しかし、今までの自分を縛り付けていたことからの自由は、他のことに関わる面倒に他ならない。
新たな恋人オリビエや夫の子を宿した愛人との関わりを選んだジュリーは、娘を失った悲しみからの自由を得る。人生は何から自由になり、何に対して不自由になるのかを選択することなのかも知れない。
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