トッツィーのレビュー・感想・評価
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演劇界に多くいる日陰の貧乏俳優たち
総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 65
音楽: 75
異性に変装する映画というと、本人はなりきったつもりでも視聴者から見ると一目でばればれのきつい外見というものが多い。その中で本作のダスティン・ホフマンは健闘したほうだろう、遠目には女性に見える。それでも喋るとどこにでもいるおかまのようになるのは致し方ないか。
かなり頑張っているとはいえあれで他人を騙しきるのはちょっとしんどいとも思うのだが、登場人物の演技力や物語の進行によって救われる。あまり女装がいいかどうかを考えなければそれなりに楽しめる。
オーディションに落ちまくる貧乏俳優たちの苦しい生活や、審査員が落第する候補者に言ういいかげんな審査基準などはいかにもありそう。演劇の世界で成功するための涙ぐましい努力や恋の行方を滑稽に描いているし、男の女性に対する態度・行動への皮肉も良いのではないか。
バランスの取れたセンス溢れる作品
素直に笑えるエンターテイメント性を十二分に持ちながら、男女のジェンダーについての問題意識を兼ね備えた秀作。
テンポのよいストーリーの中で展開されるウェットに富んだセリフの数々からシドニー・ポラックのセンスの良さが伺える。
メッセージ性の強いセリフさえもストーリーの一部として何の違和感も無く組み込まれる。
作品の主題やメッセージをどれだけ違和感無く物語に組み込めるか。
これこそ映画が能動的なメッセージ性を持つかどうか、奥深さが出来るかどうかの分かれ道であると思う。
「男と女」に切り込む
別にフェミニズム映画というわけではない。かといって、男至上主義の映画に落ち着いているわけでもない。
この年、ダスティン・ホフマンはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのだがその時のコメントが「女になったことで女の気持ちが分かった」である。この言葉に「トッツィー」が伝えたいメッセージがこもっている。人間はまず初めに「男」と「女」の二種類がいる。これは決して差別ではない。大きくなればなるほどこの差は歴然としてくる。これは生物学上しょうがないことである。だが、それとは関係なく人は男女をそれぞれステレオタイプな型にはめがちである。要するに男と女には別々の役割があるという考えだ。
マイケル・ドーシーはドロシー・マイケルズになることでその問題に直面する。しかし彼は中身は男である。オーディションの役柄の関係上、強い女を演じることになるドロシーは私生活でも男に屈しない女を「演じる」のだ。彼(彼女?)の活躍により、私生活の上でも周りの人々はどんどん変わっていく。もちろん問題はいろいろ起きる(というより問題がいろいろ起きていくのがこの映画の面白いところなのだが)。それでもドロシーという「自分を欺かない女性」を演じ続けるマイケルには滑稽さと同時に哀愁もある。
こんなに笑ったのも久しぶりだが、こんなにしっかりとしたメッセージを持った作品もそうそう無い。人間は男と女の二分化ではないのだ。一人一人がそれぞれ存在している。そんな普段忘れがちなことを思い出させてくれる文句なしに素晴らしい映画だ。
(11年4月22日)
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