「私たちは"時計じかけのオレンジ"」時計じかけのオレンジ ハットコックさんの映画レビュー(感想・評価)
私たちは"時計じかけのオレンジ"
『時計じかけのオレンジ』。このタイトルの意味は……
キューブリック監督に試されている気がしました。人間というものがどれだけ恐ろしいかを、今では考えられないほどストレートに訴えています。
別にホラーというわけではありません。あくまでもブラックコメディです。何が怖いかというと、"観ている自分"なのです。主人公たちが次々に暴力を振るうシーンを観て、それが恐ろしく見えるか、何も感じないか、または楽しく見えるか。私は何も感じませんでした。どちらかと言えば、とても爽快な気分になったのです。『雨に唄えば』を歌いながら老人作家を殴り、その妻を襲う彼らを普通に観ている自分がいるのです。
そう、今の人間は本来もつ邪悪な野心をただ隠しているだけなのです。なぜなら、私たちは"法の下"で生きているからです。その"法"がなくなったら、人間は本性を露わにすると思いませんか?
その象徴が主人公の"アレックス"であって、私たちは彼を通してそれを痛感しなければならなくなります。
劇中、彼は強制的に善にされます。しかしこれは本来の彼ではありません。見た目は彼(オレンジ)でも、中身は別物(時計じかけ)なのです。これが、タイトルの意味だと思います。本質は変えられないのです。
つまり、今の私たちは"時計じかけのオレンジ"そのものなのです。
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