「完全なる暴力肯定の世界観」時計じかけのオレンジ Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
完全なる暴力肯定の世界観
感想
この作品でます注目するところは、劇中の社会設定と美術装飾全般である。
写真家でもある監督のきびしい設定要求に制作側が見事に応えている感がひしひしと感じられ、当時最先端のポップカルチャーと前衛芸術をエスプリの効いたセンスでまとめ上げた、決して明るい未来とは言えない殺伐とした世界を創造していて、現実的な社会科学の水準は映画制作当時よりも低く、同時に経済状況も悪化している貧富の差が激しい近未来の閉塞観に満ち溢れた世界を見事に現出させている。
21世紀の今現在、鑑賞しても、シチュエーション的、モード的、また、映像的なものを含め、古さを全く感じさせない。映画自体の完成度合いが高く、特筆に値する。
次は原作と脚本である。原作者が危険な本と喧伝した理由が、主人公達不良グループの人間性が極端に暴力に偏っている事。また、そのような人間に対して反社会性を矯正する治療と称して、人間性を根本から否定し、破壊する心理的拷問と、極致的な名を変えた暴力の応酬を行う、人間の精神破壊がテーマとなっている。
キューブリックは原作の要点を押さえ、映画脚本をよりデフォルメしているため、さらに強烈な印象を作り出す事に成功している。不良グループ内だけで共感されるスラングを会話に多用して不気味な存在感と雰囲気を増大させている。英語の意味と発音に韻をふんだスラングなので英語に精通していないと深く本意を理解できない。外国人にしてみると、その訳の解らなさがまた恐ろしく感じる。
主演のマルコムマクダウェルは当時無名に近い舞台出身の新進気鋭の俳優であった。そのエキセントリック且つ、二重人格者的演技は全世界に衝撃を与えた。アレックスはこの俳優でなければいけない。というより、この俳優しかいない。
真面目に何でも真にうけてしまう人は、この映画を観ない方がいい。真に受けるとあまりにも危険で恐ろしい。
映画を観終わった後、なんとも言えない後味の悪い気分になるが、時間が経つと再び怖いもの観たさで観たくなる中毒性の高い映画である。
⭐️4.5
今晩は
たくさんの共感ありがとうございます。
スタンリー・キューブリック監督作は、半分くらい観ています。
この映画は冒頭のショッキングなシーンが強烈で、音楽もこけ脅し的です。
好感は持てないけれど忘れられない呪縛にかかりました。
マルコム・マクダウエルの悪魔的ビジュアル。
メイクと黒い帽子、白いシャツに黒ズボン。ズボンの裾は窄まっていたような
そんな印象でした。
「非情の罠」はアートとサスペンス。
「現金に体を張れ」は邦題が映画の印象を決めた感がありますね。
ラストシーンのお金が舞い上がるシーン。
様々に真似されたそうですね。
「ロリータ」の少女は一生涯、ロリータ役のイメージを払拭できなかったり、
罪なことですね。
「シャイニング」は4回観てますが、決して見飽きない映画です。
「アイズワイドシャット」は、観るには観たのですが、都会的だな・・・
そして美しいニコールとトム・クルーズのプロモーションビデオみたいに
思えました。「2001年宇宙の旅」は何回見ても寝てしまうので全部見た事がありません。
「博士の異常な愛情・・・」
ピーター・セラーズしか覚えていませんが、どの映画も独創性に
驚きました。
自分のことばかり書いて申し訳ありません。
偉大な監督なのに親しみやすい面を持ち合わせているのが、
難解なのに人気のある秘密・・・な気がします。
Moiさんとは8月にお知り合いになって、まだ1ヶ月なのですね。
時の経つのは早く、古くからのお知り合いのような気がしています。
読んで頂けたならとても光栄です。
ありがとうございます。
Moiさんのレビュー読んですごい!と思いました。この映画は何度トライしても途中で怖い、気持ち悪いで挫折して最後までまだ一度も見てません。確かに自分はなんでも真に受ける幼いタイプかも知れません