トゥルー・クライムのレビュー・感想・評価
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冗長かつ散漫
イーストウッド監督にしては冗長かつ散漫な映画。
本筋の事件に関しては、捜査が進展しても、事件現場には目撃者2人の他に少年がいた程度の情報しか出てこないので、観ていてそもそも面白くない。そして真犯人の特定に関しては、真犯人の母親がしていたペンダントと被害者のそれとが一致しているという(しかも見ただけ)弱すぎる理由で推定されている。それで直前に迫っていた死刑執行をストップさせられる展開なんてあり得るのか。
さらに、本筋の事件に絡んでくる以外の登場人物が多過ぎて、ストーリーが散漫に感じた。主人公の家族や浮気相手、中途半端に出てくる牧師などはそもそも登場させる意味があったのか疑問がある。主人公の浮気性の設定や、今回の事件を冒頭で引き継ぐ展開にも必要性が感じられない。
ストーリーの焦点を事件に絞り、主人公はいっそのこと独身ということにして、事件そのものの題材もより複雑なものにした方が面白くなったのではないだろうか。
黒人に寄添った視点から冤罪を描く
イーストウッドが演じるスティーブは、かつてはニューヨークタイムズの敏腕記者だが、飲酒や女性問題で閑職に追いやられ、間違った記事を掲載したりして、妻との関係が破綻しかけ、今でも女性とみれば口説きまくる破滅型のジャーナリスト。飲酒で鼻は利かなくなっているが、真実を見
分ける鼻には自信を持っている。同僚の若い女性記者が自動車事故で亡くなり、死刑囚執行の前に記事を書く仕事を受け継いで、囚人の無罪を嗅ぎ付け、証拠を求めて奔走する物語。
このスティーブ、酒癖、女癖が悪く、家族を顧みずに仕事に没頭し、娘からは好かれているが妻には完全に愛想をつかされている設定。いつもながら、作品がイーストウッド自身が内包する問題を反映していると見えてしまい、自虐的、自嘲的にすら見える。良いも悪いも事実をありのままに表現しようとする意図からなのかと思っている。娘の面倒を見てあげながら、仕事の電話をしまくるシーンなんかは、本当にありそうで笑ってしまった。映画を撮り始めれば、ずっと留守がちだろうから、娘たちとの関係を良好にするために映画出演させたのではと思ってしまう。実の娘の フランセスカ・フィッシャー=イーストウッドがとても可愛い。
冤罪をなすりつけられている黒人親子は、信仰してから日が浅いが、神を信じ、本当にお互いの思いが繋がっている3人親子。一方、新聞社の社長、社員、刑務所の所員は、お互いが自分の利益や立場に固執するばかりだったり、皮肉やユーモアが中心の関係。その辺りの対比が面白かった。白人は白人同士がお互いに良いように動いているだけで、弱い立場の人たちのために本当に動いているわけではないというメッセージが込められていた。2人の証人は、どちらも白人であり、若い黒人が血まみれで立っていたので、犯人だと思ったのだろう類推する部分や、黒人が殺されても新聞記者取材しにこないというセリフから、意図が垣間見えた。
トゥルー・クライムという題にしたのは、本当の罪は何か、罪のない者、弱い立場の人達に罪を擦り付けていることにあるという理由だろうか。
以前から正義を振りかざした悪人や、反戦、弱い立場の人に立つ視点の映画か多かったわけだが、このころから、白人たちが利益のために起こした戦争だったり、自分たちの利益を大きくするために作り上げた社会に対する鋭い批判を秘めたメッセージ性がはっきりした作品が多くなってくるように思える。
ラストはイーストウッド
同じ冤罪ものでもリチャードジュエルが実話ベースで硬派なのに対して、こちらは自らが主演を務め、エンタメ要素がある。いつもなら硬派なイーストウッドがこちらは女好きで妻にも愛想尽かされ、家庭は崩壊。しかし、記者としてのが直感、嗅覚に優れ切れ者。何たって6年間警察が掘り出せなかった事実をたった一日弱で掘り当て、死刑執行がその日に迫る冤罪犯を救い出す。あり得ないのだがハラハラする。冤罪犯が妻や娘と最後の別れをするシーンは胸が熱くなった。同僚の妻を寝取るという下劣な男で、妻を泣かせ結局離婚するのは自業自得だが、ラストは1人孤独なクリスマスを送るイーストウッドはやっぱり渋い。エンディングテーマも良かった。
直球勝負で観たかった
男から見ても節操が無さすぎる、主人公をまったくのダメ男に描く必要があったのか?折角のクリント・イーストウッドなのだから夢を壊さないでほしいとぶーたれながら鑑賞。
原作者のアンドリュー・クラバンは主人公が普通の正義感に燃える事件記者では嘘っぽいと思って汚したのだろうか、それとも6年審理された事件を一日でひっくり返すという嘘っぽさを薄めたかったのだろうか、あるいは主人公の家族、死刑囚の家族を対比させて描くことで誠実さの重みを問いたかったのだろうか・・。
個人的には死んだ同僚の弔い合戦で全社挙げて冤罪究明に取り組む美談仕立ての方が好みだが、それだと例のNYタイムズやワシントンポストのスクープ映画になってしまうので嫌ったのだろう、カリフォルニアの地方紙らしいと言っては語弊があるが変化球で挑みたっかたのだろう。
感心したのは脇役、チョイ役が光っていること、頭ごなしに押さえつけずユーモアもあるボス、気骨のある刑務所長、気遣ってくれるバーのマスター、悪い方では陰険な上司、いかにもの会計士、良心の無い牧師など、物乞いは頂けないが綺麗な嘘より下品な本音を語らせることで主人公の引き立て役だったのかもしれない。
クライマックスのカーチェイス、冒頭の死のカーブを旨くなぞってハラハラドキドキ、事件ものとしては雑味が多すぎると感じるがヒューマン・ドラマ路線も狙ったのでしょう。
20年たったら、運び屋
だって、ダーティハリーだし。
だって、高身長で、ハンサムで、魅力的で、Jazzはプロ並み、甘すぎず、媚びず。
なんせ、「硫黄島からの手紙」なんて、本当にいい映画を撮ってくれたし。
「こんな事実を世に伝えて残さなきゃ」って気概があるからこそ、数々のいい映画を作ってくれて。人間として、尊敬してしまいます。
しかも、モテモテ。見るからに女たらし、ではないのに、さらっとあんなに誘われたら、断れないじゃないの。とにかく、実際に、どんだけ~~~ってくらいもててるし。結婚離婚を繰り返してるし。
それに、子役の女の子が、実際の娘って、いくつでできた子なんだ、と、あきれちゃう。けど、すごいよね~
という彼だからこそ、この題材に、いちいちしゃれた会話と彼自身の家族とのあれこれを絡ませて、単なる事件解決だけでない作品に仕上がっておりました。
それにしても、20年たっても、相変わらず、なのね~ 「運び屋」(2019年)ときっちり重なってあきれてしまいます。家族を大事に、って、アメリカ人はすごいなぁ~
約束守るために、ドタバタしてるのも、おんなじ~ ww
ひとつ、よくわからなかったのが、牧師がビーチャムに話すうちに、彼がすごく怒りだした、そのきっかけの言葉が、字幕だとちゃんとわからなかったんだけど、なんか、特殊な意味合いがある言葉だったのかしら。
ラスト。命の恩人に、あの挨拶? って思うけど、まぁそこは、映画としてのお約束みたいなことで、よしとしましょう。
それにしても、これだけの事情があったと、後でわかったら、奥さん、理解してあげないのかしら、と、日本人的には思うよね~
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