トイズ

劇場公開日:1993年3月27日

解説・あらすじ

「グッドモーニング,ベトナム」の名コンビ、バリー・レビンソン監督と名優ロビン・ウィリアムズが再びタッグを組んで贈る、戦争批判を盛り込んだファンタジック・コメディ。巨大オモチャ会社を経営する兄が急死したことにより、新社長に就任した軍国主義者の将軍。オモチャを兵器化しようと企む将軍の野望を阻止するべく、前社長の息子で平和主義者のレスリーが立ち上がる。こうしてオモチャ対オモチャの大戦争が始まった……。

1992年製作/121分/アメリカ
原題または英題:Toys
配給:20世紀フォックス映画
劇場公開日:1993年3月27日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第65回 アカデミー賞(1993年)

ノミネート

衣装デザイン賞 アルバート・ウォルスキー
美術賞  
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映画レビュー

4.0 歴史あるいは現実から遠く離れて

2026年2月2日
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東西冷戦の終結直後、つまり90年代のアメリカほど自由民主主義を心の底から信じることのできた国はないんじゃないだろうか。古くはヘーゲルの「世界精神」に始まり、マルクス主義へと継承されたアウフヘーベン的な世界認識は、第二次世界大戦を経て西側=自由民主主義とそれを下支えする資本主義の勝利によって幕を閉じた。フランシス・フクヤマはこれにて人類の発展は終局を迎えたのだと楽天的に宣言した。

本作はそんな幸福な時代のアメリカ映画だ。父が遺した玩具会社を守ろうとする息子レスリーと、玩具を戦争の道具に転化しようと企む新経営者リーランドの二項対立には、明らかに東西冷戦(レスリー=アメリカ、リーランド=ソ連)が寓意されている。

しかし玩具会社という舞台装置も手伝ってか、寓話はあくまで寓話の域を出ない。端的に言えばリーランドの暴走をレスリーが食い止める、それだけの映画だ。リーランド腹心の部下であり息子でもあるパトリック(おそらくpatriot=愛国者のもじり)が些細な内紛からレスリー側に寝返るというのも、ソ連という物語に含まれる「スパイ」のイメージをそのまま転用したものに過ぎない。

逆に言えばこれほどまで愚直に反戦を口に出すことが許されていた時代なのだなとも思う。常に正義と悪が曖昧に混じり合う昨今のアメリカの戦争映画からは想像もつかない。

本作監督のバリー・レヴィンソンは冷戦末期に『グッドモーニング、ベトナム!』(1987)というベトナム戦争を題材とした戦争映画を撮っている。

ベトナムに従軍ラジオDJとして招聘されたロビン・ウィリアムズ(またかよ!)が現地でベトナム人の兄弟と友情を深めていくものの、最終的には決して埋め難い断絶があることを悟るという物語だ。そこには正義と悪という二元論では測り難い複雑な含みがあった。ごくシンプルな二元論で話が進んでいく本作とは大違いだ。1987年において、歴史はまだ「完成」を見ていなかったのだ。

しかしアメリカの平和も長くは続かなかった。2001年9月11日、イスラム過激派組織アルカイダによるテロ事件が起きる。ブッシュ政権は対テロ戦争という名目で21世紀のベトナム戦争とも非難されたアフガニスタン侵攻へと舵を切ることになる。アメリカが20世紀を通じて積み上げてきた西側=自由民主主義=正義という図式に決定的な綻びが生じた瞬間だった。

奇しくも、本作のクライマックスは"ニューヨーク"と呼ばれるジオラマ部屋を舞台にしている。リーランドが送り込んだラジコンの戦闘機が"ニューヨーク"の街に聳える高層ビルを次々と破壊していく。それはまるで9年後に本物のニューヨークを恐怖のどん底に叩き落とすことになるテロリズムを予言しているかのようにも思える。今になってみれば映画全体の幸福なムードとの落差が不気味な一作だ。

思えば玩具会社の工場というトポスは、否応なくチャールズ・チャップリン『モダン・タイムズ』を惹起する。そこでは工場労働=資本主義がいかに人間疎外的なものであるかが風刺されていた。

本作は自由民主主義を謳い上げているが、その基底には資本主義があるという自明の理に無頓着であるように思える。敢えて露悪的な言い方をすれば、レスリーとリーランドが経営方針をめぐって争うことができるのは、彼らの生活が無数の工場労働者によって支えられているからに他ならない、ということだ。しかし本作の労働者たちは、それに反旗を翻すどころかニコニコと笑いながら工場労働に勤しんでいる。90年代とは本当に平和な時代だったんだろうと思う。

今見ると浮世離れも甚だしい本作だが、本作の「浮いている」印象の淵源はもう一つある。それはビジュアルだ。

liminal spaceの中にdreamcoreという系譜が存在する。これは文字通り夢の中のようなビジュアルイメージに関わる美学で、卑近な例で言えばWindows XPの初期画面(チャールズ・オレア「Bliss」)が挙げられる。

玩具工場の所在地である丘陵地の大草原は、まさにこの「Bliss」と酷似している。他にも、中盤のMTV風のミュージックビデオシーンでは、ルネ・マグリット『大家族』『ゴルコンダ』『偽りの鏡』のオマージュカットが頻繁に挿入される。マグリットはdreamcoreの始祖ともいうべき画家だ。

随所に見られるこうしたdreamcore的なビジュアルによって本作は現実位相から遊離している。

歴史からも現実からも遠く隔たった本作は、そういう意味においてliminal space映画の金字塔と呼んで差し支えないだろう。

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因果

3.0 まさに主役はおもちゃ

2019年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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odeoonza