劇場公開日 1975年8月2日

「厳しく孤独な生活」デルス・ウザーラ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0厳しく孤独な生活

2013年3月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

難しい

総合:75点
ストーリー: 75
キャスト: 75
演出: 80
ビジュアル: 75
音楽: 60

 極北の大地で長く猟師として一人で暮らし、それゆえに動物的なほどに自然に重農し素晴らしい能力と純粋な心を持つデルス。彼の能力に驚き、また彼によって何度も助けられたアルセーニエフ隊長が彼に信頼と友情を感じるのは当然であろう。二人の生活する環境は違いすぎるが、デルスは今更生活を変えられるわけがないし、彼が町の生活に馴染めないのは仕方ない。どうしようもない生活観の違いがあったが、それでも彼らの友情と一緒に過ごした経験は一生に一度の本物の邂逅。この貴重な出会いと体験が特別な友情物語になるのはごく自然のこと。

 デルスにとって町の生活は窮屈すぎたようだが、やはり森の生活は厳しい。若いうちならばとにかく、家族もなく村の仲間もなく一人森の中を放浪する生活などいつまでも出来るものではないだろう。人はいつか老いるし、そうなれば当たり前のことにも不安と恐怖を抱き、普通のことをすることがより一層に難しくなる。家族を失った彼の過去が定住を許さずいつまでも一人で放浪をする生活を運命づけたが、彼の過酷な運命はどちらにしろ幸せに死んでいく結末を許しはしないだろう。
 それはまるで年老いて獲物もとれず敵から身を守ることも出来なくなった野生の虎のようである。天津から来た中国の老人の話などは聞いていて辛い。こんな誰とも会うこともない孤独な生活は耐え難い。そんなことはこの映画の主題ではないのだろうし、実際にこのような生活をしていたデルスという人物もいたのだろうが、彼の能力を尊敬しつつも文明と離れて野生に溶け込んだ生活の孤独な辛さも身に染みる。

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Cape God