「人生とは、生きるとは・・・」デルス・ウザーラ garuさんの映画レビュー(感想・評価)
人生とは、生きるとは・・・
黒沢作品の中でも、特に好きな一本だ。
大自然の中で生まれ育ち、狩猟で生活をしているデルスウザーラ。 一方、近代的な生活圏に暮らす極地探検隊の隊長。 自然に対する捉え方が異なるこの二人が、自然の中で出会い友情を育んでいく。
その絆を深めるきっかけとなる件がある。 二人が大氷原の真っただ中に取り残され、絶体絶命の状況に陥る。 しかし、デルスが持つ生活の知恵によって、最悪の事態を見事に回避する。 この出来事によって、隊長のデルスに対する信頼が深まり、ここから、年齢も生き方も違う二人の友情物語が展開されていく。 しかし、 友情が深くなればなるほど、生活環境や生き方の違いがお互いを苦しめていくことになる。
デルスの死によってもたらされる隊長の悲しみは、もはや観客に委ねられていたと思う。 身近な人が亡くなった時の、罪悪感と喪失感が入り混じった、あの身の置き所の無い悲しみを、我々も映画の中で経験することになるのだ。
自然から距離をとり、安全・快適な生活環境に生きることが、果たして良いことなのかー。 豊かな現在の世界を創り上げた人間の知恵を否定するつもりはない。 ただ、 二人の物語を観ていると、 自然とは、人生とは、生きるとは・・・とどうしても考えさせられてしまう。
本来、我々の心とは、自然そのものなのではないのだろうか。 自然と距離を取って生きるということは、心からも離れてしまうことになるのではないだろうか。 鑑賞後、深い余韻に包まれる一本だった。
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