「能力者に課せられた切ないストーリー。」デッドゾーン ratienさんの映画レビュー(感想・評価)
能力者に課せられた切ないストーリー。
本作品は、クローネンバーグ作品にはまるきっかけとなった大好きな一本です。
交通事故に遭い、深い昏睡状態から目覚めた時、まわりの状態が一変していた。五年の歳月が流れ、愛する女性は他の人と結婚し既に幸せな家庭を築いていた。絶望の中、浦島太郎のように困惑していると自分に不思議な力が備わっている事に気付く。触れたものの過去や未来の映像がヴィジョンとして見え、自分が行動することによって未来を変えることができるのだった。
原作者のスティーブン・キングもこの映画作品には満足したらしいです。
2時間弱という枠の中に、話を収めるのだから大変な事だと思いますが、そこはクローネンバーグ監督、見事に切ないラブストーリーとして自分の胸には飛び込んできました。
愛する人は自分とは違う場所で幸せを見つけた。特殊な能力に目覚めた主人公は人々を救う事に生き甲斐を求めようとする。しかし、そこに本当の幸せがあるのだろうか?苦悩の中で、この世界を破滅させようとする人間を見つけた。
愛する人を守るため、決死の行動に出て、目的を達成した事に満足して死んでいく彼の中に、幸せな彼女を見ないで済む別世界へ旅立てる安らぎを感じたのは自分だけでしょうか?
クローネンバーグ作品には、「フライ』のようなホラーにしても、『クラッシュ』のようなちょっと変な映画、そして本作のようなSF要素を含んだ作品にしてもその根底に流れている男女の恋愛の切なさを感じます。
奇抜な映像やバイオレンス描写が話題になっている監督ですが、それよりも自分には心に訴えかける強い何かを感じさせてくれる作品群だと思っています。
「デッドゾーン」はテレビシリーズ化され、自分も第5シーズンくらいまで見た覚えがあります。
こちらでは、恋人の子供が実は自分の子で、旦那さんの警察官と共に、事件、事故に関わっていくものでした。より人間関係も複雑になっていて面白かったです。