「最高の映画、最高のトラウマ…再び」ディア・ハンター ひろちゃん千葉さんの映画レビュー(感想・評価)
最高の映画、最高のトラウマ…再び
4Kリバイバル放映を見ました。
是非映画館で見たくて。ビデオで見ると早回ししたくなるので…
この映画は知らなかった戦争の狂気を教えてくれる。
出兵前とは何もかも人生すら大きく変わってしまった事を教えてくれる。
まずこの映画を初めて見たのはTV放送。もう30年は昔の話。
テーマ曲のカヴァティーナの悲しくも優しげな旋律が好きでした。映画より音楽からディアハンターを知りました。
TBSラジオ大沢悠里のゆうゆうワイドの女のリポートコーナーのBGMとして使われていて素敵な曲だと強く意識しました。
そして何の予備知識も何も無くいきなり映画を見ました…虎と馬が駆けっこしてました…orz
最高に凄い映画なのに最高のトラウマを植え付けられた。
なので今ここで見直さないと行けない思いに駆られ放映を待っていました。トラウマを克服する為では無くもう一回植え付ける為に。
改めて見直して色々な事が分かりました。
結婚式の教会のネギ坊主を見てロシア正教、
披露宴兼出兵への壮行会でロシア民謡やコサックダンス、製鉄所のあるこの街はロシア移民が多い土地なのだと。
そして出兵前のランチキパーティや結婚式、
披露宴のどんちゃん騒ぎなどすっかり忘れていました。それは今回見ても記憶から消えつつあります。それだけ戦争での体験内容がトラウマになりました。そんな事もあったっけな?位です。
前半あんなに時間を掛けて友人達の楽しい遊びやシカ狩り結婚式などの楽しい思い出が最早思い出せない位に遠い過去の物となってしまいます。
出兵直前の時はシカを仕留めましたが戻ってからのシカ狩りではあえて外して見逃す。これでいいんだよな、の意味が重くて…このシーンは昔から覚えています。
沈着冷静なマイクはベトナム戦争でも友人達を助け武勲も上げますが心に何とも言えない傷を負います。それでもなんとか心と身体を取り返します。そして親友ニックの恋人に心を寄せている。ニックは心を病んだまま恋人への思いと友人スティーブンの婚約者と寝て彼女を妊娠させてしまった負目から帰国を拒みサイゴンで自ら狂気に走って賭けロシアンルーレットで儲けた金を戦争で四肢を失ったスティーブンに送金しつづけた。
出兵前に生きて故郷に帰りたい、何があっても連れ帰ってくれと言うニックの思いを遂げようと再びサイゴンに探しに行くマイク。そこで見つけたニックは薬にも手を出して完全におかしくなっており自分の事も友人の事も故郷の事もほぼ忘れてしまっていた。そしてマイクが止めるのも聞かずロシアンルーレットで…
最後ニックの葬式の後いつもの飲み屋で友人が集まって朝食。彼の冥福を祈りながら終わる。
そしてカヴァティーナなが静かに流れて…
ここで涙腺が決壊した…
素晴らしい映画、素晴らしい曲、素晴らしいトラウマを残して終わった。
これが戦争の狂気だろう。いや戦争の日常かも知れない。しかも正義の無い戦争だった。
何が正義なのかは難しいが。
ベトナム戦争時代はまだ幼子だった。戦争をやっている事しか分からなかった。アメリカ人でも無かった自分には何のことか分からなかった。
勝ったのかも負けたのかも。