「【”人生がこうも変わるとは・・”ヴェトナム戦争に人生を翻弄された若者たちの姿を、狂気性横溢するシーンを絡ませながら、哀調溢れたトーンで描いた作品。生死を賭けた友情が心に沁みる作品でもある。】」ディア・ハンター NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”人生がこうも変わるとは・・”ヴェトナム戦争に人生を翻弄された若者たちの姿を、狂気性横溢するシーンを絡ませながら、哀調溢れたトーンで描いた作品。生死を賭けた友情が心に沁みる作品でもある。】
ー アメリカの田舎町の製鉄所で働く、マイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーヴン(ジョン・サヴェージ)、スタン(ジョン・カザール)らは、平日は溶鉱炉の熱も厳しい職場で働くが、休日は皆で”鹿狩り”に山岳地帯に足を運ぶ、”仲間”である。ー
◆序盤
ー スティーヴンとアンジェラの結婚式が”君の瞳に恋している”が華やかに流れる中、延々と続く。 お祝いする、マイケルを始めとしたスティーヴンの友人達。そこには、ニックの美しい恋人リンダ(メリル・ストリープ)もいる。ー
◇初見時は、この結婚式のシーンが、長く感じた。(というか、殆ど覚えていない)
ここまで、長くなくても良いんじゃない?とさえ思った。
が、2度、3度と観るうちに、マイケル・チミノ監督が、このシーンで様々な事を暗示していた 事が分かる。
・ヴェトナム出征を控えた、マイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーヴン(ジョン・サヴェージ)は、ヴェトナム戦争の悲惨さも知らずに、酒に酔いしれている。
だが、カウンターでは、グリーン・ベレーの男が独り酒を呑んでいる。挨拶するも、帰ってきた言葉は”糞くらえ!”である。
・スティーヴンとアンジェラのワイングラスに、赤ワインが注がれるが、酔ったスティーヴンは、数滴、真っ白なスーツにこぼしてしまう。真っ白なスーツに赤いワインが沁みの様についてしまう・・。
・マイケルは、酔った勢いで、ニックの美しい恋人リンダを誘う・・、が・・。
・一方、ニックはマイケルに”何かあったら、俺を必ずこの地に戻してくれ・・”と真面目な顔で頼む。
ー この数シーンだけでも、この後のヴェトナムでの、彼らの運命が暗喩されている事が分かる。ー
◇翌日、マイケル達は、鹿狩りに出掛け、マイケルは見事な大鹿を仕留める。
◆中盤
ー いきなりの、ヴェトナム戦争真っ只中から物語は始まる。
ヴェトナム農民の家は焼かれ、塹壕は焼かれ・・。
そして、マイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーヴン(ジョン・サヴェージ)はベトコンの捕虜となり、ロシアンルーレットを強要されている。ー
◇ディア・ハンターと言えば”ロシアンルーレット”と言うくらいの、緊張感と狂気が尋常でないシーン。
六発の弾倉に一発だけ弾丸を入れ、腕で弾倉を回し銃を卓上で片手で廻すベトコンの兵。捕らわれた三人は、”ロシアンルーレットをさせられる。”ベトコン達は、”どちらが死ぬか”に賭けている。
・このシーンでの、ロバート・デ・ニーロ演じるマイケルの尋常でない精神力と判断力。水牢に入れられたスティーヴンの疲弊した状態を見て、”弾倉に三発入れろ!”とベトコンに言い、銃口を頭に向け引き金を引く。
ニックは、引き金を引くが銃は頭をそれ、マイケルは三発の弾丸で、ベトコンを殺し、ニックとスティーヴンを助け、流木に掴まって川を下っていく・・、が離れ離れに・・。
ー ニックが、余りに過酷な経験をした事で逃亡後、神経を遣られている事が分かる、ニックのロシアンルーレット賭博のシーン。ー
◆後半
ー 二年後、マイケルのみ、街に戻り、英雄視されるが、浮かない顔。
リンダ(メリル・ストリープ)とも再会し、従軍しなかった、スタン(ジョン・カザール)らと、久しぶりに鹿狩りに。ー
◇マイケルは、大鹿を仕留められる距離まで近づくが、”敢えて”的を外し、大空に向かって大声で”OK?!(字幕では、”これでいいか!”)と叫ぶ。
ここは、大変、重要なシーンである。
マイケルは、”敢えて”大鹿を仕留めなかった事で、未だ帰還していない、スティーヴン(ジョン・サヴェージ)とニック(クリストファー・ウォーケン)を”ロシア正教の主”に、故郷に彼らを返してくれ!と言っていると、私は解釈した。
・そして、マイケルは、両足と左足を失いながらも、車椅子で生きていたスティーヴンと、再会し、喜び合う。 ーあんなに、幸せそうだった、アンジェラは、ショックの余り、会いに来ない・・。ー
そこで、スティーヴンがマイケルに言った”毎月、サイゴンから金が、送られてくるんだ・・。”
”ニックだ・・”
・再び、混乱を極めるサイゴンに飛ぶマイケル。且つての、賭博屋に金を渡し、漸く会えたニック。
だが、精神に異常を来している且つてのベトコンが撒いていた赤い鉢巻きを頭に巻いたニックは、マイケルが分からない・・。
マイケルは、大金を積み、ニックの記憶を取り戻すために、命を懸けたロシアンルーレット
卓に付く・・。”愛してる”とニックに告げ、引き金を引くマイケル。
そして、ニックは”何かを思い出したかのように””一発だ・・”と口にし・・。
ー 二度目の鑑賞時から、このシーンは、涙腺が・・。ー
<ラスト、ニックの棺が、ロシア正教会から運び出され、ニックの友人たちが再び集まり、(そこには、スティーヴンとアンジェラもいる・・)、皆で”God Bless America”を歌いながら、”ニックに・・”と声を揃え、グラスを上げるシーンで、画面は静止画に。
見事な物語構成と、ラストシーンである。
哀感溢れるメインテーマも、素晴らしき作品である。>
<大昔、TV吹き替え版で鑑賞 あの恐ろしきベトコンに強要されたロシアンルーレットのシーンのみ記憶にあり>
<2019年3月 4Kデジタル修復版 伏見ミリオン座で鑑賞 鑑賞記録なし
フライヤーにコメントのみ、殴り書き>
<2021年6月15日 別媒体にて再度鑑賞>
コメントありがとうございます。気持ち的にはまだまだ若いつもりなんですが、「悪の華」なんかを見るとかなり違和感を感じ始めました。ただ周りを見ると、結構おじさんおばさんもいっぱい観に来てました^_^
タイトルの鹿狩りの意味についての見解、ありがとうございました。なるほどと思いました。
私はロードショー公開時に東京の劇場で見ました( テアトル東京だったかな?) 。大画面で見るロシアンルーレットのシーンは自分もその場にいるような錯覚に陥り、彼が頭を撃った時は相当なショックでした。
NOBUさんへ
鹿狩り・ロシアンルーレット・戦争を「命を奪って終わるゲーム」として描き、冒頭部で鹿を「撃たなかった」=「命を奪わずゲームから降りた」マイケルを「美しい」と言う。本当に硬派な映画ですよねぇ。最近、無いですよね、こう言うのw
NOBUさんへ
おはようございます!
info機能がおかしかった模様で、共感して頂いていたことに、さっき気付きました。
この映画なんか、「日本では本題を勘違いされてる」代表みたいなもんですね。後付けの歌詞内容が、その証明みたいなもんでw