「1発」ディア・ハンター ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
1発
ベトナム戦争は旧ソビエトとアメリカとの代替戦争であったわけですが、ロシア系移民が対ソビエトの兵士としてアメリカの為に傷つき死んでいくこと、代替戦争をさせられたベトナム人が傷つき死んでいくこと、一体彼らは何の為にと、戦争の不条理さを見せつけられました。
アメリカでは、戦争のPTSDで自死や精神疾患になる人、家族や他人を殺してしまう人が多く存在します。一般市民による銃の無差別殺人が後を絶ちません。この作品では、「1発」という言葉がキーワードとして使われていましたが、40年後のアメリカでは銃規制を訴える若者達がデモという行動を起こしています。それはまるで、ニックの様な戦争で死に傷ついた当時の若者達の声をも代弁している様です。
アメリカという国家をここまで血と暴力の国にしたのは、この「1発」を軽んじていたからではないのかと、1人の人間の人生を軽く考えすぎているからではないのかと、この作品を鑑賞して改めて思いました。
戦地に行く前のマイケル達の日常は、ウオッカを飲んだりフォークダンスを踊ったりと、自らのルーツと共にありました。アメリカでは、国民のルーツは多種多様です。ニックの葬儀でウオッカで乾杯しアメリカを讃える歌を歌うラストシーンは、ルーツが多様なアメリカが世界中で戦争を仕掛ける残酷さとアメリカへの大きな批判を感じずにはいられませんでした。
今晩は
”アメリカという国家をここまで血と暴力の国にしたのは、この「1発」を軽んじていたからではないのかと、1人の人間の人生を軽く考えすぎているからではないのかと、この作品を鑑賞して改めて思いました。”
鋭い考察且つコメントですね。
私は「血と暴力の国」(で、「ノーカントリー」と言う形で映画化)を書いたコーマック・マッカーシーは、公的には明確にされていませんが、年齢的にアメリカの愚かしき幾つかの戦争に従事した体験から、数作の虚無的且つ暴力的な著作を”敢えて”世に出したのでは、と思っています。
今作は、初見時には??でしたが、2度、3度観ると戦争によって、人生を狂わされた若者たちの姿と運命に抗う姿が、沁みました・・。
近作の邦画で、ロシアンルーレットを冠にした映画がありましたが(レビューには、すこーしだけ記載)、今作の、トラウマになる位の、大スクリーンで観ると吐き気がする位の映画を制作陣は観たのかな?とも思いました。