「人間の生きる価値は、社会的地位や金銭にはないとの想いをひしひしと感じる作品の完成度の高さに…」天国と地獄(1963) KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の生きる価値は、社会的地位や金銭にはないとの想いをひしひしと感じる作品の完成度の高さに…
キネマ旬報では、
今村昌平の「にっぽん昆虫記」に
第1位の座を譲ったものの、
この年の第2位に選出された逸品。
多分、4度目位だろうが、テレビ放映を機に
「野良犬」「悪い奴らはよく眠る」
に続いて再鑑賞。
黒澤監督は“麻薬”への拒絶反応と
戦後記憶の残照が強いのか、
犯人がそのブツを求めてドヤ街を歩き回る
シーンが少し長過ぎる印象と、
犯人が特定出来ているにも関わらず、
被害者への同情的な意味合いで
犯人をより重い罪への誘導する捜査手法
なんてあり得るのだろうかとの点では
疑問を感じたものの、
この作品の完成度の高さには
感服するばかりだった。
私は、黒澤映画とは
ヒューマニズムとエンターテイメントの
見事な融合芸術と見ているが、
この作品では、格差社会に反発して
犯行に及ぶインターン医師が、
貶めるはずの靴会社重役が
運転手の子供の身代金を払ったことにより
世間から賞賛を受けるという
思惑通りとはいかない犯人が受ける
皮肉が効いたストーリー展開等々、
脚本家グループの深い洞察を感じる共に、
人間の生きる価値は、
社会的地位や金銭にはないとの
黒澤監督の想いもひしひしと感じる
鑑賞となった。
コメントする