劇場公開日 1986年8月2日

「観ない事で、エンターテイメントの基準が一つ減る。もし観ていないのであれば、それは・・・。」天空の城ラピュタ kouさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0観ない事で、エンターテイメントの基準が一つ減る。もし観ていないのであれば、それは・・・。

2022年11月4日
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私が作品を評価するにあたっての基準の作品です。
この作品が100点と考えた上で、他のエンターテイメントに対する点数をつけていると言っても過言ではありません。

1986年の作品の為、この作品を見たことがないと言う人も増えてきました。
ジブリはサブスクも無い為、金曜ロードショーかDVD等で観る必要がある為、観る為のハードルが高いからかも知れません。
それに、あまりにも有名なフレーズやシーンの切り抜きの為、わざわざ観ようと云う気にならないのかも知れません。

だからこそ、今更ながら、この作品の素晴らしさを考えてみる。
極力ネタバレはしないように、理由だけを簡潔に。

①時間配分
2時間映画で難しいのはキャラクターの描き方だ。
掘り下げが足りなければ、感情移入が出来ず、進めすぎればストーリーが停滞する。
キャラクターの動機付けに不備が無く、彼らの目的意識が分かりやすい。
作品の中でキャラクターが生きている。生活の中から、冒険へと繋がる描写は上手さすら感じさせない。
映画は凝縮した人生体験だと思っている。だからこそ、1分1秒でも無駄なシーンは存在してはならない。
近年の映画は、2時間を有効に、効果的に生かしていただろうか? 無駄に冗長だったり、描かないのではなく描き切れていないようなことはなかっただろうか?

②世界観
オープニングテーマが流れる中、ビジュアルアートが流れるのだが、そこには天空の城を想像した伝承記のような映像が使われている。
開幕から飛行船などの技術体系はあるが、一報鉱山で泥臭く鉱石を掘るような人々の暮らしぶりも描かれる。これを開始10分程度で描くのだ。この世界の技術レベルがすんなりと入ってくる。
その上で、何か分からない謎の力「飛行石」と呼ばれる石に、とてつもない価値がある事も示唆される。
ここまで世界観をナレーションや説明台詞なしに理解させられる。
まさに、アニメーションで語られると云うやつだ。
世界観は映画を観る上で、もっとも重要な要素だ。ここが蔑ろにされると、細かな引っ掛かりを生んでしまう事が多い。
近年の映画は、何の説明もなく、導入から自然と世界観に浸らしてくれただろうか?

③緩急
アクションシーンやギャグシーンも随所に散りばめられる一方、命のやり取りとも言えるシリアスなシーンも要所要所に刺さる。
各キャラクターの会話は少しポップな印象を受けるものが多いが、銃撃砲弾が飛び交う様や、古代兵器の破壊力は世界を脅かすシリアスさを感じさせれる。
話を追っていくと、そのバランスの絶妙さに感動する。
張りつめて、緩めて、笑わせられ、興奮させられ、感動する。
もちろん、映画はジャンルで分類される為、全ての映画を同一視点から評価する事は難しい。
ただ、映画はあくまでも「娯楽」であり「エンターテイメント」である。
だからこそ、感情を操作して、体験後の感動を生み出す必要がある。その為には、感情の振れ幅を生み出すバランスが必要なのだ。
近年の映画は、エンターテイメントとしてバランスが良かっただろうか?

④名セリフ
観終わった後、絶対にマネしたくなるシーンや、口ずさみたくなる台詞が生まれる。
あなたが観た近年見た映画の中で、名セリフはあっただろうか?
思わず口から出てしまうような言葉はあっただろうか?
この作品は、最低でも2つ以上はある。
観終わった後、構成の良さや、シーンの印象は何となく覚えていても、セリフまで残る作品は意外と少ない気がする。しかしそんなセリフ「キラーワード」を生み出せた作品は、少なからず傑作と呼ばれる事も多いだろう。
近年の映画で、心に残るセリフは、いくつあっただろうか?

長々と書いてしまったが、
映画を語る上、特にエンターテイメント性を大切にした映画を語る上では、大切にするべきものだと思う。
だからこそ、この映画を基準として、
これ以上の作品を期待するし、求めてしまう。

ラピュタ以上の映画と出会う事は、なかなか難しい。
だからこそ、映画の基準の一つとして、観て欲しい。
そう云う映画だと、私は思う。

小難しいような話をしたが、一度何も考えずに観る事をオススメする。
何故なら、この映画は子供が楽しむ為の最高の映画であり、野暮な大人が難癖つけながら観るような映画ではないのだから・・・。

kou-suke