キサラギのレビュー・感想・評価
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こういった手口の映画、好きです。
「如月ミキ自分は茜屋日海夏」
皆若い!笑
名作映画は、再鑑賞した時に、当時の記憶、自分の置かれていた状況を思い出す説
リバイバル上映で再鑑賞。自死したアイドルの一周忌で、
ファン掲示板を出入りする5人の男が集い、オフ会を開催するも、楽しいはずの催しが、
死の真相を巡って、雲行きが怪しくなっていく、、、というお話。
ところで、良い映画作品とは、どういう作品の事を言うのだろう、と考えると、
ストーリーの感動や衝撃度合、
唸るような怒涛の展開、
映像美、
迫力の音響、
画期的発明的なアイデア、
上映後の余韻の深さ、などなど
色んな見方や定義の声が出てくる。
そこに敢えてもう1つ、提案できるものとして、
「再鑑賞した時に、当時の記憶、自分の置かれていた状況を思い出す」
というものを、私は挙げたい。
名作と呼ばれるような作品を観て、
あまりに感動したり、刺さったり、人目も憚らず泣いたりと、
人は心を動かされると、それを観た時の事を、今起こったことのように思い出すものだ。
こういう現象を起こすのは、私の場合、
「映画を観た時」と、「競馬レースを観た時」、とりわけ「有馬記念」を観た時だけだ。
多くの競馬ファンにとって、有馬記念は特別なモノだ。
競馬関係者にとって特別な日本ダービーも、
競馬ファンにとっては、有馬記念の前では、ただの「前座」に過ぎない。
普段は馬券を買わなくとも、有馬記念だけは買う人もいる。、
競馬を辞めたと公言する人も、有馬記念だけは、なぜか不思議と、辞められない。
その年に起こった、全ての悪い事象、主として馬券に負けたことを、
年末最後の有馬記念という1レースだけで、全て良い方向にひっくり返せる、
一発逆転、奇跡の大イベントなのだ。
想いの強さが別格過ぎる。
数年前から、有馬記念のあとに、JRAがG1レースを年末に設定したのだが、
それに対して、大多数のファンが怒り始めるほど。
本来、G1が増えるのは嬉しい事だけれど、
「年末総決算の有馬」が崩れるのは、絶対に許せない、という理屈だ。
そんな、愛情なのか、怨念なのか、よくわからないけれども、
生霊の如く特別な念を、全国同時多発的に発する有馬記念というレースで、
競馬ファンは、観戦と共に、一年を振り返る。
なので、有馬記念の思い出を振り返ると、
その年の自分が、どういう生き様を歩んだのかまで、鮮明に思い出せるのだ。
これと同じ現象が、映画作品の何本かで、稀にある。
さて、お笑い芸人のオードリーのラジオで、出てくる映画の話題といえば、決まって、
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
「メジャーリーグ」
「フィールド・オブ・ドリームス」
の話になる。そして、この3本の話をする時に、二人は決まって童心に帰る。
当時、それらを鑑賞し、受けた子供心ながらの衝撃、感動、憧れ、家族との思い出の話を、
鮮明に、明確に、当時と同じ熱量で、飽きもせず、
毎回、古典落語のように、会話のキャッチボールを始めるのだ。
18年ぶりに観た「キサラギ」で、私は、有馬記念と同じような現象に陥った。
映画が初上映された前年、私は仕事を転職した。不本意な転職、失望する暇もなく、
未経験の業界に入り、新人生活に舞い戻った。とてつもなく辛く感じていた。
貯金もなく、失意の中での、この荒行だったので、
とりあえず3ヵ月だけ、次の仕事の「繋ぎ」のつもりでと、必死に堪えていた。
3ヵ月我慢できた。よし、次は半年、我慢しよう。よし、次は1年、耐え凌ごう。
持ち合わせの金さえ出来たら、こんな絶対仕事辞めてやる。
二度とやるもんか。いつでも飛んでやる。
そう密かに思いながら、頑張る時期だった。
少し仕事に慣れてきて、気持ちの余裕ができた。息抜きがてら、久方ぶりに映画でも観に行くか。
そんな心持ちで映画館に入って観たのが、
この「キサラギ」だった。
鑑賞後、余韻が止まらなかった。
名作を観たあとに起こる、あの、鳥肌が立つような、良い映画を観たなあという、
エンドロール時の幾ばくかの幸せなひととき。
また、この映画の場合、ある人物の歌と、ある人物たちのダンスも、ラストに堪能できる。
冒頭からのコメディのフリや種まきが効きまくり、じわっと来る感動と余韻。
最後はとんでもない伏線回収の、密室会話劇映画。
完璧すぎる伏線回収に、本当に「膝を打つ」を、NON STYLE石田の如く、やってしまった。
とはいっても、後年、とある芸人が
「コントの伏線回収は、そんなに凄い事ではなく、簡単に作れる」と言ってたので、
映画の伏線回収に、当時やられた自分は、顔が赤くなったものの、
でもやっぱり見事だったと、今回改めて再確認した。
多分、フリの効果は、脚本の構成によるものだけではない。
高校時代に演劇をやってた自分だからこそ、こういうのが観たかったんだよ、
の部分も大きい。
「十二人の怒れる男」や「12人の優しい日本人」のような、
演劇にも容易に転換できそうなこのジャンルが。
リバイバル時に思った事として、最近観た作品でいうと、
三谷幸喜の「スオミの話をしよう」は、本当に残念だったなと。
そういうのじゃねーんだわ、古沢良太の「キサラギ」みたいなんが、良かったんだよと。
でも古沢良太の「どうする家康」も本当に残念だった。
そういうのじゃねーんだわ、三谷幸喜の「鎌倉殿の13人」みたいなんが良かったんだよと。
なんなん?この、古沢良太と三谷幸喜の、
アンジャッシュの、すれ違いコントみたいな現象。
渡部健と、香川照之と、小出恵介は、すれ違いどころか、
奇跡のシンクロすら、してるのに。
本当に残念だ!
話を戻す。
演劇のような密室会話劇のフリだけではなく、自分にフリが効いた、もう1つの理由は、
「オフ会」という設定だと思う。
私は、この映画を観る前年まで、小栗旬の「家元」さんの役どころと同じ、
「オフ会の主催者」たるものを、毎年の恒例行事として、執り行っていた。
だからフリが効いたのだ。
無論、言わずもがなの展開だけれど、そのオフ会とは「競馬」のオフ会であり、
自身が立ち上げたホームページの掲示板に、日頃集う者たちが、一堂に会し、
有馬記念当日に行われる、私にとっての年末一大イベントだったのだ。
だから、冒頭からのオフ会参加者と、初顔合わせのシーンで、
すでに「刺さって」しまった。
ハンドルネームとのギャップのくだりだとか、
それこそ香川照之の「いちご娘。」さんのような、オジサンもいた。
私のオフ会では、それは「もも」さんという名前だったけれども。
「暴走」って名前が付いた、物静かなオジサンもいたし、
なんだったら、柔道の金メダリストだった「平成の三四郎」こと、
故人・古賀稔彦選手の事を、
「ああ、古賀クンね」
呼ばわりする、某大学名門柔道部の総監督までいた。
可愛らしいハンドルネームで、信じられないほどゴツイ出で立ちで、
肝っ玉が凍え縮んだ(優しかったけども)。
そして、小栗旬の「家元」さんが、どんどん他の参加者に、めくられ始めるのと、
同様の現象も、私は体験した。
世の中、上には上がいるもんだ。競馬ファンって、なんであんなに記憶力いいの?
そんな、ワクワク楽しみな、オフ会主催者というポジションを、
映画鑑賞の前年に、切羽詰まった転職環境により、私は失ってしまった。
実際は、その数年後も一度だけ主催したが、
それまで20人くらい集まったオフ会も、人の集まりは悪くなり、
オフ会は、立ち消えになってしまった。
今泉力哉監督の映画「あの頃。」のような哀愁。
なので、この映画を観た時に、家元さんの主催オフ会みたいな事は、
もう自分にはできないなぁ、
家元さんには、また主催してほしいなぁと、
私は自身の無念の想いを「家元」さん託し、継承した気分だったのだ。
「映画を再鑑賞した時に、当時の記憶、自分の置かれていた状況を思い出す。」
それもまた、名作映画の定義の1つであり、映画の醍醐味や魅力、なのではないだろうか。
ちなみに、18年ぶりにリバイバル上映を観たわけだが、
「繋ぎ」のつもりで始めたこの仕事。会社こそ代われど、
19年間も同じ業界で働き続けている。
あの時、切羽詰まって辿り着いた、不本意な仕事も、
息抜きのつもりで観た「キサラギ」の時世から、
だいぶ時間が経ってしまった。新人が大ベテラン扱いになるほどの、時の流れ。
競馬も辞めてしまったけれど、有馬記念だけは今でもやる。
私もオフ会、またやりたいなぁ。。。
10点満点
伏線回収が素晴らしい会話劇
最後の10秒でここまで台無しにできるのか
2025年劇場鑑賞42本目。
エンドロール後映像無し。
パンフレット無しにつきマイナス0.5。1600円も固定で取るんだからリバイバルでも作って欲しいです。
十二人の怒れる男や十二人の優しい日本人など室内だけで話が進むクローズドサークルと呼ばれるジャンルが大好きで、この作品も気にはなっていて、スカパーかWOWOWで録画したのを持っているのですが、自分基本映画館でしか映画を観ないので今まで観ていませんでした。
小出恵介と香川照之がメイン5人しかいないのに出演していて、こうなったら残り3人も不祥事起こして干されていたら面白いのにと不謹慎な事を思いつつ鑑賞。
若さと髪型には違和感を感じましたが、デジタルリマスターのお陰で映像自体に古臭さは感じられず。自殺したアイドルの一周忌に集まり、最初はアイドルを偲んでいたのですが、程なく自殺の真相を探る展開になっていき、最後はスッキリした終わりになったな、面白かったな、エンドロールも面白映像だな、と思っていたら、エンドロール途中に映像が挟まれまして、それがマジで蛇足。その後続編が作られていたらいいのですが、考察ドラマ「あなたの番です」の投げっぱなしエンドに通じる、安易に奥行き持たせようとして大失敗した感じになってめちゃくちゃ残念です。
全国リバイバル上映プロジェクトにて鑑賞
無駄のないストーリー展開と俳優陣に拍手
18年ぶりのリバイバル上映。やはり密室サスペンスコメディの最高峰!
「キサラギ」(2007)
2007年の初公開から18年ぶりのリバイバル上映。
今では脚本家満足度ランキング堂々1位の古沢良太氏の実写映画脚本2作目。
自殺したアイドル・如月ミキの一周忌にファンサイトを通じて集まった5人の男が徐々に明らかになる当時の状況から推理を繰り広げ、真相を究明する密室推理劇。
公開当時の2007年といえば「AKB48」が誕生してアイドルがより身近になり、SNSもYouTube、Twitterは産声をあげたくらいで「2ちゃんねる」のような匿名掲示板が盛んでテーマとしては当時の旬のネタ、空気感も実に懐かしかったですね。
一周忌に集まったハンドルネームの家元(演:小栗旬氏)、オダ・ユージ(演:ユースケ・サンタマリア氏)、スネーク(演:小出恵介氏)、安男(演:塚地武雅)、いちご娘。(演:香川照之)の5人の男たちの個性派ぞろいの強烈なキャラクター(キャスティング)、事件の真相に迫るにつれて次第に暴かれる5人の素性の驚き(アハ体験)、密室サスペンスのスタイルをとりながら、息をつかせぬドタバタコメディでトコトン笑わせて、そしてハートウォーミングなラストで涙…。
密室(ワンシチュエーション)にも関わらず、テンポ良く飽きさせない佐藤祐市監督の演出力も素晴らしいですが、とにかく古沢良太氏の脚本が惚れ惚れするぐらい抜群で抱腹絶倒。
『外事警察』『リーガル・ハイ』『コンフィデンスマンJP』のファンにはぜひ観て欲しいですね。
密室劇としては『12人の優しい日本人』(1991)に比肩する傑作、今回のリバイバル上映を機にぜひ多くの人にこの作品の面白さを共有、共感したいですね。
痛快で不思議な会話劇とミステリー
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