消えた天使 : 映画評論・批評
2007年7月31日更新
2007年8月4日より有楽町スバル座ほかにてロードショー
サイコ・サスペンスに挑んだA・ラウ監督のハリウッド・デビュー作
「傷だらけの男たち」が公開されたばかりのアンドリュー・ラウ監督がハリウッド・デビュー(日本が世界初公開!)。多くのアジア人監督がハリウッド体制に飲み込まれるなか、“性犯罪・快楽殺人”という、かなりアブないテーマでプロデュースも兼任。シチュエーション・ホラー全盛の昨今、目まぐるしいカットの連続で妙な緊張感を生み出し、「羊たちの沈黙」以来ともいえる、サイコ・サスペンスに仕上げた。
じつは、リチャード・ギア演じる公共安全局員がいちばんヤバい……。なにしろ、神経衰弱ギリギリで、過去に性犯罪歴を持つリスト登録者(原題の意)をボコりまくって、クビ寸前。相棒のクレア・デーンズならずとも、絶対に組みたくない上司ナンバーワンだ。それだけに、荒野のド真ん中で、「インファナル〜」のあの名シーンを再現してしまうのも、妙な説得力アリ。それにしても、本来サイコ・スリラーになるべき、「インファナル・アフェアIII/終極無間」を単なる1作目の後日談にしかできなかったラウ監督だけに、このような仕上がりは正直、意外かもしれない。だが、いちばんで意外なのは、本作で本格女優デビューを決めた、アブリル・ラビーンの思考回路だろう。
(くれい響)