ボルベール 帰郷のレビュー・感想・評価
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東風にも男にも負けない女達の強固な絆
ラ・マンチャに行ってみたい
伏線を丁寧に回収した
まず観終わって感じたことはこの映画は「丁寧に伏線を張り、さらに丁寧に回収したな」ということでした。こういう何というか、家族内の、劇中でもアグスティナが言っていた「内輪の問題」の映画ってリアリティを追及してそれに夢中になってしまっているのか、「あれはなんだったの?あのシーンいらなくない?」とすっきりしないものをいくつか残して終わることが多かったのですが、(個人的にそう思うことが多かった)この映画はストーリー展開と家族の問題のフィクションらしさとリアリティのバランスをうまくとっていたような気がします。
細かいところはひょっとすると他にあるかもしれませんが、私が個人的に知りたかったことをすべてはっきりさせてくれました。
母との会話ですべての点がつながり、(予想は十分できるのですが)そこからラストまでの流れもよかったです。
登場人物が皆、強さと脆さを体現しているので共感もしやすく、とても見やすく感じました。
観ることで体験する、映画の存在価値
物語の内容は?
父親が娘を妊娠させて…、しかも不倫もしていて…、怒った妻は不倫相手共々殺して…、娘の子供は父親を殺して…、親子は殺人の証拠を隠滅しようと企てる…。
羅列してみるとどう見てもドロドロの昼ドラだ。
しかし、作品を見てそう感じるだろうか。
これ程に汚れた話を微塵もそう感じさせず、ましてや感動的な絆の物語に仕立て上げてしまうのがスペインの鬼才アルモドバルだ。 どの場面を切り取って見てもそのシーンの中心人物は女性、どんな状況下でもたくましい生きる女性達を後押しするように描くこの作品は「女性讃歌の三部作」を締め括るに相応しい。
定型に収まらないジャンルレスな作風、 強烈な色のコントラスト、たくましい女性像、彼の特徴が大胆に詰まった代表作だ。
やはりペネロペはスペインの作品の方が生き生きしていていい。
観ることで体験する自分の巡り合うことの無い世界、映画の存在価値を改めて実感させてくれる。
したたかに生きる女たち
母性=愛すること・守ること・許すこと、そして弔うこと
ペネロペ・クルス演じるヒロイン、ライムンダは、典型的なラ・マンチャの女だ。気性は荒いが、情に篤く、たくましく優しい。今回の彼女の強烈な母性はどうだ!それは大きな胸とお尻が象徴している母性そのもの。
女は強い。重い冷蔵庫も運べば、死体も運ぶ。死体を処理した後で料理をしたりもする。ここで現れる女たちの連帯感がすごい。彼女に手を貸すのは全て女たちだ。この行動力を伴うバイタリティー。それは愛する者を守りたいという想いと、食べていかなければならないという女ならではの現実性に基づいている。
さて、物語は殺人や死んだはずの母の目撃情報など、サスペンスの要素を含みながらも、陰惨にならずにコミカルかつハートフルに展開していく。それをさらに盛り上げるのが、凝ったカメラワークと配色の美しさだ。スペインの家はカラフルでカワイイ!キレイなタイルの壁をはじめとするポップな色のインテリアやファブリック。何よりも「血」を意識させる「赤」の使い方が見事だ。
女たちは、強さだけを見せているのではない。母であるライムンダも、彼女の母に対しては1人の娘。過去の傷のために、解り合えなかった母娘は、同じ傷を受けて、わかりあい許しあう。
「死」という人間には一番受け入れがたい恐怖に対抗できるのは強い母性…。死者に対しては、全てを許し厚く弔い、これから死に臨む者に対しては、その最期を看取る勇気と責任感を発揮する。
アルモドバル監督は、母性=愛すること・守ること・許すこと、そして死者を受け入れ弔うことを、ラ・マンチャの強くてかわいらしい女達を通じて私たちに物語る。重要なテーマである母性と死…帰郷とは、死を受け入れ甦り、再び母の腕に抱かれるまでの魂の再生。
それでもアルモドバル
ペネロペ、復活!!
ペネロペ・クルスのVolverですがDVD発売となったので見ました。評判高かったのですが、正直「ペネロペでしょ?トムに捨てられた・・・。」という印象しかなかった映画です。(私のような先入観を持っている人はいるはずだ。)
ゴシップにまみれていたペネロペですが、この映画で演技がきっちりできることを証明しました。非常にいい映画に出ることができて本当にラッキーな人だと思います。
内容は、娘がひょんなことで自分の旦那を殺してしまい、何とかこれを隠そうとするが、意外な展開に・・・。というお話で、ストーリーが秀逸です。「チャイナタウン」に通じるところもあるかも。何を見るか迷っている方は間違いなくおすすめです。
中途半端なエンディングを迎える最悪な作品でした
女主人公たちを縛り続ける「故郷」という異界
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」のペドロ・アルモドバル監督の新作。どうしても前2作の流れから期待してしまうが、前2作とは異なる流れの作品である。それは、前2作に見られた「現代という時代性」がないからだと思った。
物語は、主人公ペネロペ・クルスが生活する都会と故郷である田舎(ラ・マンチャという町だそうである)を往復する形で描かれる。この田舎が、まさに時が止まったような田舎で、それこそ幽霊が出てもおかしくないような、「異界」的な舞台として描かれているのである。この田舎町は、監督自身の故郷であるそうである。
ペネロペ・クルスたち女主人公が巻き込まれる物語の渦が流れ去った後に残るのは、この「異界」としての田舎の不気味さである。しかし故郷の田舎町は、その閉鎖性と神秘性と不気味さにより女主人公たちをそこに縛り付け続ける。その描き方は、ほとんどホラー映画である。
それにしても、ペドロ・アルモドバル監督はどんな女性よりも女性を描くことが上手な監督である。「うーん、女って、こういう生き物なんだ」と納得してしまった。
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