「映画は映画でいいよ。」アヒルと鴨のコインロッカー きのこの日さんの映画レビュー(感想・評価)
映画は映画でいいよ。
「一緒に本屋を襲わないか?」
伊坂さんの、同名小説を映画化したもの。
伊坂さんの小説はやっぱり題名からして魅かれますね~。
重力ピエロに続くいい映画化作品でした!!
まずは原作から。これまた原作が名作です。
おしゃれで可愛くて、とてつもなくせつない物語。
悲しいとか絶望とか悲惨ではなくて本当に「せつない」物語。
これ読んだらほかの物語に「せつない」っていう形容詞を使いたくなくなる。
この作品のおミソは広辞苑とディランと神様。
そしてドルジと川崎と琴美の物語。その物語に途中から参加した主人公の椎名。
伊坂さん作品の中でもとくに印象的な言い回しの多い作品。
悪いことをして、それを神様に見られないようにするために琴美がボブディランのCDを棚に隠してしまうという一説があり。川崎はディランを神様だと言っていた。だからディランを隠すことで神様を閉じ込めてしまうのだ。
くぅ~!
おしゃれ!おしゃれ!いや絶対そんな会話をね、現実でしてる人なんておらんと思うんやけど、
いいねんそれで。
伊坂さんの作品は低空飛行小説だからそこがいい。
現実世界を書いてるけど現実じゃないファンタジーだから、そんなおしゃれな会話があこがれちゃって素敵。
原作の都合上、はたしてどうやって映画化するのかめちゃくちゃ謎だったんだけど、凄くうまく映像化されてました。女の子が大好きでモテモテのノリの軽い川崎役には松田龍平。
ブータンからの留学生、琴美の恋人、ドルジは瑛太。そしてペットをこよなく愛しペットショップで働く琴美は関めぐみ。主人公の椎名は濱田岳。
キャストはちょっと、松田龍平と関めぐみがうぅ~ん。。って感じでした。松田龍平は大好きなんだけどちょっと川崎ではないかな。。もうちょっとストレートにただの男前で良かった気がする。
で、琴美役の関めぐみさん。琴美は気が強くてちゃきちゃきしてるんだけどもだからこそもうちょっと小さくて見た目の女の子らしいかわいらしい感じの子でないと、ただの気が強い人みたいになってしまうから、個人的には関めぐみさんでは無かったかなって感じでした。
濱田岳くん、いいですね。椎名は主人公なんだけど、本を読みこんでも読み終わってもあんまり印象に残らないっていうかなんのイメージもつかない感じ。
伊坂さんの小説は結構脇役にバババーンと濃い人が多くて主人公はものすごくニュートラルな人が多い。
だから主人公のキャスティングがだれでも違くなってしまう気もするけど濱田君すごい良かった。
小さくてふわふわしてて、川崎(瑛太)がわけのわからないことを言い出した時の表情がいい。「ぇぇぇ」って声にでてないけど顔が言ってる。いいですな~。
あとはやっぱ瑛太!よかった~。
顔がアジアンテイスト?やからブータンからの留学生にもちゃんと見えるし、男前の川崎にも見える。芸達者でした!
最終的に、琴美を死に追いやったやつを懲らしめる?ことでドルジの復讐は完結する。
だけどすごく、さみしくて切ない。川崎も琴美も失ってしまったドルジ。復讐を成功させたドルジ。
でもすごくさみしかった。
ドルジはちょくちょく、川崎や琴美が言っていた言葉を呪文のように繰り返す。それがせつない。
彼の世界は二人で満ち溢れていた。
ドルジの復讐は決して許されることではないのかもしれない。それでもまっすぐで純粋な復讐だった。
その純粋さがせつなくて苦しい。
ブータンの人の思想とかそれぞれの思い。じつは結構深いことが描かれている作品です。
2時間半でうまくまとまってたし、ディランの風に吹かれてがよかった~、
映像もきれい。
ふわっとしたせつなさが最後胸を襲う作品。
原作を読んだ人ほど楽しいかもしれません。
今回は印象的なシーンというよりは印象的なセリフが非常に多いので、
ひとつひとつのセリフを感じ入りながら見ていただければとおもいます。
あしもとをしっかり見て。
気づいたら足跡はひとりぶんになってしまった。
それでもひとりで生きて行かなくちゃ。
風に吹かれて。
て感じ。