劇場公開日 2008年8月2日

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「傑作。押井作品で一番好き。」スカイ・クロラ The Sky Crawlers けやきさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0傑作。押井作品で一番好き。

2025年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

押井監督の作品は『ビューティフル・ドリーマー』や『天使のたまご』から観てましたが、映像はすごいし、面白いけど、理屈っぽいセリフでけむに巻かれて結局よくわからない、という印象でした。
「押井守の映画50年50本」を読んでも、とり上げられている映画は戦争、SF、バイオレンスものばかりで、この人が興味があるのは結局はテクノロジーと暴力なのかと、鑑賞者として少し距離をとっていました。

でも『スカイ・クロラ』は、人間についての映画でした。押井監督はインタビューで「年を取ったことで逆に人間的なもの、人間くさいものに興味が出てき」たと話していますが、確かにそう感じます。人間がストーリーの飾りや駒ではなく、草薙や函南の悲しみや迷いがものすごく繊細にアニメで描かれていたと思います。

また、彼らの永遠の待機時間を表現できるかが勝負、とも監督は語っていますが、押井監督はその勝負に勝ったと思います。出撃を待つ、仲間の帰還を待つ、その中にしか彼らの日常はありません。アニメでこんな時間の流れ方を描いたものはほとんど観た覚えがありません。

私自身は、この作品は押井監督の最高傑作だと思います。脚本と音響もすばらしい。
日テレ開局55周年記念作品とのことですが、押井監督で、しかもヒット作のセオリーを逸脱したこの作品を記念作品とした日テレの懐の深さにも感心しました。

けやき