選挙のレビュー・感想・評価
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選挙て、すごい茶番、すごい様式醜
小泉時代はこういうのがあったんだな、面白く拝見した。
妻の方がとてもユニーク。ユニークというか当たり前の普通の感覚を持っておられるのだが、この頃はまだセーフだったのか、今どき、使うのは恥ずかしい家内という言葉を強要されたり、仕事辞めろと言われたりして、候補者の夫にカッカして文句言いながらサポートご苦労。妻なんて言わない、とか支援してくれた人にお礼込めて仕事辞めろとか、こういうズレた人らがあつめる票なんだよな、でもそもそも小泉利用の落下傘候補とはいえ自民党から立候補してんだから仕方ないか。小泉総理はすごい、瞬間瞬間の動きがプロ。想田監督観察映画ならではの面白さ。
滑稽だけど意味深。
浮き彫りになっているのは、政策ではなく、挨拶回りの仕方、印象を持ってもらう演説の仕方などなどの選挙のノウハウ。しかし、このあたりが選挙の要なのでしょう。しかし、それでいいのかと問われると... なんか選挙だけでなく、人間の営みの背後をふりかえるきっかけになります。
客寄せパンダは、お花がお好き
想田和弘監督が、寝耳に水で市議会議員の候補に名乗りを挙げることになった一人の男性「山内和彦」の選挙活動を描く、ドキュメンタリー作品。
ファッションモデルになるための専門学校がある、という事実はあまり知られていない。笑顔の角度、ウォーキング、挨拶の仕方まで緻密なマニュアルを身体に染み込ませることで、ある程度の実績を上げているという。微笑みの方法・・・何とも、苦笑しか浮かんでこないのは一般人のひがみ根性だろうか。
政治家と、モデルは共通点が多いように思う。手の振り方、奥さんの呼称、白い手袋の意味まで力技で大物先生に叩き込まれ、政党という名の売れたブランドを着飾り、議会という華々しいランウェイを颯爽と駆け抜ける姿に、一見、人生の成功者の形が見えてくる。
だが、その裏側を覗けば近所の見た目印象が良いおじ様、おば様が都合よく引っ張り出され、芸を仕込まれる寸劇の様相が見えてくるようだ。本作はその猿芝居に大真面目に取り組む人間の滑稽な姿を、ユーモアをもって見つめていく。
ポスターが張り巡らされた候補者事務所の中は、どうなっているのか。選挙カーの内部、どんな話をしているか。一般人が実は知りたい選挙活動の裏側を掘り下げる先に浮かんでくるのは、候補者をあの手この手で操作し、叱責し、励まし、使いこなそうとする数多の人間の下心と、その心を笑顔で利用し、のし上がろうとする候補者のあざとさ。
自分が客寄せパンダであることを自覚しつつ、花しょってポーズを取らなければ戦いに勝てない現実に適応する。ただの一般人が、政治家になるために本当に必要なものは、金ではない。コネでもない。自分が「持たざるもの」であることを心から理解できる聡明な諦めだと、この映画は伝えている。
「選挙はね、名前を連呼するの。どうせ、政策なんて皆聞いてないんだから。」山内は、自虐的にカメラに語り、近所のお祭りで笑顔を振りまく。担いでいるのは、神輿。担がれているのは、私。皮肉がぴりりと利いても、思わず笑ってしまう。楽しく、厳しく、冷静に。ドキュメンタリーの姿勢が正しく踏襲された佳作に仕上がっている。
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