「エンディングに向けての盛り上がりはすごい! それだけに惜しい!!」ゾディアック たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
エンディングに向けての盛り上がりはすごい! それだけに惜しい!!
実際に起きた未解決連続殺人「ゾディアック事件」をベースにしたスリラー映画。
監督は『セブン』『ファイト・クラブ』のデビッド・フィンチャー。
主人公である漫画家ロバートを『デイ・アフター・トゥモロー』『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールが演じる。
サンフランシスコ市警の刑事デイヴ役は『死ぬまでにしたい10のこと』『エターナル・サンシャイン』のマーク・ラファロ。
ロバートの同僚である新聞記者ポール役には『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『追跡者』のロバート・ダウニー・Jr。
1960年代末から1970年代にかけて、カリフォルニアで発生した連続殺人「ゾディアック事件」。
監督のデビッド・フィンチャーはちょうど少年時代をゾディアック事件真っ最中のカリフォルニアで過ごしていており、この事件の事がずっと心に残っていた様である。
デビッド・フィンチャーが監督した名作『セブン』は、連続殺人事件かつ劇場型犯罪を扱っているという点で、かなりこの「ゾディアック事件」から影響を受けていると思われる。
そのためまず『セブン』を鑑賞しておいてから本作を観ると、類似点が見つかって面白い。
図書館の貸し出し履歴から犯人を探すという展開は『セブン』と共通しているし、家に帰ってみると家族がいない…という展開は『セブン』のあのクライマックスを思い出してしまい本当に恐ろしさを感じた。
主人公は新聞社に勤める風刺漫画家のロバートではあるのだが、ロバート1人が主人公というよりは、刑事のデイヴと記者のポールを合わせて3人の視点から事件を追うという群像劇という色合いが濃いかも。
この3人が「ゾディアック事件」によって人生をかき乱されるという人間ドラマも本作の見所の一つだが、記者のポールの描かれ方には不満。
主人公のうちの1人の様な扱いで、敏腕記者らしいのだがあまり敏腕ぶりが発揮されておらずいまいちキャラクターが立っていない。
「ゾディアック事件」に関わってしまったことで最終的には落ちぶれてしまうが、彼の葛藤とか苦悩があまり描かれていないため、彼が落ちぶれたということと「ゾディアック事件」の間にはあまり関係ないんじゃないかという印象を持ってしまう。
前半はデイヴの調査、後半はロバートの推理に重点が置かれており、後半のロバートのパートは間違いなく面白い!
これまで集められた証拠をもとにロバートが真実を追求するが、その結果として家庭が崩壊していってしまう…というサスペンス要素と人間ドラマがうまく噛み合っている。
パズルのピースを埋めていくように、事件の真相を推理していく様子はミステリーとして一級品の面白さ。
犯人と思われる男が映写技師として働いていた時の映画館のオーナーであるボブの家を訪ねるシーンのスリルは並のホラー映画では敵わないほどの恐ろしさがある。あの後、家族が家にいないという展開にはそりゃドキドキしますよね。
後半部分が面白かっただけに、前半部分の退屈さが勿体ない!
150分以上もあるサスペンス映画なのに殺人描写は3つしか無いため、興味を持続するのが大変だった。
デイヴの捜査パートは特に大きな出来事も起こらないし結構地味な展開が続くため、正直途中でこの映画ダメだわ、と思ってしまった。
未解決事件を取り扱っているため、明確な答えは明らかにならない。
あれって結局何だったんだと思わざるを得ない、謎のままで終わる描写も多く、普通のサスペンス映画だと思ってみると肩透かしを喰らうかも。
この映画のテーマは謎を解き明かすことではなく、事件に携わった人間たちの姿を描き出すことだったのだろう。
スティーブ・マックィーンや『ダーティハリー』など、チョットした小ネタが楽しい。
やはりデビッド・フィンチャーはサスペンスを撮るのが上手い!
とは思うが、もう少しコンパクトに纏まっていた方が娯楽的な面白さが増したと思う。
なんとなく惜しいな〜、と思ってしまう1作。