ダウン・バイ・ローのレビュー・感想・評価
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退屈ではなかった。
ジム・ジャームッシュ監督の映画って、何も起こらないというか、平凡とは違うけど普通の日常を描くのが上手な監督だと思ってました。パターソンとか。
あまりに物静かだから、今までの鑑賞作品はどれも全てピンとこなかったし、今回もまぁまぁまぁ...なんて見始めたけどこれは良かったです。
監督常連のトム・ウェイツがやはりいいですね。中盤からのやかましいイタリア人登場とか、ラストの感じとか。好きです。自分の見る監督作品の順番がよくなかったのかも。
パターソン→DEAD DON'T DIE→gimmie danger→ナイト・オン・ザ・プラネット...。先にこれ見てりゃ良かった。
変な偏見持たずに済んだのかもしれない。
〜劇終〜
人生の三叉路で、ふと思い出すダチ公のこと。
ダウン・バイ・ロー
さて、
いきなりお尋ねしますが
「スマホの【住所録】を消去すること」、
これ、あなたにも経験があるでしょう。
一時お付き合いはあったけれど、引っ越しや転勤や退職で、その相手とは別れて何となく日数も過ぎ、
「もうこの先やり取りをする事もまずないだろうな」と、その人の名前や電話番号を削除するときの あの得も言われぬ気持ち。
「えいッ」
「サヨナラ」、あるいは
「ありがとうございました」。
もしくは
「消えろ」とつぶやき、
その人を切って消去してしまう人差し指の、あの一瞬の迷いと ためらい、痛み、冷たさ、残酷さ、ね。
行為的に抹殺的な。
あなたはいつ、どんなタイミングで“そのボタン”に手を掛けておられますか?
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ジャック、
ザック、
ボブ。
ふとしたきっかけで、人生のひと時を一緒に過ごし、そしてまたそれぞれの道を別れていった3人の男の物語。
「ダウン・バイ・ロー」とは、刑務所用語のスラングで、“自分が踏み台になって友達を助けて脱獄させる行為”から派生し、「親しい兄弟のような間柄」を指すらしいです。
同房 相憐れむ。
闖入者ボブを迎えて、それまでダンマリだった室内の雰囲気は変わっていきます。
やはり「殺し」は、仲間内でも一目置かれるんですね(笑)
OPP
「オアリンズ・パリッシュ・プリズン」は、ニューオーリンズの刑務所。
アメリカ国内でも悪名高い刑務所で、ムショ内での受刑者たちへ扱いがたいへん悪いようだ。
受刑者の所内での死亡率が高い事でも知られている。
救急搬送の救急車の出入りも多く、
またハリケーンの時には職員たちが我れ先にと職場放棄して避難してしまったので 、収監者たちは取り残されて、水没したOPPで“行方不明扱い”にされた人数のこともWikipediaには書いてあった。
ゆえに「10指に数えられる刑務所」とのこと。シンシン=シンシナティ刑務所と並んで裏社会ではその名が恐れられている闇の世界というわけ。
日本では名刑=めいけい=が特に有名ですよね。
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とにかくイタリー男は喋る。
炭片で壁に窓を描く。
映画や母親のことを喋る。
メモ帳に記念しておくべき言葉や人物のことを大切に書いている。
3人はたまたまムショで出会い、
共に臭いメシを喰い、
トランプに興じ、
脱獄して危機を共にし、
ケンカや仲たがいもし、
そして分かれ道でそれぞれの道へとサヨナラして行った。
この「人生の縮図」を、ジム・ジャームッシュは「これ、君にもあることだろ?」と可笑しみとペーソスを込めて見せてくれている。
「スマホのアドレス帳」を眺めていると、ふと僕も、昔のダチを思い出すんだ。
20年も前の人間=1ヶ月も経たずに辞めてしまったその新人くんが、いったいどういう訳だか(!) 間違い電話の着信を残してくれてあったり、
Instagram で (とうに切れていても不思議じゃないのに)、 まだ僕のことを永く保存してくれているらしいことが判る ― そんな遠くの街の不思議なダチ公がいたり・・
白黒のスクリーンが良いんですよ。
この映画を観る人間をも、それぞれの旧知に、そしてそれぞれの過去に誘います。
簡単には切ったりできやしない記憶の中の人々。そして出会いの数々。
監督のジャームッシュは、
ふと、そうした人生の機微をイジってくれる、変わった男だ。
人間の心の隙間にカメラを当ててくれる独特のセンスの持ち主なんだ。
・ ・
2023年。今年ももうすぐ終わりです。
誰に年賀状を出し、あるいは今年から誰に年賀状を出さないことにするか・・
逡巡する季節ですね。
ましてや、僕なんかのことを「ダウン・バイ・ロー」と呼んでくれる人がいるならば。
·
別れ際が実に素晴らしい
モノクロで描かれた、見知らぬ三人のロードムービー。
やはりスクリーンで観れるのはうれしい。
何というか、トムウェイツが若くて格好良いんですよね。
少し前「デッドドントダイ」で見かけたから余計そう思います。
もちろんジョンルーリーやロベルトベニーニも若いんですけどね(でもベニーニはあんまり変わってないような…)
この作品も全体が流れるような静かな構成で、物語も極端な演出はありません。
しかしジャームッシュならではの、この空気が良いんですよね。
カットやちょっとした台詞回しもセンスがあって好きです。
そして「これは脱出劇ではない」とばかりの潔い演出。初めて観た時は「え?」って声が出ました。
そんな付かず離れずな三人の物語の終わり、この別れ際が実に素晴らしい。
三人の仕草までも愛しく、このシーンの為に作った作品ではないでしょうか。
ジャームッシュらしい、実に心地よい作品です。
オシャレ可笑しい脱走ストーリー
最初はちょっとワルイ感じのストーリー展開なのに、投獄されて役者が三人揃った時から急に雰囲気があやしくなる(笑)。三人目に入室するイタリア系の殺人犯が特にユニークで、演じるのは「Life is Beautiful」主演のイタリア人コメディアンの方。
牢屋の中でみんなで大声でアイスクリームを叫ぶ場面や、野うさぎを丸焼きにする場面での母親の思い出1人語りなど笑えるエピソードがあちこちにあった。
他には、ラスト近くまでずっとモノクロ画面なのが、ミシシッピ川の熱帯雨林がアート作品のように見えて印象的だった。
じんわりと深く泥濘にハマる
1週間ジワジワと経って猛烈に恋をした。
トム・ウェイツに。
知れてよかったすぎる。
ジム・ジャームッシュの「間」なんのでしょうか、
計算し尽くされていないというか、ここで終わるんだ感というか、あざとさなしの自然体の面白さにとてもハマり初期3部作DVD買いました。
その他も色々追いました。
いい作品、いい役者、いい音楽、
いい監督に出会えてとても幸せです。
感謝!
【旅③/仲間】
ジム・ジャームッシュのデビューから6番めまでの作品は、全て旅がモチーフだと思う。
出会い/集い、良し悪しではなく、その成り行きを見つめているのだ。
そして、出会い/集い、旅するのは、僕達のことではないのか。
(※ これら6作品のレビューは書き出しが同じです。すみません。)
「Down By Law(ダウン・バイ・ロー)」は、アメリカのジャズの世界では、尊敬に値するという意味で使われ、刑務所では、「気の合う仲間」や「頼りになるやつ」という意味で使われるスラングらしい。
この作品では、明らかに後者だ。
舞台は南部ルイジアナ州の州都ニュー・オリンズで、フランスが統治した時代もある。
オリンズは、フランス語のオルレアンが語源だ。
そして、ジャズ発祥の地。
「パーマネント・バケーション」でパーカーが最後に船で向かう先は明らかではなかったと思うが、港で会ったのはパリから来たストレンジャー(よそ者)だったことを思い出すし、パーカーが路上で出会ったのサックス奏者は、ニュー・オリンズを舞台にすることを予め示唆していたのだろうかと考えたりする。
作品では、アウトサイダーのジャックと、元DJのザック、イタリア人旅行者のロベルトがニュー・オリンズの刑務所で出会うのだが、ジャックとザックはどうも罠にはめられた感じで、ロベルトが捕まった理由は、たどたどしいロベルトの英語のせいで、詳細は判然としない。
だが、この3人が心を交わし、脱獄を実行し、逃避行する様は、何か前作の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」に続いて、出会い/集う感じがあるし、こうした出会いを通じて、たとえ一時的とは云っても、仲間が出来るアメリカという国、更に、僕達の住むこの世界を、ジム・ジャームッシュは、良し悪しではなく好きなのだろうなと想像してしまう。
また、こうした脱獄劇に、ありがちな復讐劇などないのも、何かジム・ジャームッシュらしい。
そして、三者三様の旅。
ずっと一緒でいる必要なんてない。
道は一つではない。
また、違う出会いがある。
ジム・ジャームッシュは、それが、僕達の住む世界のありようだと言っているようが気がする。
ジム・ジャームッシュは再び肯定して見せたのだ。
人生はリンボーダンス?
社会の枠にははまらない癖のある3人のコミカルな映画。うーん懐かしい。自由奔放でそれでもプライドは人一倍。それを逆手に取られ悪夢のような刑務所生活。彼らのやる事は客観的に観ても滑稽な事ばかり。でも、人生ってそもそも滑稽なのかも・・。人生なんてこんなもんだよ〜なんて世の中を嘲笑ってはいかがですか?秀作ですぞ!
ロベルトの面白さで持ってる
イタリア人のロベルトが登場すると彼中心で話が展開するようになり、キャラクターとしても立っているのでザックとジャックの影が薄く感じた。ロベルトはいいキャラクターだと思ったけれどザックとジャックからは魅力を感じなかった。
どうもこの監督のだらだらやる良さというのは自分にはわからない。
【ジム・ジャームッシュ監督のゆるーい、魅力的ワールド全開。”アイスクリーム!ユースクリーム!”は流行ったなあ。】
1.画は前作、”ストレンジャー・パラダイス”に続いてモノクロ。
2.登場人物も相変わらず少ない。
・ジャック(ジョン・ルーリー)ポン引きで嵌められて逮捕
・ザック(トム・ウェイツ:オオ!)DJ で嵌められて逮捕
二人は同じ牢に入れられるが、噛み合わない。険悪な雰囲気。
そこに、陽気なイタリア人ロベルト(ロベルト・ベニーニ)が新たに加わり・・。牢の雰囲気は徐々に変わり、あの3人で歌う”アイ・スクリーム!ユー・スクリーム!ウイオールスクリーム!”の名場面に。
3人が牢を脱獄して、森や沼地を彷徨うシーン。
そして、道沿いに奇跡的にあったカフェで食事をするうちに、ロベルトと女主人ニコレッタは良い仲になるが・・・。
相変わらず、ジャックとザックは合わない・・、と思ったら二股に分かれる道での二人の行動・・。
個人的に、とても好きなのである。このゆるーい世界観が・・。
<前作に引き続き、ジム・ジャームッシュワールドが堪能できる作品。今作では、トム・ウェイツ、ロベルト・ベニーニが新たにメインキャストに加わり、ジム・ジャームッシュワールドの面白さは継続された作品でもある。>
"OPP"
≪JIMJARMUSCHRetrospective2021≫
ラスト、互いの上着を交換して別れる二人、トム・ウェイツとジョン・ルーリーの顔合わせが今では奇跡みたいにも思える、ジャームッシュだからこその成せる技。
序盤に二人の生業や捕まる理由を描写し、前二作の雰囲気を残したようなセンスある映像から、刑務所の房のみで過ごす三人の様子を良い意味でダラダラと。
逃亡してから一息付ける小屋が、そんな刑務所で過ごした図と変わらないのが可笑しい。
そこから、逃亡シーンが良い意味でダラダラと続く。
肝心なシーンは一切、見せないジャームッシュの演出描写が潔い位に気持ち良く、他の監督だったら御都合主義と文句も吐きそうだが!?
脱獄モノってエンターテーメントに成り得るジャンルを、基本的に何も起こらない物語としてブレない手腕を発揮するジャームッシュらしさが堪らない。
I scream, You scream, We all scream for ice cream
ロベルトベニーニだったか。ライフイズビューティフルの印象が強いが、ここでも存在感を発揮。唐突に3人が歌い出すシーンがとても印象的。
互いに知らぬ2人が出会い、転がりあって喧嘩をして、微かな成長を経て、そして別々の道を歩む。再び会うことはないだろうが、人生を振り返れば、最も重要な瞬間、名もなき男の人生の刹那を切り取ったカット。だから愛おしく切ない。
美しいモノクロ映像に詩的なストーリーが実によく合う。
嵌められて投獄された男2人の奇妙な友情物語。この2人仲がいいのか悪...
嵌められて投獄された男2人の奇妙な友情物語。この2人仲がいいのか悪いのかさっぱりわかりません。でもそこが面白い。
そこに後から加わる陽気なイタリア人。こいつがいい味出してます。
そして脱獄、逃避行。このロードムービー、面白過ぎます。
最後は女神登場。そなアホな!その先もずっと見たくなるようなエンディングも良かった。
このモノクロ映像、とても美しいです。
いつも詩が流れている
ジム・ジャームッシュの映画を観ると、いつもそこに詩を感じます。なんというか、登場人物みんなが詩を生きているように感じて、そのリズムに浸っていたくなるというかね。圧倒的に心地よいんですよ、それが。
私、オープニングからもう夢中でした。家々を移動撮影で映し続けるだけで、もう一発でジム・ジャームッシュを感じますし、その瞬間だけで、あぁ、観て良かったって思ってました。始まって15秒ぐらいで観て良かったって思ってました。私の場合、こういう体験って他の映画ではなかなかないので、やっぱりジャームッシュは貴重な存在だなって感じちゃいますね。
存在に感謝です、ジム・ジャームッシュ!
ジャームッシュ監督はもういい
総合45点 ( ストーリー:30点|キャスト:65点|演出:30点|ビジュアル:60点|音楽:60点 )
ジム・ジャームッシュ監督の作品「パーマネントバケーション」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「コーヒー&シガレット」をこの数か月で立て続けに見てみた。だが彼の特徴として、どの作品も雰囲気重視で物語が薄っぺらで行き当たりばったり。ひたすらありきたりの会話やそこから想像される人間関係だけが描写される。
この作品も同様で、偶然会った登場人物たちが刑務所暮らしや逃亡生活の中、会話をしたりしながら人間関係の描写をすることが中心となっている。一応逃亡劇はあるものの、やはりかなりいい加減。自分は一連のこの薄い物語性にあまり面白みを見出すことが出来なかった。まるでジャームッシュ監督は、しっかりとした物語を使って映画を撮れば微妙な人間関係の描写は出来ないし、その描写こそ映画の核心とでも思っているかのよう。彼の作品はこれらで十分、たぶんもう見ません。
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