「禁じ手を使っているけど、ネタのあるシリーズ第四弾。」インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国 kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
禁じ手を使っているけど、ネタのあるシリーズ第四弾。
2008年6月下旬に鑑賞。“新宿プラザ劇場”で観た最後の作品。
ジョージ・ルーカス製作・原案、スティーヴン・スピルバーグの監督、主演のハリソン・フォードによる奇跡の黄金トリオで成り立つ映画史に残り続ける冒険ファンタジー活劇『インディ・ジョーンズ』シリーズ。そのなかの最後の作品『最後の聖戦』から19年の月日を経て、復活を遂げたのが本作『クリスタル・スカルの王国』で、劇場で味わえる初の“インディ・ジョーンズ”となったので、興味を持って、観に行きました。
米ソ冷戦時代の1957年、ソ連の諜報員のイレーナ(ケイト・ブランシェット)によって、ネヴァダ州にある極秘施設へ連れてこられたインディ(ハリソン・フォード)は宇宙の神秘を紐解く秘宝“クリスタル・スカル”の発見の為に協力することを強制されるが、それを拒んだ事で、危機的状況に陥り、一旦、逃げることには成功するも、捜査機関に追われる事にもなり、大学での仕事も失い欠けてしまう(あらすじ)。
そんなに大好きなシリーズではありませんが、『スター・ウォーズ』のルーカスフィルムの作品だけに観る回数は多く、『レイダース』での転がる岩に主人公が追われたり、『魔球の伝説』のトロッコ・チェイス(スーパーファミコン世代なので“スーパー・ドンキーコング”をプレイしたくなるシーン)、『最後の聖戦』の聖杯を選び間違えた悪党が水を飲んで、一瞬でミイラ化するシーンなど、強烈で忘れられないところが多かったので、思い入れが強いといった事は無く、好きでも、嫌いでも無く、気軽に観て、楽しんでいたので、本作も過去作と同様に観られました。
『スター・ウォーズ 新三部作』を大いに楽しんだので、19年ぶりに製作された本作に関しては、「何で、今になって」といった疑問を抱く事はなく、主演のハリソン・フォードは「インディを演じるのは厳しいか」と思いながらも、この頃は本作と同じ時期に還暦直前でロッキーとランボーを演じたシルヴェスター・スタローンのように老体に鞭打って、当たり役にカムバックする事が増えていたので、老けたのは間違いありませんが、見事な熱演を見せていて、円熟味が増したインディのキャラに説得力を持たせた脚本とフォードのキャリアの影響が活きていた為に、本作での頑張りぶりを褒め称えたいと思えたほど、良かったです。
本シリーズはアドヴェンチャー作品に大きな影響を与え、『ハムナプトラ』や『トゥームレイダー』、『ナショナル・トレジャー』といった大作から、DVDスルーのマイナーな作品にまで浸透していたので、本作のハードルは大きかった筈ですが、それを感じさせないほど、話が練られていて、まだ話のネタがあった事に驚き、事前の予想を大きく良い意味で裏切る展開のオンパレードだったので、少々強引なオチの付け方があっても、そこに不満は無く、逆に「もうこれ以上の続編は作られないんじゃないか」と思わせるほど、禁じ手に近いものを用いているので、19年ぶりの新作でありながら、同時に最終作のような印象(2019年にスピルバーグ監督、ハリソン・フォードの続投で第5弾が作られるのが決まっているようですが、この印象を覆せるネタがあるのかどうか)を持たせていて、エンドロールを迎えるときには、ちょっぴり淋しい気持ちになり、より、見事な終わり方だったと思います。
私が本作で最も感心したのは、過去作と同様に荒唐無稽な要素を引き継いでいたところで、大学の構内で行われるチェイス・シーンでマット(シャイア・ラブーフ)が運転するオートバイが1957年仕様では無かったり、中盤の戦車同士のチェイスの途中にマットがターザンをしたり、序盤の脱出シーンで出てくる超高速で動く乗り物のシーン(“ターミナル・ベロシティ”を思い出させる)が楽しかったりと製作された2008年の時代には相応しく無い(この頃からシリアスな作風が流行り始めただけに)要素でしたが、時代の主流に影響されずに、この要素を徹底的に盛り込み、B級の娯楽エンタメ大作として、それを貫いたのは娯楽作品が好きな自分にとっては好印象で、公開当時に批判の大きかった“核爆発を冷蔵庫に隠れて、やり過ごす”シーンも過去作を踏まえると、当たり前と言えて、そこまで批判する理由は無い(“ブロークン・アロー”や“トータル・フィアーズ”など、本作以前の作品で核兵器の扱いが雑な作品はありましたし、“ターミネーター3”のように高速道路のど真ん中で水素電池が爆発して、キノコ雲が発生するシーンがある作品などが殆ど批判されなかったので)と思いながら観ていました。逆にこういう描写が批判されるほど、熱烈に愛されるシリーズ(恐らく、悲しい気持ちになった人が多かったのでしょう)というのを再認識しました。
出演者とキャラクターも、それぞれが魅力的で印象に残りました。先日、惜しくもこの世を去ったジョン・ハートが頭の可笑しな役を好演し、『エイリアン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』など、常に忘れられないキャラを演じてきた俳優だけに、本作でも新たな印象を刻み込み、そんなに大きな役ではないけれど、その姿を見られて良かったです。悪役のケイト・ブランシェットもハマっていて、その存在感が大きすぎるために、彼女の部下の軍人キャラの殆どが空気に等しくなっているほどですが、悪役として申し分無く、キャラの設定の面白さも手伝い、彼女の出ないシーンが僅かながらに退屈したほど、素敵なキャラとなっていました。『レイダース』以来の登場となるカレン・アレンの老けっぷりには非常に驚き、女優活動は続けていても、スクリーンで目にする機会が無かったので、まるっきり別人のように見え、時代の経過を大きく実感する出演者(本作のカレン・アレンと比べると“スター・ウォーズ/フォースの覚醒”のキャリー・フィッシャーは良い年の取り方をしているのではと思うことが)と言えます。
ジョン・ウィリアムズの音楽が印象に残らなかったり、当時はスピルバーグの秘蔵っ子としてゴリ押し街道まっしぐらだったシャイア・ラブーフがインディの相棒(マットの正体も想像通りで捻りが足りなかったのは何だかなとは思います。しかし、“トランスフォーマー”の主人公役よりはキャラが魅力的だったのは好印象)としては弱かったり、底無し沼にはまるシーンが若干退屈したりとマイナスな部分もありますが、全体的に面白かったので、満足しました。たまに観たくなる一作です。