シャンドライの恋 : 映画評論・批評
2000年1月15日更新
2000年2月5日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー
ベルトルッチの“初心に返った”珠玉作
ここ数年の手持ちカメラの発達は、映画と観客の関係を劇的に変えている。固定のカメラある一定の距離から物語を撮影することは、観客に映画を第三者的な目線で見つめさせること他ならない。ところが、手持ちカメラは観客にあたかも劇中の登場人物かのような主観的な目線をもたらす。
と、わかったようなことをかいているが、要はベルナルド・ベルトルッチの新作「シャンドライの恋」は巨匠が始めて手持ちカメラを導入した作品であり(と本人が明言している。彼はこの作品を作るにあたって、王家衛に影響を受けたと話しているが、さもありなん、王の映像は登場人物の生理に従って常に動いている)、常に観客に主観であれとアジテーションしてくる作品だ、といいたいのだ。
だから今作は客観視するほど感動から遠ざかる。主人公のシャンドライは冒頭、アフリカにいるが、次の瞬間にはローマで医学の勉強をしている。中盤には使用人として住み込む屋敷の主、英国人ピアニストに突然、愛の告白をされる。そこにはなぜ、と説明する描写 はない。異邦の地で暮らす男と女の心の揺れをただひたすら観客に体感させるような作りなのだから、感情移入した方が勝ちなのだ。
(金原由佳)