劇場公開日 2000年3月25日

救命士 : 映画評論・批評

2000年3月15日更新

2000年3月25日より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー

ニューヨークの深い闇にのまれゆく男、彼に救いはあるか?

マーティン・スコセッシの「救命士」は、90年代初頭のNYヘルズキッチンを舞台に、夜の人々の命を守るため奔走する、救命士フランク・ピアース(ニコラス・ケイジ)の3日間を描く。脚本は「タクシードライバー」のポール・シュレイダー。街娼、ジャンキー、浮浪者、自殺志願者などがうごめく眠らない街の「闇」をあばき出す、夜の物語だ。

オープニングから、スコセッシ作品らしい「映画的快感」が充満している。マンホールから湯気が立ちのぼり闇の中を救急車が疾走する。サイレンがけたたましく鳴り、ネオンサインがフロントガラスに反射しチラチラと通 り過ぎる。流れるのはヴァン・モリソンの「T. B. Sheets」だ。名手ロバート・リチャードソンのキャメラがとらえる、夜のマンハッタンがウットリするばかりに美しいのだ! ジョン・グッドマン、ヴィング・レイムスらがコミックリリーフとして登場、笑いを誘う。そしてこの夜の物語は、パトリシア・アークエット(生死を彷徨う患者の娘役)が神経症をひどくさせる主人公に「昼の光」を与え(「タクシードライバー」のシビル・シェパードのように)、やさしくしめくくられる。

これはスコセッシが描く「夜」へのラヴレターだ。現代のフィルムノワールだ。その上質なフィルムの肌触りに、息を飲むしかない。

(佐藤睦雄)

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