劇場公開日 2000年3月25日

「【”10年疎遠だった病に倒れた兄を訪ねて時速8キロのトラクターにて、500キロを歩む。”デヴィッド・リンチ監督の盟友アンジェロ・パダラメンティのリリカルな音楽もこのロードムービーの趣を高めています。】」ストレイト・ストーリー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”10年疎遠だった病に倒れた兄を訪ねて時速8キロのトラクターにて、500キロを歩む。”デヴィッド・リンチ監督の盟友アンジェロ・パダラメンティのリリカルな音楽もこのロードムービーの趣を高めています。】

2022年4月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

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ー アイオワ州の小さな町で暮らしている73歳の老人、アルヴィン・ストレイト。
  ある雷雨の夜、10年仲違いしていた兄・ライル・ストレイトが倒れたという知らせが届く。
  彼は兄に会うため、時速わずか8kmの芝刈り機に乗り、500キロ離れたウィスコンシン州、マウント・ザイオンに向かう旅に出る。芝刈り機に乗って・・。-

◆感想 <Caution! 内容に触れています。>

■私は、ロードムービーが大好きである。
 - 今作でもアルヴィン・ストレイトが、兄の住む家に向かってトラクターを走らせている時に出会う様々な人々。多くは善性溢れた人間である。ー

  ・壊れたトラクターを修理する人々(とにかく、オンボロだから頻繁に壊れる。)の優しき対応。

  ・仕事に急いでいる女性の車が鹿にぶつかって、金切り声を上げている際にも、アルヴィン・ストレイトは”やれやれ、鹿を殺してしまったのだぞ・・”と言う表情で女性を見ている。そして、彼は鹿の角をトラクターに連結した荷台に飾る。

  ・妊娠五か月の若き女性との出会い。最初は彼女はトラクターの余りの歩みの遅さに
ヒッチハイクの親指を立てもしないが、夜アルヴィン・ストレイトの野宿に誘われ、ソーセージを振舞われる。そして、アルヴィンは焚火の前で、彼女に言う。
 ”成程、君の両親は怒るだろうね。けれども、君や赤ちゃんを失っても良いと思う程には怒らないよ・・。”そして、日本で言う”毛利家の三本の矢”と同じ話を彼女にするのである。

  ・車を飛ばせば、2時間程、いや3時間かな・・、の距離をトラクターで進むアルヴィン・ストレイト。途中、心配していた娘ローズに電話を掛けるシーンも彼の紳士的な態度が見て取れる。借りた電話に対し、キチンとお金を置いて去るのである。
  そして、”乗せて行こうか・・”と言う親切な申し出にもやんわりと、”有難う、でも自分で行くよ・・”と答える。
  私は、きっとアルヴィン・ストレイトは10年以上も前に些細な事で仲違いした兄に行く心構えをしているんだろうな・・、と思ったシーンである。

  ・第二次世界大戦で、心の傷を負った老人と、バーで交わす会話も滋味深い。

  ・そして、漸く着いた兄ライルの質素な家。”ライル!”と声を掛けると、待ちわびていたように、老いたライルが家の中から出てくる。
  その表情には、蟠りは何もない・・。

<デヴィッド・リンチ監督作品はどれも好きだが、実話ベースのこのロード・ムービーも忘れ難い。私の好きなロードムービーの100本強の中の一作である。>

NOBU