ヒマラヤ杉に降る雪のレビュー・感想・評価
全3件を表示
日系アメリカ人の差別を描く貴重な作品
1954年にアメリカ西海岸の離島で起こった殺人事件の法廷劇と当時の日系人差別の人道主義を扱った問題作。戦争で引き裂かれたイーサン・ホークと工藤夕貴の過去と現在が裁判の行方に影響する。主題も作品の姿勢も正義感溢れ、アメリカ映画らしいヒューマニズムが描かれる。ただアップサイズのカメラアングルが多く、サスペンス効果は上げているも場面説明不足で説得力のない映画になってしまった。弁護士役のマックス・フォン・シドーの深みのある演技がいい。ホークと工藤も地味に好演。
それでも、作者のスコット・ヒックスに批判はない。戦中の日系人強制収容を省みる白人がいることを知ったことは大きい。本来ならアメリカ人監督に制作してもらいたかったが。
映画が果たすべき公平な史観に立った作品は、永遠に求められる。第442連隊戦闘団など、まだまだ題材は幾らでもある。
日本人が被告となる法廷映画。
使っていたバッテリーが同じ。傷のつき方が剣道をやっている者特有のもの。日本人が土地をもってはいけなかった戦時中に被害者の親から土地を買った小作のミヤモトの父。それが諍いの元になったと被害者の母親が証言する。
イーサン・ホークと工藤夕貴の回想のシーンがかなりメインとなり、恋人同士だった幼き時代(少女時代は鈴木杏)、真珠湾攻撃を機に日本人への迫害が始まった映像が映し出される。結局は、愛してるのに身を引いた工藤。彼女への切ない想いとともに真実を明らかにしようとするジャーナリスト魂によって希望が見えてくる。
日本人に対する偏見が陪審員にどれだけ影響するのかと期待して観ていたら、陪審員の任を解き裁判官の裁量にまかせられる結果に・・・そして無罪。幕切れはあっけなかったけど、途中の工藤夕貴の証言が痛々しかった。「法廷が真実を追究するとは限らない・・・」。法廷ものよりも恋愛部分のウェイトが高く、感動には至らず・・・
偶然がこの世を支配する
映画「ヒマラヤ杉に降る雪」(スコット・ヒックス監督)から。
女優・工藤夕貴さんが流暢な英語を話し、
準主役としてハリウッド進出をしたと話題になった作品。
全体的には、静かな映画だった。
アメリカ人少年イシュマエルと日系人の少女ハツエの恋愛を中心に、
思わぬ破局と、偶然の再会を果たす。
あるシーン、裁判官がこう呟く。「偶然がこの世を支配する」
そしてこの台詞のあと「支配されないのは人間の心だけだろう」と続ける。
今の世の中、何でもかんでも、他人に管理や支配されがちだけれど、
人間の心だけは誰にも支配されないという信念が、私の感性に引っかかった。
いや、人間の心は、とてつもなく広いことを、改めて感じさせられた。
そういえば「雲より広い空、その空より広いのは人間の心」というような
さだまさしさんの歌「HAPPY BIRTHDAY」を思い出した。
全3件を表示