アイアン・ジャイアント : 映画評論・批評
2000年3月29日更新
2000年4月15日よりワーナー・マイカル・シネマズにてロードショー
少年の心を忘れた大人たちへの贈り物
少年と巨大ロボットものでとにかく泣けるらしいという噂は早くから伝わってきていた。で、実際に観てみると本当にぼろぼろと泣けた。映画自体には何の仕掛けも新鮮さもなく、こういう奴なんだろうなというキャラ&ロボが、こうなるんだろうなという話を展開させていく。オチも簡単に読める。でもなぜそれが、♪僕の心のやらかい場所をいまでもまだしめつけるぅ~、のか?
それで気がついた。この話を「トイ・ストーリー2」のように最新CGで描いていたら、あるいはアイアン・ジャイアントが何かにクリソツと思うように宮崎アニメのように描いていたら。感想は「なんかよくある話だね」で終わりだったかもしれない。映画が始まって最初に思うのは、なんでいまどきこんな古めかしい絵柄なんだ?ということである。まるで舞台となる1957年当時にでも作られたアニメなのか?と錯覚してしまう。
たぶんそれが狙いだったんだと思う。ありきたりで、でも感動できる話をストレートに提示するのではなく、まるで「古き良きアニメ」を観ているような気分にさせること。だから大人になってひねくれた元少年たちも素直な気持ちで受け入れ、最近すっかり忘れていた涙をぼろぼろと流したのだ、きっと。
(松久淳)