サイダーハウス・ルールのレビュー・感想・評価
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自身の世界を切り開く勇気。
ある孤児の物語、良薬口に苦し
不幸な境遇の子供たちを見るのは辛い、孤児院の設定に加え堕胎や近親相姦、恋人の裏切り、法の欺瞞性など愚かな人間社会の陰の現実を淡々とあぶりだして見せる。ラーチ院長(マイケル・ケイ)は孤児に人生をささげた無類の仁徳者である反面、世情のルールにあいそを尽かした現実主義者、孤児院しか知らないで育ったホーマ(トビーマグワイア)が垣間見た世間というものは束の間の白日夢だったのだろうか、2度も里子から出戻ったホーマーは今度は自分の意思で孤児院へ戻ってゆく。
矛盾だらけなのが人の生き方であることも事実、人間をどの視点から描くかによりヒューマン・ドラマでもこうも差がでるのかと感心しながら観た。鈍感なのか純粋なのか主人公の生き方に胸打たれながらも危うさを禁じ得ない。メッセージ性は強いが映画は一つの例示であって答えではない、製作陣は若者たちに人生と言うものを見つめ直してもらいたいと願ってあえて辛口の物語を創ったのであろう。感想としては良薬口に苦しである。
とてもよかった
施設育ちということで里親映画に分類できるけど、親子としての関係が薄い。おじいさん先生がお父さん代りだけど、子供が多い。愛着も薄いのではないだろうけど、そんな環境にもめげず主人公は立派に育った。「いるなら役に立て」という教育方針がよかったのだろうか。しかしそもそもこの映画には愛着障害が存在しないので、そんな視点が欠如していただけかもしれない。
血縁のない施設暮らしの一方で、黒人親子の近親相姦による妊娠という濃すぎる血が描かれていた。
無資格で医者をさせたり、友達の恋人を寝とったり、挙句に近親相姦まで描かれ、アウトローな側面が強かった。人生や社会はきれいごとでは済まない。
主人公は童貞なのに散々性器や出産に触れてきているため全く童貞らしさがなかった。達人の風格があった。
舞台出身の英国俳優にしびれる
本編は3回繰り返して見ましたが、巻末のボーナストラック「メイキング」は4回繰り返しました。
ネタバレになりますから書きませんが、出演者のミスターローズが「世のルール」についてずっしりと語ります。
静かだけれど圧巻の映画でした。
そしてラーチ院長役のマイケル・ケインが良いなぁ。
スクリーンの中に異彩を放つ役者を見つけると僕はプロフィールをググるのですが英国の舞台俳優出身であることのなんと多いことか。
孤児院の子どもたちに"誇り高き紳士淑女たれ"と語るあの毎晩の呼びかけが、いつか別れを迎える子どもたちへの最大の贈り物だ。
良質なプライドを身に負った人間は、自己と他者への尊敬を泉のように所有する。
そして彼らはくじけない。
内と外の境界線
文学作品において「孤児院」が登場する作品は、時代こそ違えど多々ある。「孤児院」を一口に語ることはできないが、『ジェーン・エア』や『オリバー・ツイスト』に出てきた孤児院は冷たく閉ざされたような印象だったが、この『サイダーハウス・ルール』の孤児院はそれらとは対比的で、慈愛に満ちた温もりのある場所として描かれていたように思う。実際、映像にも色で表現されていましたし。そんな場所で育ったホーマーが、外の世界へ行く。そこには人間の温かい部分だけでなく、冷たい部分・感情との対峙があった。キャンディとホーマーの関係は、戦争というバックグラウンドを従えつつ複雑に絡み合う。恋人が出兵し、無事で帰ってくると心の底では思っていても、寂しさを拭えないキャンディに初めて恋をしたホーマーが、潔く諦める姿はどこか切ない。この映画を見ていて、私自身の内と外の境界線はどこだろうと考えさせられた。果たして今の職場は内なのか、それとも県外に出たら外なのか。具体的な境界線なんてそもそもないのか。新しい世界へ飛び出すには勇気も必要だが、知らず知らずのうちにできている「ルール」を思い切って破ってみることも必要なのだろうと思った。ホーマーもローズ・ローズも、ある意味絶対的な存在だった父を振り切って飛び出して行ったのだから。自分のルールは自分で決めればよいのだ。この映画、天候が印象的だった。悲劇的なシーンでは雨が降っていたりして。
コンフォート・ゾーンを出ること
ホーマーはある日突然、生まれ育って慣れ親しんだ孤児院から
出て行ってしまいます。
なぜ、求めてくれる人たちのいる場所を捨てて、あえて先の
見えない道を?と、昔映画館で観た時は理解できませんでした。
しかし、結局わたしも、ぬくぬくとしたOL生活を捨てて、何度か
外に出ることになりました。
それを経験して再度観直すと、初回の印象とは全く別物。
共感する所非常に多し!
自分の経験でもありますが、出てみたいと思ったら出た方がいい。
出ないかぎり決して経験できないことが、世界中にはありすぎるのです。
医者として育てられてきたホーマーが、まさか黒人たちとりんごを
もいで、挙げ句、ひとりの黒人少女の命を救うことになるとは?
生まれて初めての海を見て、恋におちて、諦めて、結局最後には
孤児院に戻ることになりましたが、そのホーマーは明らかに、
出て行く前のホーマーとは別人のように成長したホーマーです。
彼のこの後の人生はどうなるのだろう?
このまま孤児院で一生を送るのか、またどこかへ旅立つのか?
なんとなく、ラストシーンであれこれ想像しました。
ほっこり
シリアスな題材だが一般受けする作り
なんでもない場面を何度でも
なんでもない場面を何度でも見返したくなる、そんな映画に出会えてよかった
今日行った古書店でジョンアーヴィングのサイダーハウス・ルールが売っていた。
かねてから英語の勉強のため、洋書を原書で読もうとは思っていた。おそらく5年程前から。ここのところまとまった時間がとれるようになったので古書店に洋書を求めて行った。そこでサイダーハウス・ルールに出会った。名前は知っていた、村上春樹の訳すアーヴィングなら読んだことがあった、観てみたい映画でもあった、でも買いはしなかった。とりあえず映画を観て筋をわかってからにしようと
そして観た。人の優しい面だけを、他人へのいたわりと、隣人への愛だけを、映した映画。人だけでなく描かれる風景も皆、美しい
ラスト15分で胸が熱くなる
音楽と子どもの笑顔
ウォリーの戦争による怪我でキャンディがウォリーのことをまた思ったり、ラーチ先生の死でフォーマーが孤児院に戻ったり少し自分の気持ちに気づくのが遅いのではないかと思った。
フォーマーとキャンディ、ミスターローズの話は映画を見ていて良い気持ちにはならなかったけど、反面教師の意味でこの話は必要だったのかと思う。
フォーマーが孤児院に帰った時の子どもたちの純粋な笑顔と音楽ですごく感動した。
閉鎖社会を出て知る自分の居場所
総合80点 ( ストーリー:75点|キャスト:85点|演出:85点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
文学作品が原作だそうで、そのためか話に透明感があってとても瑞々しい。「グッド・ウィル・ハンティング」に雰囲気と話は共通点がある。
実際は季節労働者として林檎摘みをしているだけなのでそれほどたいしたことをしているわけでもないし、外の世界の体験はこれだけなのかと思ってしまうのだが、非常に閉鎖された特殊な場所で育ちそこから飛び出して主人公が会う人も体験することも全てが新鮮に感じる。撮影もいいしそれを演じる出演者の演技もいいし、全体に演出の質感が良い。
その後ただのどかな農場での美しい体験だけでは終わらず、裏側にある人々の愛憎劇が炙り出されるのは「天国の日々」にも似ている。結末は出来すぎな部分もあるが、主人公が生き甲斐と自分の人生の行き着く場所を理解していく過程が純粋に描かれていて評価できる。「グッド・ウィル・ハンティング」「天国の日々」が好きな人には本作も好きになるのではないか。
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