「内と外の境界線」サイダーハウス・ルール Kremlin Dawnさんの映画レビュー(感想・評価)
内と外の境界線
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文学作品において「孤児院」が登場する作品は、時代こそ違えど多々ある。「孤児院」を一口に語ることはできないが、『ジェーン・エア』や『オリバー・ツイスト』に出てきた孤児院は冷たく閉ざされたような印象だったが、この『サイダーハウス・ルール』の孤児院はそれらとは対比的で、慈愛に満ちた温もりのある場所として描かれていたように思う。実際、映像にも色で表現されていましたし。そんな場所で育ったホーマーが、外の世界へ行く。そこには人間の温かい部分だけでなく、冷たい部分・感情との対峙があった。キャンディとホーマーの関係は、戦争というバックグラウンドを従えつつ複雑に絡み合う。恋人が出兵し、無事で帰ってくると心の底では思っていても、寂しさを拭えないキャンディに初めて恋をしたホーマーが、潔く諦める姿はどこか切ない。この映画を見ていて、私自身の内と外の境界線はどこだろうと考えさせられた。果たして今の職場は内なのか、それとも県外に出たら外なのか。具体的な境界線なんてそもそもないのか。新しい世界へ飛び出すには勇気も必要だが、知らず知らずのうちにできている「ルール」を思い切って破ってみることも必要なのだろうと思った。ホーマーもローズ・ローズも、ある意味絶対的な存在だった父を振り切って飛び出して行ったのだから。自分のルールは自分で決めればよいのだ。この映画、天候が印象的だった。悲劇的なシーンでは雨が降っていたりして。
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