白い花びら : 映画評論・批評
2000年6月15日更新
2000年6月24日よりユーロスペースほかにてロードショー
カウリスマキ・弟、古典メロドラマを“無声”で再現
アキ・カウリスマキの映画が、どれも「悲惨なんだけど、妙におかしい」のはなぜでしょうか。「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」でも「マッチ工場の少女」でも、ワケのわかんない格好をした無骨な男たちや、笑っちゃうくらい人生のドツボに陥ったりする女の子を眺めながら、われわれは「ここまでする?」なんて突っ込みを入れて、彼らを嘲笑する。そして同時に、妙に救われたような気持ちになる。何というか、今時珍しい“ボケ”てくれる映画なんですね。
サイレント仕立ての最新作「白い花びら」もまた、実にいい“ボケ”味が楽しめる佳作です。田舎者の夫婦が都会の伊達男に誘惑され、悲劇的結末を迎えるという筋立ては、サイレントにぴったりの単純なメロドラマ。まあ、サイレントという手法自体が、カウリスマキの場合、“ボケ”なんですね。いかつい夫婦が手を取り合い飛び跳ねて、“幸福”を表現するシーンあたりでは、「ここまでする?」と突っ込みたくなるでしょう。でもパロディにしないところが、この人の品格。誘惑されるカティ・オウティネンのむっつり顔を見守っていると、やはりありきたりな物語を生きている、自分自身の人生さえも許される気がするから不思議です。
(日下部行洋)