「【葉隠/ハードボイルド/藪の中】」ゴースト・ドッグ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【葉隠/ハードボイルド/藪の中】
日本的精神性をベースに、ハードボイルドを組み合わせたユニークな作品だ。
単純だけど面白い。
作品を通して引用される「葉隠」の最も有名なフレーズ
「武士道と云うは死ぬ事と見つけたり」は、
最後まで生きるという選択肢を最も重要としながらも、武士として生き恥をさらさないように死を覚悟することが重要だと説き、更に、「見つけたり」は、その判断のタイミングの妙を示しているのだ。
太平洋戦争で、特攻を肯定するために大本営などが解釈した意味とは違うのだ。
そして、武士道とは家臣の道だ。
この「ゴースト・ドッグ」には、少女が「羅生門」の感想を聞かれた時に、「藪の中」が一番面白かったと答える場面がある。
映画「羅生門」も基本は「藪の中」の物語で構成されているのだが、実は、人によって、一つの物事に対する解釈/見方が異なるという点で、この映画に登場するゴースト・ドッグを含めた主要な人物を否定するのではなく、様々な見方があって良いのだと示唆しているのだ思う。
ジム・ジャームッシュの肯定感だ。
また、殺し屋・ゴースト・ドッグの名前も、アメリカン・インディアンの名前の付け方のようだと表現されるところがあって、アニミズムを背景にした日本文化と通ずるところを、ここにも残したのだと思うし、これはビルとインディアンのノーボディとの交流の旅を描いた「デッドマン」から引き続いだアイディアだったのだろうか。
そして、ゴースト・ドッグの背景が語られないが、ハードボイルドならではのポイントだ。
最近、200巻を超えたゴルゴ13の作者さいとうたかおさんが、最後までゴルゴ13の正体は明かさないとしていたが、これ重要なことだ。
ゴースト・ドックについては、過去に命を救われたということが全てなのだ。
そして、その恩義で生きているのだ。
ジム・ジャームッシュは、単純な身分の「属性」ではなく、これこそが武士道なのではないかと言っているのだ。ネトウヨなんかより日本の精神性を100倍分かっている。
派手なアクションではなく、忍び寄る忍者のような殺しのテクニック、そして、殺られる瞬間に、殺られることを理解させるような演出も良い。 殺られる方にも覚悟が必要なのだ。
鳩を使った超アナログな連絡方法もナイスだし、ゴースト・ドッグが最初に乗るレクサスは、日本では二代目のアリストで、僕もしばらく乗っていました。
だから加点しました。すみません。