ハイロー・カントリー : 映画評論・批評
1999年11月29日更新
1999年11月27日よりシネマライズほかにてロードショー
ウディ・ハレルソン過去最高のハマリ役!
製作者マーティン・スコセッシと監督スティーブン・フリアーズは、脚本家ウォロン・グリーンの向こうにサム・ペキンパーの幻を見ていたに違いない。グリーンはペキンパーの最高傑作「ワイルド・バンチ」の脚本を書いた男だからである。だが、チビのニューヨーカーとホモのイギリス人にはペキンパーの世界はあまりに遠い。映画マニアである二人にとっては夢の企画だったのかもしれない。だが、西部に踏み入ったことのない人間が作る西部劇とは……
それは第二次大戦のあと、小規模な家族農場が企業経営の大農場に駆逐され、最後のフロンティアが消えていった時代のことだ。まさしくペキンパー流に物語は失われゆく西部を悼む。主人公のビリー・クラダップは兄代わりの“ビッグ・ボーイ”ことウディ・ハレルソンとともに農場をはじめるが、二人の前に黒髪の女が現れたとき、すべてが暗転する。
もちろん、この映画にも本物がある。グリーンの脚本は世界の雄大さと男たちの愚かしさを充分に描いている。一方ウディ・ハレルソンはこれぞナチュラル・ボーン牧童という存在感だ。ひょっとしてハレルソンは名優への道を歩みつつあるのだろうか? なんてね。
(柳下毅一郎)