海の上のピアニストのレビュー・感想・評価
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世界の大きさ
この映画を配信で観て、劇場で観なかったことを後悔した。
劇場で観ていたら、まず音の違いで印象が変わっていただろうと思う。
ジュゼッペ・トルナトーレ×エンニオ・モリコーネ。
どうしても、ニュー・シネマ・パラダイスのことが頭にチラつく。
過去の栄光への郷愁、その栄光の象徴の破壊(爆破)、残された小さな記録。
2つの映画には共通点があるように思えてならない。同じ要素を違うストーリーで撮った映画のように思った。あくまで個人的な解釈だけど。
1900は、「陸には終わりがない」と言った。
彼が実感できる世界の広さは、客船の広さでしかない。乗客から世界中の話を聞いても、それは実体験できる世界ではない。
1900は、自分の音楽が、レコードとなって見ず知らずの人々に聞かれるのを拒んだ。
彼の音楽は、自分が奏でるピアノを聞く人々の反応を自分で感じられる、せいぜい2000人の範囲を超えない。
1900にとって、世界は自分の手の届く範囲。そうでなければ生きられない。
とても悲しい物語だと思った。
ティム・ロスが少女を観ながらピアノを弾くシーンが印象的。彼の目は少女を追っているが、観ているのは少女ではないように思える。少女に心を奪われて空虚な目をしているのではなく、その目はずっと先の何かを見ている。私にはそう感じられた。
なんとなく、エンディングがしっくりこなかった。どうしてしっくりこなかったのかを表現できなくて、言葉が浮かぶのを数日間待ったけど、何も浮かばなかった。
映画館で観ると印象が変わるのかな、やっぱり。
ピアノ演奏に見惚れてしまう
これも一つの生き様で、彼我に差等はないはず。
88枚の鍵盤に限られるピアノの世界とは違って、その枚数には限りのないこの世の中を生きるには、相応の困難を覚悟はしなければならなかった―。結局は、そういうことでしょうか。
本作のナインティーン・ハンドレットにとっては。
その生き様の是非を巡っては多様な意見がありそうですけれども。
しかし、困難には果敢にチャレンジするのが一つの生き方とするのであれば、それと等価の視点を持って、彼のような生き方も「あり」として、是認されて良いのてはないでしょうか。
ともすれば「頑張れ」「前向きに」「まずは最初の一歩を踏み出せ」と激励され、その激励が却(かえ)って重荷となって、心が折れそうにすらなってしまうことも、この世の中では、あるのではないでしょうか。
本作のナインティーン・ハンドレットのような生き様が共感を呼ぶのも、そういう現実社会へのアンチ・テーゼが含まれている故のことと断言したら、それは評論子の独断というものでしょうか。
ナインティーン・ハンドレットだって、豪華客船の中では乗客(富裕層)の名誉心や欲望といった醜い現実と向き合い、本船が病院船に転用されてからは、死に向かう傷病兵という戦争の苛烈な現実と向かい合っていたわけですから、彼が船を降りなかったことをさして、いわゆる「後ろ向きである」とか、「現実逃避である」との批判は、当たらないのではないかと、評論子は思います。
彼の生き様と、他の生き様との間に、差異を見出すべきではないとも思います。評論子は。
本作は、午前十時の映画祭13の一本として鑑賞したものでした。
観終わって…。
そのシリーズの一本に恥じない、深い共感が残る秀作であったと思います。
評論子は。
ダニー・ブードマン・T.D.レモン・1900
88個の鍵盤が彼の世界
海の上で船と共に人生を全うする
最高レベルのエンタメ映画。でも何を伝えたいのかな?
誰にでも推せるわけではないが、いわゆる午前10時の~の枠はハズレが少ない
今年111本目(合計1,203本目/今月(2024年3月度)29本目)。
(前の作品 「レッドシューズ」、次の作品「12日の殺人」)
1900と呼ばれる主人公と(この映画の主人公を誰に取るかは色々ありそうですが)、その奏でる音楽が論点になる映画です。
古い映画のリバイバル上映なので、どうしても現在(2023~24)の映画と比べると視覚面などはどうしても落ちてしまいますが、いわゆる「午前10時の~」で放映されている映画というのは不朽の名作で、多少確かに「退屈かな」というところはあるはあるとしても、よかった映画です(個人的に音楽を15までやっていた、という事情もあるので)。
今ではVODで課金できたり、ネットフリックス等ほかでは普通に再生できるらしく(4Kかどうかは知らない)、4Kであろうがどうしようがストーリーが変わるわけではなく、あれもこれも書こうとするとネタバレどころの話ではないので薄目に…。
映画「それ自体」としては実際の史実を直接、詳しく参照することはありませんが、この当時(1900年を起点として、その前後の世界史の事情)のことを知っていれば有利かなと思える部分は多々あります(この点で理解はある程度変わる。もちろんこうした事情で復刻上映されているのでパンフレットなどというものはない)。
作品の採点において特に気になる点まで見出せなかったのでフルスコアにしています。
書くまでもないですが、2023~24年の水準でアクション映画を見たいだのホラー映画を見たいだのといった趣旨の映画ではないので注意です(換言すれば、そうした事情で放映されていることから、帰宅すれば気になる点などVODで確認したりすることができるし、比較的「後追い」(後での気になる点のチェック)がしやすい映画ではあります)。
海の上で育ち生涯を終えた男がいるなんて…もはやお伽話。 モリコーネ...
良い奴しか出てこない世界
美しい映画
人生に仮託する航海、航海に仮託する人生
久しぶりに映画らしい映画を観た。筋書きはスッキリ、登場人物のセリフははっきり聞き取れ、無駄な映像的チャレンジはない。ヨルゴス・ランティモスとかアリ・アスターとかばかり観ているとこちらの精神的バランスがおかしくなるからね。たまにはこういう正統派の映画を観なくては。
この監督は「ニュー・シネマ・パラダイス」で映画と人生を並列してみせた。この映画では船と人生、そして音楽が一体になった姿を描く。船と人生っていうと「白鯨」のエイハブ船長とか「海底二万マイル」のネモ船長とかファナティックな話が多いんだけど、この場合は船乗りじゃなくてピアニストなんでね。スマートです。
私は、映画冒頭の乗客がアメリカを発見する(自由の女神を見つける)くだりと、ダニーが子供を拾い「1900」と名付けて育てるあたりがとても好きです。この映画、1900とマックスの交流が主体でその他の船に取り組んでいる人達があまり出てきません。もちろん、イタリア語完全版(170分!)は違うのかもしれないけど。
何と言っても、エンリオ・モリコーネの音楽ですね。先に書いた映画冒頭で集客の一人が自由の女神を見つけて移民たちがアメリカについたんだ、と感激、感動するシーンに高らかにモリコーネのオーケストレーションがかぶさります。
泣きそうになりました。ああ、もうモリコーネもバート・バカラックもいなくなったんだって。
picnic cinemaにて鑑賞
1900のラストの決断がありえないと感じるのは
そもそも生い立ちがありえないから
ありえないが溶け込んで異論が自然と排除されてる完璧な起承転結
ファンタジーとリアルの歯車の噛み合い具合が素晴らしい
1mmでも狂ったら途端に視聴者と作品の距離が空いてしまうような、繊細で精巧に出来た作品
一度も陸に降りたことがない1900
大西洋を巡る豪華客船の中で、
生後間もない赤ん坊が見つかった。
彼は船内のピアノを弾きながら旅していた。
陸の人間は理由を求めすぎると。
ジャズの発明者との対決シーンも
見応えあった。
ピアノの弦でタバコに火を点けて勝利!
そんな彼が一目見た女の子に心を奪われて
弾いた曲が録音されたレコード。
大量生産を拒み、その娘に渡そうと
するが、、、
陸からなら聞こえる"海の声"を求め、
(断ち切れない彼女への想いから人生で初めて)
船を降りようとするが、タラップの途中で
止まり、考え込み、船に戻った。
その後戦争中も船の中にいた1900.
タラップの途中で街を見た時、
見えるものより見えなかったもの。
最後に行き着く場所が分からなかったと。
ピアノの鍵盤は88.
しかし、タラップの下は無数。
船の上で生まれた。
僕は限りある鍵盤で幸せを届ける。
僕は結局存在しない人間だ。
僕は船を降りない。
ダイナマイトで船は爆破してしまう。
古楽器屋にトランペットを売りにきた
コーン吹きが、このストーリーを語り、
ラストは必要だろと渡される構成も◯。
2024.4.6 DVDにて2回目鑑賞.
リアルなファンタジー
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