劇場公開日 2024年9月13日

「どこで二人の歯車が狂ったのか。」シュリ talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0どこで二人の歯車が狂ったのか。

2025年1月28日
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鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
バカな夢を見ていたわ。
別人になれると思ってた。
でも、私は恋人を撃つしかないイ・バンヒ。
中身は、変わらなかったわ。

<映画のことば>
ヒドラをご存じで?
ギリシャ神話の頭が6つある女神です。
一つの体で、異なる人格が6つ。
イ・バンヒとイ・ミョンヒョンは、別の存在です。
この時代のヒドラ。
分断という現実が、彼女をヒドラにしたのです。

情報部員の男と秘密部隊に属するスナイパーの女―。
どちらも築く人間関係には、人一倍に神経を使いそうな立場です。
いわゆる「蜜月」と言われるほど近しい関係でもいけないでしょうし、さりとて孤立していたのでは、目立ちもするでしょうし、必要な情報も入って来ない。

お互いがお互いを想っているからこそ、そしてその想いが深くて真摯なものであるからこそ、それだけ、たとえお互いがお互いの素性に気がついたとしても引き返すことはできない…否、気がついていたとしても前に進む(お互いの関係性を深める)しか途がなった―。

それだけに、二人の苦悩も深刻なものだったことでしょうし、そのことに思いが至ると、観ているこちらも、胸が潰れそうな思いもします。

本作は、シネカノン(破綻するまで優れた映画を世に送り続けた配給会社)の配給作品ということでも、前々から関心のあった一本でした。
その期待にも違(たが)わない、十二分な佳作であったと、評論子は思います。

(追記)
サッカーW杯の開催の南北融和ムードに絡めて、韓国国内で自国の幹部を暗殺(高性能爆弾による爆殺)を企てる北朝鮮軍部の精鋭部隊。
そして、その精鋭部隊の女性スナイパーと、韓国情報部員との悲恋ー。

それまでの韓国映画にはなかった派手なガン・アクションが、公開当時には話題を呼び、韓国映画界も「本作の前」と「本作の後」とで潮流が大きく変わったとも言われているようですけれども。

実際、「スピーディーな展開のアクション映画」「娯楽映画の新境地を拓く」というトレーラーの宣伝文句も、あながち誇大でもないようです。

娯楽作の良作としては楽しめる作品で、その意味では「一時代を画した一本」ではあったのだろうと思います。

(追記)
同じ民族でありながら、たまたま選び取られた政治体制によって、肉親までもが彼我の分断される―。
本当に切ない現実だと思います。
距離的にも遠からぬ隣国に住まう者の一人としても、一日も早い両国の融和・統一が望まれます。

戦争(内戦)が終わると、今度は、政治体制の違いだけではなく、彼我の経済格差が両国間に障壁として立ちはだかる―。

現実の融和・統一には、今すこし時間がかかるのかも切れないとも思います。

<映画のことば>
呑気に歌を歌っているこの瞬間にも、北の人民たちは飢えと病とで道端に倒れて死んでいる。木の皮や根でも足りずに、土まで食っている。人民の息子や娘が、国境先の売春
街に、たった100ドルで犬のように売られていくんだ。餓死した子の肉を食う母親と父親を見たことがあるか?
チーズとコーラ、ハンバーガーで育った奴には分かるまい。
サッカーで、南北が一つに?
ふざけるな。50年騙されれば充分だ。
朝鮮の新しい歴史は我々の手で開く。

talkie
トミーさんのコメント
2025年1月28日

共感ありがとうございます。
観たのが大分経ってからだったので、大分違和感を覚えましたが・・今だに分割されてる祖国に住む人々のメンタルは、測り知れないと思いました。近親憎悪みたいにもなるんですかね。

トミー